エドワード・D・ホック/木村二郎訳 2004年 創元推理文庫
先々週に買った中古の文庫、私にしてはわりとすぐ読んだ、暑いときは短くて童話性のあるものがラクでいい。
日本で独自に編纂してる短篇集の第3弾、シリーズの発表順の第25作から第36作を順に収録したもの、初出は1983年から1988年らしい。
物語世界は、1930年から1935年のアメリカ、1933年12月に禁酒法が廃止されて、それまでヤミで飲んでたみんなでお祝いをしたりしてますが。
語り手・主人公サム・ホーソーン医師は1922年にノースモントで開業、本書冒頭では34歳になってました、ちゃんとトシとるんだよね、このシリーズの登場人物は。
それどころかホーソーン先生はときどき車を買い替えたりして、1935年には真っ赤なベンツ500Kロードスターって夢の車を購入する。
シリーズの最初のほうぢゃ馬車が出てきたりしたはずだけど、この時代になると町の住民のみなさんも車に乗って診療所に通うようになっている。
で、本職の医者もちゃんとやってるんだけど、サム先生のまわりぢゃああいかわらず怪奇な事件が頻発するんで、探偵として謎解きをするのに忙しい日々になる。
なんせ友人でもあるレンズ保安官が、すぐサム先生を頼りにしちゃって手伝ってくれっていうんで、しかたない。
雪の上には他の足跡がないロッジのなかで男がこん棒で後頭部を殴られて死んでたり、干し草の山の防水シートを外してみたら干し草の山の上にピッチフォークで胸を突かれた死体があったり、ほかに誰もいないはずの灯台の最上部の通路から胸を短剣で刺された死体が落ちてきたり、例によっていろいろ不可能殺人が起きる。
各話の登場人物は多くないんで、なんとなーくこいつがあやしいんぢゃないかなって犯人当ての想像はできるんだが、それはたいした問題ぢゃない。
短い物語のなかで、鮮やかにタネあかしされるのを楽しむのがいい、けど、ときどき細工の仕方や動機解明してみたら、そんなのありか、って言いたくなるものもないわけぢゃない。
収録作は以下のとおり。なお、最後の「ナイルの猫」はこのシリーズには含まれない、ボーナストラック。
ハンティング・ロッジの謎 The Problem of the Hunting Lodge
干し草に埋もれた死体の謎 The Problem of the Body in the Haystack
サンタの灯台の謎 The Problem of Santa's Lighthouse
墓地のピクニックの謎 The Problem of the Graveyard Picnic
防音を施した親子室の謎 The Problem of the Crying Room
危険な爆竹の謎 The Problem of the Fatal Fireworks
描きかけの水彩画の謎 The Problem of the Unfinished Painting
密封された酒びんの謎 The Problem of the Sealed Bottle
消えた空中ブランコ乗りの謎 The Problem of the Invisible Acrobat
真っ暗になった通気熟成所の謎 The Problem of the Curing Barn
雪に閉ざされた山小屋の謎 The Problem of the Snowbound Cabin
窓のない避雷室の謎 The Problem of the Thunder Room
ナイルの猫 The Nile Cat