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渡辺武著『わかりやすい漢方薬』第一章 漢方薬はなぜ効くか 2 現代医学の盲点を救う 漢方という医療の原点

2020-02-10 13:31:18 | 日記

昌栄薬品です

渡辺武著『わかりやすい漢方薬』第一章 漢方薬はなぜ効くか

2 現代医学の盲点を救う

漢方という医療の原点

 漢方では、病気の主体、訴えや状態から入ります。

訴えが背中や顔に出てきた場合、これは表の証なのです。

表を寒熱によって二分して、背中がぞくぞくして寒けがするのは少陰病、頭部や体表に熱が出て頭が痛いのは太陽病です。

頭部から首、そして背部を太陽の位置といっています。

お腹の病というのは食道から胃腸などの消化器官の異常で、これらの粘膜は体表の皮膚とは裏表の関係にありますから、裏と呼ばれています。

 漢方の用語では、これも寒熱に二分して、消化器官に熱があって異常を訴える症状を陽明病、冷えて腹痛、下痢などを訴える症状を太陰病と呼んでいます。

陽明病、太陰病では訴えが腹部にあらわれるので、これを陽明の位置といいます。

人体の諸器官臓器は表と裏の中間にありますから、内臓諸器官を漢方用語では半表半裏といい、そこに熱(炎症)がある訴えを少陽症、少陽病と呼び、反対に冷えて機能が減衰した症状を厥陰症、厥陰病と呼んでいます。

 この症状を訴える位置と病状、つまり寒性か熱性かによって、少陰病、太陽病、太陰病、陽明病、厥陰病、少陽病の六つに分けているのです。

訴えが背中にあるかお腹にあるか、側面がだるいとか、触わるとこそばゆいとか、気持ちが悪いとか、あるいは身体の側面や、足がしびれるとか、その訴えで病位がきまるわけです。

身体の側面がつる場合は、腎臓炎とか、肝臓炎とか、膀胱炎であるということがわかります。

半表半裏に炎症があり熱がある場合、体温計では微熱としか感じません。

たとえば、結核の場合は、肺が炎症を起しているのですから微熱ですし、血証が出てきます。

この場合は側面に異常が生じ、首が回らぬとか、側面がだるいといった症状が出てくるものです。

 「経絡」という言葉が漢方にあります。

経は動脈の流れをいい、絡は静脈を指しています。

人間の心臓は左にあります。心臓や循環系に異常が起った場合、左上半身と右下半身とその側面に、耳鳴りがするとか、しびれるとか、異変が起ってくるものです。

反対に水分代謝が悪くなり、腎臓とか膀胱とか泌尿器官に異状が起りますと、右上半身と左下半身と側面が重くなったり、けだるさが出てくるものです。

この「経絡」というのも病位を知る一つの考え方です。

 陽病と陰病、表・裏・半表半裏というのは病位だけではありません。

人間の病気は陽病の急性的な太陽病から始まり、少陽、陽明に至り、慢性的な陰病の少陰病、太陰病を経て、ついに厥陰病という難治の病に至る病気の順序も示しているのです。

これまで、気・血・水という病気の原因から考えた七つのパターンと、陰陽の病気の主体、病状病位から考えた六つのパターンがあると書いてきましたが。

ではいったいどの考え方が病気を判断するのかということになります。

それはまず、病気の主体である陰陽から病位病状を知り、気・血・水のどこかに原因があるかを辿るのが、漢方の考え方なのです。

 人間の病気に対する二つの見方、原因論と主体論は、いまから約二千二百年前の漢の時代、「傷寒論」「金匱要略」という漢方の原典に、はっきり漢方の基本的な考え方として示されているのです。

早い話が日本では江戸末期に、蘭方医によってやっと人間が解剖されたのですが、中国ではすでに千年前の宋の時代に人間の解剖がされて、五臓六腑の病が示されたのですから、漢方医学というのは世界の医学の原典といってもいいわけです。

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