『感性創房』kansei-souboh

《修活》は脱TVによる読書を中心に、音楽・映画・SPEECH等動画、ラジオ、囲碁を少々:花雅美秀理 2020.4.7

ゴーストライター

2009年07月18日 17時07分04秒 | ■世事抄論
 

 今日、“ゴーストライター(ghost writer)”が盛んな時代といえそうだ。といっても、その名の通り表舞台には出てこない“幽霊(ghost)”としての「書き手」であり、その道では“覆面ライター”ともいう。
 
 芸能人やスポーツ選手の著作の99.99%は、ゴーストの手によると言われている。のみならず、企業経営者や文化人、さらには政治家の著作にしても、そのほとんどがゴーストによるといえそうだ。そういう「ゴースト本」を知人から貰ったことがある。著名な男性経営者のものを、三十歳台の彼女がゴーストしたものだった。

 どのような分野のものであれ、多くの『ゴースト本』の制作過程の基本はシンプルだ。まず本人に関するデータを集め、関係者へのヒヤリングや本人のインタヴューをフォノライトして元ネタとする。それに本人に関するエピソードやテレビ、雑誌での発言を入れて仕上げるものがもっともポピュラーだろう。「フォノライト」とは「テープ起こし」、即ちテープに録音された会話や講演内容を文字に書き直す仕事をいう。
 
 実は筆者自身、かつて“ゴースト”をしていた。不動産・住宅産業関係の月刊誌や週刊誌等への寄稿であり、不動産関連法規の改正ポイントや業界への影響について、その新聞社の論説委員の立場から書いていた。また取材のため毎月上京していたこともあり、中央での不動産業界の動向を地元業界誌の派遣記者の形で書くこともあった。

 当時、本業は不動産業者団体の事務局スタッフであり、その「機関紙」の取材・編集を一手に引き受けていた。「署名」はなくとも、その「機関紙」の記事や論説が筆者によるものであることは、周知の事実だった。のみならず、業者団体のスポークスマンとして、会長挨拶や役職者のコメントなども書いていた。
 
 ところが他誌での“ゴースト”は、まさしく「幽霊」であるため、誰が書いているのか判らない(知っているのは各誌の編集長のみ)。こちらは他人の目を気にすることなく、自由に書くことができた。そのため、不動産業者団体の「機関紙」に書いた自分の「論説」に、「他誌(紙)」の「ゴースト」として多少ケチを付けることもあった。

 「機関紙」ではホンネが書けなかった場合の捌け口であり、ゴーストとしての密かな愉しみでもあった。と同時に、“ゴースト”が“自分ではない”ことをさりげなくアピールするカモフラージュともなった。

 で、もしかしてこの原稿も“ゴースト”?
コメント
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