渡辺武著 わかりやすい漢方薬
第三章 漢方薬は何に効くか
3 コレステロールがたまらぬ法
ｐ185 食生活の三種の神器 十余年前、映画監督の吉村公三郎さんが脳出血で半身不随になると同時に、日本映画も半身不随になってしまいました。
大げさかもしれませんが、日本映画が斜陽化した一つの原因は、この〝非常識派〟の映画監督が倒れたからだと思っています。
病床にかけつけたとき、吉村さんは「わしが出なかったら日本映画はおかしくなる」といったものです。
そこで漢方薬で脳出血の後始末をすると同時に、早く体力をつけるために薬物と食事の両面作戦をとりました。
吉村さんの身体は、長い間、映画監督という重労働で、コレステロールはたまり放題、全身がガタガタでした。
そこでゴマと蜂ミツを食べてコレステロールを取り、体力をつけ、ハト茶を飲んで水分代謝をよくし、「斜陽化する映画など放っておきなさい」といったものです。
もちろん、一年で吉村さんの体力は回復しましたが、日本映画の斜陽化の方は急速でした。
私は、吉村さんのあの詩情、独創、自己主張で、日本映画の大衆性をとりもどしてほしいとひそかに思っている一人なのです。
この吉村さんが食べたゴマと蜂ミツとハト茶を私は食生活の〝三種の神器〟といっています。
とくに日本食を食べる人には、脂肪や蛋白質が少なく、コレステロールも少ないようですが、皮膚を守り、肝臓に必要な栄養をあたえ、新しく皮膚や粘膜をつくるすべてがゴマと蜂ミツの中に入っています。
すぐに身体に吸収されるので満腹感があり、過食しなくて済むのです。
それに日本人に大事なことは、水分をとり過ぎず飲んだだけ出すという水分代謝を盛んにすることです。
ハト茶をのんでいれば身体の水分代謝がスムースになるわけです。
かつて川上監督の率いる巨人軍は、阪神に優勝をさらわれたことがあります。
病症にあった巨人ファンの吉村さんは、早速、川上監督に電話してハト茶をすすめ、巨人軍のベンチではハト茶をのませることにしたのです。
選手の水分代謝をよくすれば強くなるということで、吉村さんは自分が飲んで効いた経験上、すすめたのです。
それかあらぬか、それ以後川上巨人軍は九連勝という快記録をつくったのです。
このゴマと蜂ミツとハト茶という健康食は、漢方の長い歴史の中で体験してきた人間が生きるための知恵ですが、これは漢方だけのことではありません。
欧米でも、聖書にいわれる乳と蜜（牛乳と蜂ミツ）は、欧米人の健康食であったのです。
欧米では牛乳を飲んでも空気が乾燥しているので身体から水分が出てしまいます。
これが日本だったら牛乳の水分を出さなければならない問題が残るのです。
気候や風土によって、人間の健康食も決まっているのです。
インドではお釈迦さまの乳を主にした健康食があります。
乳の水分を抜いて蜂ミツを混ぜた、バターとチーズの中間のようなもので、中国の唐時代の薬物書「唐本草」ではこれを〝石ミツ〟といっています。
これは断食修行中のお坊さんでも食べることを許された食物で、動物性の蛋白質、脂肪、含水炭素、水に溶ける栄養、油に溶ける栄養の全部を備えています。
いまでも中央アジアや蒙古の民族の長い旅路の生活には、必ずこの石ミツを持っていくのです。
今でいえばミルクキャラメルですが、それと比較すると栄養的には月とスッポンほどの違いがあることがわかります。
ヨーロッパでは、パンにバターをつけ、ミルクに蜂ミツを入れて食べています。
どこのレストランに入っても、蜂ミツは必ず置いてありますが、日本では蜂ミツを置いている店は、国際空港か外人がよく来る店だけ。
アメリカ人の家庭も、七五％が蜂ミツを備えています。
日本人も、生活の近代化というなら、肉の過食をせず、砂糖のかわりに蜂ミツを摂れば、コレステロールの回転がよくなり、胃腸だって丈夫になります。
胃潰瘍の人は炎症さえとれれば、ゴマ豆腐（ゴマでつくった豆腐）にスパイスのしょうがをそえ、蜂ミツを食べていれば腐敗発酵は起しませんし、栄養は行きわたります。
正しい食事だけで三ヵ月で胃潰瘍を治した例もあるのです。
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