お気づきのように、それらの「演奏」の多くは<ライブ(LIVE)>であり、当然、「演奏日時」や「場所」が異なっています。しかし、<スタジオ録音>においては<複数回>の演奏を行い、その中から「できばえの良いもの」を選んでいます。
とはいえ、それらの録音は甲乙付けがたく、またそれぞれの録音分の良さがあるため、必然、「CD」などには複数の「録音(take)」が採用されることになったのでしょう。そのため、その際の各録音分が、それぞれ「テイク:1(take one)」、「テイク:2」……そして「テイク:5」と表示されているのです。
ところが、中には「同じグループ(バンド)の演奏」とは思えないほど、<演奏スタイル>や<sound>が違うものがあり、その多くは「中心的なプレイヤー」が変わった場合などです。
ことにその「プレイヤー(メンバー)」が独創的で優れていればいるほど、「グループ(バンド)」からの脱退は避けられないようです。<両雄並び立たず>ということでしょうか。マイルス・デイビス(トランペット)とジョン・コルトレーン(サックス)の関係は、その“究極の例”と言えるのかもしれません。
とはいえ、それらプレーヤーの脱退や入れ替えがあるからこそ、「ジャズ・グループ(バンド)」は新たな<演奏スタイル>や<sound>を創りだし、尽きることのないJazzの可能性を追究して行くのでしょう。
それは、独創的なプレーヤー同士のジャズ観(音楽観)、感性、演奏スタイルそして技巧のぶつかり合いと調和であり、一瞬一瞬に自在に変化する「ジャズの本質」がそこにあります。まさしくJazz特有の「インプロビゼーション」や「インタープレイ」は、その最大の魅力と言えましょう。
「インプロビゼーション(improvisation)」とは「即興演奏」の意味であり、「インタープレイ(interplay)」とは、「 即興演奏」において「プレイヤー」同士が他のプレイヤーの演奏に応え、互いに刺激し合いながら行う即興の演奏を指しています(※1)。
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またまた能書きが長くなりました。さっそく「TOP:30」の中から、筆者が好きな演奏(曲)を選んでみましょう。これくらいのランクの演奏(曲)になれば、誰しもそのうちの4、5曲については、“何度か耳にした”ことでしょう。
ちなみに30位を外れた演奏の中には、すでにご紹介した「モーニン」(31位)や筆者が大好きなビル・エヴァンス(トリオ)の「My funny valentine(マイファニー・バレンタイン)」があります(33位)。
25位・26位に「モダンジャズ・カルテット(MJQ)」の演奏が入っており、前者は「Softly as in a morning sunrise(朝日のようにさわやかに)」、後者は「DJANG(ジャンゴ)」。そして22位にマイルスの「My funny valentine」、20位に、これまた筆者が大好きなディヴ・ブルーベックの「TAKE FIVE(テイクファイブ)」がランクインしています。
この「テイクファイブ」は、日本人にはよく知られた曲のようです。筆者が好きなモダン・ジャズ「TOP:3」の曲であり、演奏です。レコードが擦り切れるほど聴いた記憶があります。
19位は、マイルスの「Someday my Prince will come(いつか王子様が)」ですが、これは本ブログにおいて解説・鑑賞を載せています(※2)。17位はビル・エヴァンス「My foolish heart(馬鹿な心)」。
14位はジョン・コルトレーンの「Blue train」、13位は「A love supreme(至上の愛)」、さらに12位は、これまた筆者が最高に好きなエヴァンスの「Autumn leaves」です。この演奏についても、詳細な解説・鑑賞を綴っています(※3)。 [続く]
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※1◆「即興演奏(インプロビゼーション)」と「インタープレイ」の功罪/モダン・ジャズよ永遠に(4)
※2◆「Someday my Prince will come(いつか王子が)」解説・鑑賞
◆MODERN JAZZ BEST SELECTION TOP 500―96~ ※左記に「TOP:1」すなわち「第1位」から「500位」までにランクインした演奏を見ることができます。
※本シリーズは(下:3)が「完結編」となります。
でも心のどこかで相通じていたように思います。互いの音楽をずっと聴いていたような感じです。
手法は違っても同じくJAZZの可能性を追い求めた同志のような活躍が同時期の互いの録音を聴き比べると分かります。聴き比べって本当にいいですねっ。
このことは次回の「完結編」で触れたいと思います。というより、触れなければならないと思います。
マイルスあってのコルトレーンであり、またコルトレーンあってのマイルスと言うことでしょうね。もちろんこのような関係は、この二人だけに限ったものではありませんが。
それにしても先月30日の「TOP:10の聴き比べ」は、実に有意義であり、また楽しい贅沢な時間でした。あらためて感謝申し上げます。