『感性創房』kansei-souboh

《修活》は脱TVによる読書を中心に、音楽・映画・SPEECH等動画、ラジオ、囲碁を少々:花雅美秀理 2020.4.7

・反差別の系譜(1)/米国空軍士官学校長のSpeech(下)

2020年07月08日 16時18分02秒 | ●脱TV❶:Speech動画

 

 筆者は今回を含めて、20数回このたびの動画を観ました。そして観るたびに米国における〝黒人差別〟の根深さを感じるとともに、〝差別解消〟へ向けた改革のスローモーぶりに、正直言って驚いています。

 と言えば、 米国人をはじめとする一部の方より、『何を勝手なこと』をとお叱りを受けるかもしれません。しかし、つい先日の「Fourth of July」すなわち「独立記念日」( Independence Day)について思いを巡らせていたとき、筆者の関心は、やはりアメリカ合衆国「建国の父」たちが、「独立宣言」の中に掲げたメッセージでした。

 コロナ禍によって、今年の「独立記念日」は盛り上がりに欠けたような気がしますが、この「Fourth of July」の基本的意義や歴史については、〝非米国人〟であっても関心を持っている人は世界的にみても多いようです。

 ここではこれ以上触れませんが、読者各位において1776年7月4日の「独立宣言」に到った経緯と、その〝今日的な意味〟について、今一度振り返ってお考えください。ことに中学生以上の青少年に考えて欲しいというのが筆者の願いです。ヒントは「建国の父」と、その際の「基本的メッセージ」です。

 前置きはこのくらいにして、さっそく「動画」についてお話しましょう。

                  ★   ★   ★

 

 アメリカ合衆国の偉大さを象徴するSpeech?!

 Speechの中でジェイ・シルベリア学校長(中将)も述べているように、このときの聴衆は士官学校生4,000名、教職員及び空軍関係者等1,500名、合計5,500名でした。極めて対象限定的とはいえ、まずこの数の多さに驚かされます。

  さらなる驚きは、学生以外の1,500名もの職員・監督・教官、そして空軍基地・司令本部・航空基地航空団等の首脳陣も参加していたという事実です。加えて、2人の准将や大佐なども列席しており、そういう軍関係者が一堂に会したという事実は、生半可な要因や組織体制では不可能でしょう。

 つまりはそれだけ、空軍中将ジェイ・シルベリア学校長の危機感と、それを少しでも回避しなければとの想いの強さに、筆者はまず感銘を受けました。

 しかし何と言っても最大の驚きは、やはりSpeech内容の〝強いメッセージ性〟でしょう。〝空軍すなわち軍隊本来のテーマ〟とは関係のないものであるにも関わらず、あれだけ強い調子で〝何かを吐き出すかのように淀みなく言い切ったジェイ・シルベリア学校長(中将)の想いに圧倒されるとともに、大いに勇気づけられました。

 彼は、最初の方でこう述べています。

 『(差別的な言動に対しては、)空軍兵としてではなく、人間(human being)として怒るべきだ。

 この一言に、このときのSpeechのエキスが言い尽されています。

 それにしても、何と大胆にそしてまた堂々と言い切ったことでしょうか。しかもその究極が、5回ものGet Out!』(出て行け!)というのですから……。極めて権威あるオフィシャルな場において、これ以上の表現はないと思えるほどの厳しさであり、覚悟と言えるでしょう。

 その表現を、4,000名の学生だけでなく、1,500名もの学生以外の教職員や軍関係者の前で語ったところに、このSpeechの持つ意味と価値があると思います。

 『相手が誰であろうと、私は一切妥協することなく、はっきり告げるよと、一歩も緩まず、まるで「宣戦布告」でもするかのような毅然とした態度です。

 筆者はこのように、〝自由な発想と主張で堂々と語り〟、また周囲もそれを〝当然のようにリスペクトする〟アメリカという国の〝懐の深さ〟が大好きです。まさしくトーマス・ジェファーソンをはじめとする「建国の父たち」のspiritが、脈々と流れています。

 

 power of diversity(多様なパワー)

 さらに今回のSpeechにおいて、筆者が一番惹かれた言葉が「diversity(多様性)」でした。「power of diversity(多様なパワー)」の重要性であり、さまざまな境遇・人種・背景・性別・生まれ育ち等によってバリエーション豊かに創り出されるパワーと言いたいのでしょう。

 『多様性の力があるからこそ、その分だけ強くなれる』という彼は、『狭量でとんでもない考え』よりも、その方がずっとましだと断言しています。

 昨今、〝多様性を排除する〟いくつかの大国の存在を考えるとき、この言葉の重みをひしと感じざるをえません。

                  ★ 

  ところで、今回の「動画」において、特に筆者が注目したのは、学校長(中将)のすぐ右後ろに立っている女性兵士の姿です。学校長のSpeechを〝何かに魅入られた〟かのように凝視しながら聞き入っています。途中で学校長が、教職員を前の方に移動するように促したときも、彼女一人は微動だにすることなく、これまでとまったく同じように静観したまま、右後ろに控えています。

