碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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キューバ革命50周年のゲバラ

2009年01月12日 | 映画・ビデオ・映像
3連休ということで、出かけた人が多かったのか、ふだんの週末より空いている映画館で、『チェ 28歳の革命』を観た。

ゲバラの伝記映画を、『セックスと嘘とビデオテープ』『トラフィック』『オーシャンズ11』シリーズなどのスティーヴン・ソダーバーグ監督が撮る。それだけで観たくなるではないか。

“読後感”でいえば、まるで秀逸なドキュメンタリー映画を観た後のような感じだ。

ゲリラ戦に象徴されるが、すっきりとか、抜けた感覚はない。ずっしりしたものが残る。現実の重さみたいなものか。

強烈に思うのは、ゲバラという“有名人”がどんな人間だったのか、自分たちはほとんど知らなかったんだ、ということ。

民衆には優しく、自分と革命には厳しい。ひと言でいうなら、終始「こうあるべき」を自らに課した人だ。その強靭な精神力に驚く。

描かれているのは、1956年から59年にかけてと、64年のゲバラ。そんなに昔ではないと思っていたが、50年前ということになる。半世紀が過ぎていても、ゲバラの印象は、常に<同時代>だ。

主演のベニチオ・デル・トロは、ありふれた言い方になるが、まるでゲバラがのり移ったかのようだ。この役をやるために役者をやってきたみたいな気がする。

それから、個人的に興味深く観たのは、デジタルシネマの撮影機材REDを使った映像だった。ハイビジョンの何倍もの密度のある映像。

フィルム撮影ではない、といわれなければ気がつかないが、ジャングルや町だけでなく、室内でも、その機動性はもちろん、自然光を生かした撮影が行われている。

自分の勉強を兼ねて、新年度から大学で「デジタルシネマ演習」という講座を立ち上げる予定だ。いずれREDも導入したい。

映画本編の終わりに、今月末に公開される続編『チェ 39歳 別れの手紙』の予告が付いていた。ゲバラの最期が描かれる第2部は、1部よりもっとヘビーなものとなるはずだ。でも、見届けたい。

革命戦争回顧録 (中公文庫)
チェ・ゲバラ
中央公論新社

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