渡辺武著わかりやすい漢方薬
第二章漢方薬はどう診断するか
3 血の道症(血毒症-血証)
肩こりの左右でのちがい
水滞による肩こりをもう少し説明しますと。
腸がちゃぶちゃぶになれば、腸は下がってきます。
痔になったりヘルニアになるおそれもあります。
その腸を持ち上げるのは、腹筋が吊っているということ、腹筋が綱引きをしているようなもので、身体の中で荷物を持って気張って立っている状態なのです。
ところで、胃が悪くなると背筋がこるといいます。
背筋は、内臓を背と腹でつっかえ棒をして支えているわけですから、胃にたまってきますと、背中までこってきます。
胃がいっぱいで腸が空っぽなら食べた物は腸に下がります。
必ず、水滞は腸からはじまって胃に至るという床上浸水型なのです。
浸水が腸の場合は右肩がこり、胃まで浸水してくると背中までこってきます。
そして腰までつったり、だるくなると、これは病気で相当に進行していることになるのです。
こりの場所は、病気の状態を示しているわけです。
肩こりぐらいという人がいますが、肩は身体の変調があるからこるわけですから、そのこりの場所で病気の原因をつかむことが第一です。
この場合は風邪をひきやすい条件にあります。
そうした時には『桂枝湯』という湯薬を飲ませています。
ちょっと湿っている状態を、散歩やちょっとした運動で発散する役割です。
この桂枝湯は上薬で、まだ病気の前兆の薬です。
血液の循環に異常があったり、心臓が疲れたりすると、必ず左肩がこってきます。
この左肩こりはよくこりをほぐす、充血をとるということがまず第一になるのです。
漢方薬に上・中・下薬があることはすでに述べましたが、風邪をひくとか、足がしびれる、痛むという時は、はっきり病気が現われているわけですから、中薬の『葛根湯』とか『小建中湯』が処方されるのです。
へそが立っているのは、美容上の問題ではありません。病気の起爆弾を抱えている状態です。
普通、へそは丸くて真横に向いて寝ているのですが、体質に変調のある人、自律神経失調症とかアレルギー症の人は、へそが立っています。従って、へその立っている女性は子宮後屈が多いということになるわけです。
へそ相という八卦見がありますが、へそは人間の健康状態を表わしているのです。
へそのゴマをとるとお腹が痛くなるというのも、へそが胃や腸と密接に関係があるということなのです。
漢方ではよくへそを中心にして腹証をとります。
右肩だけがこっている(水滞が起こっている)と、へその左の横に動悸があるのです。
右には動悸は起こりません。
この左の動悸を、〝芍薬の証〟といっているのです。
動悸がへその右にある人は、動物食ばかり食べすぎて香辛料が不足してカルシウム不足になり、神経を使ってイライラしている状態にあるといえます。
動悸は、一番最初の身体のストレスの起こりです。
左の場合は一過性の水分代謝が悪いという状態ですが、右に動悸がきたときは、充血とか心臓の負担が多くて、血液障害がある時です。
ややこしくなりましたが、肩こりは、右肩がこって、へその動悸が左にある場合は、水分代謝が悪い水滞の状態。
左肩がこって、へその右に動悸がある時は香辛料不足で心臓の負担が多くなった状態です。
つまり右肩がこるより左肩がこる方が病は進行しているということになります。
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