 おそらくこのとき彼女は、学校長(というより、各Speaker)の「付添人」のような役目を果たしていたのかもしれません。ひょっとしたら、中将の秘書的な方でしょうか。学校長のSpeechに、〝心に強く響く何かを受け止めた〟言う〝覚悟ともとれる表情〟がとても印象的でした。

 カメラアングルが変わって女性兵士は映らなくなりましたが、他の女性職員をはじめ多くの教職員の表情には、学校長の強い憤りと危機感を、しっかりと受け止めたという気迫のようなものが感じられました。

               



※注:以下の[注釈」記事は、ジェイ・シルベリア学校長(中将)のSpeech内容をよりよく理解していただくための「key word」情報です。筆者において、若干の省略・修正を加えています

※注① 「シャーロッツビル事件」(白人至上主義者による暴走自動車突入の致死傷事件) 

 (※筆者注:Speechの中でジェイ・シルベリア学校長(中将)は、この「事件名」を3回繰り返しており、また学内において「この事件についての議論」がなされたことが明かされています。)

 2017年8月12日、米南部バージニア州シャーロッツビル市において、「白人極右集会」に抗議する人達に向け、「白人至上主義者」の青年が乗った自動車が突入。何度もバックと突入とを繰り返しながら暴走した結果、死者1人、負傷19人の惨事を引き起こした。これに先立ち、極右集会参加の「白人国家主義者達」と、その「抗議者達」の間で衝突が相次ぎ、少なくとも15人が負傷していた。

 同州のテリー・マコ―リフ知事(民主党)は、「白人至上主義者」に『 帰れ! お前たちは愛国者とは程遠い 』と批判。一方、トランプ米大統領(共和党)が「白人至上主義者」を特定して非難しなかったため、共和党内からも疑問視する声が上がった。またマイケル・シグナー市長は、極右行進を「憎悪と偏見と人種差別と非寛容の行進」と非難。死者が出たことに「打ちのめされている」と述べた。(記事:News Japan 2017年8月13日) 

 クリック! ■記事:米南部の極右集会に抗議、1人死亡 州知事は白人至上主義者に「帰れ」

 

※注② ファーガソン事」(白人警官による黒人少年射殺事件)

  米中西部ミズーリ州セントルイス郡ファーガソンで、2014年8月9日に郡の警察官に射殺された丸腰の黒人少年マイケル・ブラウMichael Brown)さん(18)は、コンビニエンスストアで強盗をはたらいた疑いがあったと、警察が15日明らかにした。

 ファーガソン警察の「事件報告書」では、ブラウンさんが、コンビニエンスストアからの49ドル(約5000円)の「葉巻の箱」盗難事件の犯人のように名指しされている。その約20分後、ブラウンさんは近くの通りで白昼公然と撃たれたとなっている。(※筆者注:別の報道では、ブラウンさんは無抵抗という証言がある。この証言に対して警察は、ブラウンさんが暴れて逮捕に抵抗したと主張。なお射殺した警官は、強盗事件が発生したために現場に向かい、その後被害者との職務質問上のトラブルによって発砲したとのこと)。

警察が公開した防犯カメラの映像には、ブラウンさんが着ていたのと同じTシャツ、カーキ色の半ズボンにサンダル履きの長身のがっちりした体格の黒人男性が、店員のシャツをつかんで押しのける姿が映っている。(記事:AFP・BB News2014年8月16日)

クリック! ■記事:警官に射殺された少年、コンビニ強盗の疑い

 

※注③ NFLの抗議行動」(国歌演奏時の起立拒否)

  米国の「人種差別」や「黒人への警察暴力」に抗議する「ロスポーツ選手たち」と、「トランプ米大統領」が対立。黒人への暴力に抗議して試合開始前の国歌演奏時にあえて地面に膝をつくプロフットボールリーグNFL選手たちに対し、トランプ大統領が「くびにしろ」とツイート。これに反発して9月24日の各地の試合では、多くの選手が国歌演奏中に膝をつき、あらためて抗議の姿勢を示した。プロバスケットボールNBAの優勝チームも、NFL選手への支持表明を機に、予定されていたホワイトハウス表敬訪問を取りやめた。NFLでは昨年(2016年)夏コリン・キャパニック選手が警察暴力に抗議して国歌演奏時の起立を拒否し、膝をついたのを機に、複数の選手がこれに同調。9月24日はそれ以来、最も大勢の選手がこれに賛同した。(記事:News Japan 2017年9月25日

クリック! ■記事:「黒人への暴力に抗議の米NFL選手たち、トランプ氏に反発」

 

 

 

 

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする