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好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

北海タイムス物語

2020-02-02 19:15:14 | 読んだ本

増田俊也 令和元年 新潮文庫版
去年11月に書店でみかけて買った文庫、『七帝柔道記』がめちゃめちゃおもしろかったので期待できたんで。
北海タイムスって購読したことはないけど、かつてあった地方紙。
そういやあ、前にタイムス杯って特別競走を札幌開催でやってたんだけど、会社つぶれたとかで直前に競走名を変更したことがあったなあ、オープン競走だっていうのに。
主人公は横須賀出身、早稲田大を卒業した野々村巡洋君、1990年の新入社員。(なんか1990年っていうと親近感をもってしまう。)
著者の作品なら主人公は体育会柔道部出身と思いきや、そうぢゃなくて、なんかっつーとスミマセンってあやまってばかりの押しの弱そうな意外な設定。
学生時代は司法試験を目指してたはずなのに、いつのまにかマスコミ志望に変更、あちこち試験を落ちてしまい、北海道に就職することになった。
それでも今年の就職試験を受けなおして、どこか内定とったら今のところを辞めてしまおうとか考えたりしてる、よくないよ、そういう了見は。
新聞社入ったからには取材記者になって記事書くのが希望だったんだけど、研修終わったら望まない部署に配属されてしまった。
そこで仕事を直接教わることになったひとが、めちゃめちゃ厳しくて、ボツの原稿はどこをどう直せなんて言ってくれずにゴミ箱に直行とかいう目にあう。
会社はすでに経営厳しい状態にあるらしく、人が少ないのもあって、仕事量は多いし、労働時間は長いし、休み少ないし、大変な職場。
本業がちっとも身につかないのに、主催のマラソン大会や花火大会の警備に駆り出されたり、早朝野球にむりやり参加させられたりと嫌なイベントも盛りだくさん。
それでいて給料は低い、入ってから愕然とするんだけど、そういうことはよく調べてから入りましょう、って外からぢゃわかんないか管理職の年収なんかまでは。
多くの社員も副業して収入を補ったりしてんだが、きついだけぢゃなく、家族を養うこと考えて辞めてっちゃうという選択をするひともいる。
でも、そのぶん残ってる社員の新聞づくりにかける気持ちは熱い。
主人公が柔道部ぢゃないかわりに、そういうキャラはほかにちゃんと立てられてて、柔道も空手もいる、そのひとたちは若手なんだけど、当然熱い。
若手ぢゃない先輩社員たちも、基本的に熱いものがある、慣れないととっつきは野蛮っぽいかもしれないけど後輩にはやさしいし。
物語すすむうちに、いろいろ出来事はあるんだけど、まあよく男が泣く場面がでてくるなって印象はもった。
でも最後のほうはグッと盛り上がってきて、引き込まれるようにスピードあげて一気に読むことになった、やっぱスポ根的感動に近いようなものがあって、いい、「がんばれ」「よくやった」と言いたくなるような。
それと、新聞づくりの詳細が描かれてる場面があって、そういう職人技とかテクノロジーとかについて初めて知ることのできるフィクションに触れるのは、あいかわらず私は好きだ。
どうでもいいけど、本書読んだすぐあとに「ペンタゴン・ペーパーズ」って映画をテレビで観たんだが、新聞社のなかを見て、なんとなくなるほどって気がした。


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