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好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

復讐の女神

2024-06-28 19:13:45 | 読んだ本
フレドリック・ブラウン/小西宏訳 1964年 創元推理文庫
前に『まっ白な嘘』を読んで、おもしろいとおもったフレドリック・ブラウン、世のひとたちから見たら何をいまさらと言われちゃうんだろうが、もうひとつ読んでみたくて、ことし4月ころ買い求めた古本の文庫。
この文庫では「フレドリック・ブラウン短編集2」ってことになってますが、原題「THE SHAGGY DOG AND OTHER MURDERS」は1963年だという。
収録作は以下のとおり。

「復讐の女神 Nothing Sinister」
>誰しも適度に健全で、法律に従った生活を営んでいるものは、本気で自分が殺人事件にまきこまれるとは考えないものだ。復讐の女神(ネメシス)というのは誰かほかのやつを尾行している女のことで、彼女はその人間のあとを追ったあげく、どこかでそいつに追いつく。(p.8)
永久埋葬用柩製造会社のための広告コピーをつくる仕事にとりくんでたカールは、なぜか命を狙われて危険な目にあった。

「毛むくじゃらの犬 The Shaggy Dog Murders」
>ピーター・キッドは、あの毛むくじゃらの犬にはなんとなく、うさんくさいところがあると、すぐに考えてみるべきだった。その動物をひと目見た時から、彼はゴタゴタにまきこまれてしまったのだ。(p.32)
私立探偵開業初日のピーターのところへ持ち込まれた事件は、首輪に「わがはいは殺された男の犬なり」と手紙がつけられた犬の持ち主探しだった。

「生命保険と火災保険 Life and Fire」
>ヘンリー・スミス氏は玄関のベルを鳴らした。それから玄関のドアにはめてあるガラスに写った自分の姿をしげしげと眺めた。(p.72)
保険会社の外交員スミス氏が勧誘のために訪れた家は、犯罪者たちのアジトだったが、拉致監禁されても彼は保険のセールストークをはじめる。

「すりの名人 Teacup Trouble」
>あっしが知りたいのは、こういうことなんです。あっしは懐中電灯の球くらいの大きさのダイヤモンドのついたネクタイピンを手に入れましてね。(略)
>どうやってそいつを手に入れたか、ですって? そうですねえ、いうなればグブスティンさん、紅茶茶碗があっしにくれたんですよ。(p.96-97)
巾着切りのウィルスンと呼ばれる男がエレベーターのなかでたまたま会った、天使みたいな目をした若い男、そいつはこともあろうにウィルスンから気づく間もなく札入れとタバコ入れをスリとっていた。

「名優 Good Night, Good Night」
>目の前のカウンターは、ぬれてべとべとしていた。サー・チャールズ・ハノーバー・グレシャムは、一段高くなって乾いているカウンターの縁に、気をつけてそっと腕を載せ、それまで水たまりでぬれないようにして読んでいた折りたたんだ「ステージクラフト」誌を手にかざした。(p.117)
飲んだくれてばかりいる売れない役者チャールズは、新しい芝居を書いた旧知の作者のところへ配役に手をまわせとはたらきかける、自信あるのはゆすりのネタをもっているからだ。

「猛犬にご注意 Beware of the Dog」
>殺意の種子がワイリー・ヒューズの心に植えつけられたのは、じいさんが金庫を開けるのを、はじめて目撃した時だった。(p.138)
株券の集金人ワイリーは、ひとり暮らしのアースキンじいさんのところへ強盗に入りたいが、じいさんが番犬に飼っている猛犬をどうにかする必要があった、なみの犬の残忍さをはるかに越えた、敵意をひそませる黒い犬、獰猛にしておくために常に半分飢えさせられている恐ろしいやつ。

「不良少年 Little Boy Lost」
>ドアをノックする音がした。お婆は繕っていた靴下を、ひざの上の裁縫かごの中にもどし、裁縫かごをテーブルの上に移すと立ち上がろうとした。(p.147)
マードック夫人の息子のエディは17歳になっていたが、おばあちゃんから見ればまだ小さい子ども。しかし、地元の悪い連中に誘われて、もうすぐ正規のギャングのメンバーになろうとするところだった、なにやら悪事のために夜に外出しようとするので止めるが、彼は当然いうことをきかない。

「姿なき殺人者 Whistler's Murder」
>家の屋根はたいらで、高さ三フィートの胸壁がその周囲をとりまいている。その胸壁のうしろの屋根に、紺サージの上着を着た大男が立ってスミス氏を見おろしていた。一陣の風が、さっと大男の上着をひるがえしたので、その男がショルダー・ホルスターに回転拳銃をつっているのが、スミス氏の目に映った。(p.162)
保険会社のスミス氏がウォルター・ベリー氏の邸を訪ねると、ベリー氏のおじが昨夜殺されたと応対に出た保安官が言った。三日前に脅迫の手紙がきていたこともあり、犯行の行われた夜にも屋敷の上に二人の私立探偵が見張りをしていて、怪しい者が近づくのは見ていないという。

「黒猫の謎 Satan One-and-a-Half」
>すでに一週間ほど、一人きりでいるのだが、今にも絶叫したくなっているんだ。作曲するつもりでいたピアノ協奏曲の音符一つ書いていない。出だしの二、三小節は頭に浮かんでいたのだが、弾いてみると、まるでガーシュインに似た、怪しげな音が出るしまつ。(p.186)
仕事のために世間の知り合いから逃れようと町はずれのちっぽけな家を借りて独りでとじこもっていたブライアン・マレー。あるとき玄関のベルが鳴ったので驚いてドアをあけると、そこには誰もいない、ベル鳴らしてから逃げて隠れるような場所もない。ドアのところにいたのは黒猫だが、そいつは勝手に家に入って、廊下を歩いて居間に向かったかとおもうと安楽椅子にあがりこんで丸くなっていた。

「象と道化師 Tell'Em, Pagliaccio!」
>ウィリアムスじいさんはテントを出ると、怪物(フリーク)ショーの囲いの杭にもたれて中通りを眺めわたした。大部分の店の正面は暗くて、乗り物は全部閉鎖してあった。(p.219)
元は道化のウィリアムスじいさんはいまはカーニバルの象つかいになっていて、メスの象のリルも相当の高齢になっていてショーをするよりも荷役ばかりの仕事、それでもパレードには参加するが、背中に乗る役の男の象の扱いがわるいのでときどきつむじを曲げるのが親方からは問題視されている。

「踊るサンドイッチ The Case of the Dancing Sandwiches」
>それはほかの仕事と同じように、べつに変わったところはなかった。しかしトム・アンダースには気に入らなかった。何もその仕事に厄介な点があるからではない。楽な仕事だったし、百ドルが即金で手にはいるのだ。(p.257)
ごくありきたりの刑事で33歳のピーター・コールは、共通の友人の紹介でと電話をかけてきたスーザン・ベイリーの相談に乗った。スーザンの婚約者のカール・ディクソンは三ヵ月前の殺人事件で詐欺師を殺した犯人として終身刑になったが、彼がやったのではないと証明したい。事件の前には酔いつぶれていて、目を覚ますと被害者と同じ車内にいたのだが、カールがおぼえていた『アンシン・アンド・ビック』なんて店はどこにもないとして供述はとりあげられなかった。
コメント
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