プロイスラー作/中村浩三訳 1975年発行・1984年改訂 偕成社文庫版
こないだ何十年ぶりかに「大どろぼうホッツェンプロッツ」を読んだら、やっぱおもしろかったんだが。
続編も読もうかどうしようかと迷ってた、たしか第一作ほどおもしろくはなかったよなとボンヤリした記憶しかなかったんで。
で、最近になって、やっぱどんな話だったかたしかめたくなって中古の児童文庫版を買って、読んでみた。
巻末の訳者解説によると、第一作がドイツで出たのが1962年で、この続編は1969年とやや間があいているんだけど、物語世界は前作のわずか二週間後のおはなしである。
ホッツェンプロッツは前作の最後でつかまったあと、消防ポンプ置き場に留置されてた、小さな町だから警察署の留置場なんかないんだからしかたない。
それが、ある日「盲腸がよじれた、助けてくれ」とか消防ポンプ置き場のなかから騒いで、通りがかったディンペルモーザー巡査部長を呼び止めて、なかに入ってきたところをガツンとなぐりつけて、巡査部長を消防ホースでぐるぐる巻きにして頭にはバケツをかぶせ、制服とサーベルなんかを奪って逃走した。
そのあとで現場をカスパールとゼッペルが通りがかると、助けを呼ぶ声がしたんだけど、二人はホッツェンプロッツが与太を飛ばしてると思ってからかう、そんなことしてたら二人は昼の12時に家に戻るはずだったのが遅れてしまう。
そのあいだにホッツェンプロッツは巡査部長に変装して、カスパールのおばあさんが台所で昼ごはんをつくっているとこに乗り込んでいた。
で、時系列とは順番かえて、本書の出だしはこの場面から始まってんだけど、それがいい、カスパールのおばあさんのうちでは木曜日は焼きソーセージとザワークラウトと決まっている、とかね、そういう始まりかたに限るんだよね、児童文学ってのは。
巡査部長さんだと思い込んでたおばあさんが、よく見ると大どろぼうの登場なので驚いていると、ホッツェンプロッツは九本の焼きソーセージと鍋一杯のザワークラウトを全部よこせと言って、むしゃむしゃ全部食べてしまう。
カスパールとゼッペルが家に戻ってくると、おばあさんが気絶しているので介抱して、消防ポンプ置き場に巡査部長を救出しに行く。
二人にとって事態が深刻なのは、ホッツェンプロッツが自由にそこらへん歩き回っているあいだは、焼きソーセージとザワークラウトはつくらないって、おばあさんが宣言しちゃった、そりゃ一大事だ。
早くやつをつかまえようと、カスパールとゼッペルはニセ手紙をつくって、ホッツェンプロッツを消防ポンプ置き場におびきよせようとするが、ホッツェンプロッツは引っ掛からない、逆に、様子を見に来たディンペルモーザー巡査部長といっしょに三人で閉じ込められてしまう。
三人はなんとか脱出するけど、そのあいだに偽警官に化けたホッツェンプロッツはカスパールのおばあさんを誘拐してしまう。
ホッツェンプロッツは、カスパールとゼッペルに身代金を要求、金額は二人が前回の逮捕で町長からもらったごほうびの555マルク55ペニヒ。
身代金をもって指定の場所に出かけてった二人を、大どろぼうはつかまえてアジトに連れて行く、おばあさんを解放するどころか、三人とも長い鎖で足をつながれて働かされる。
巡査部長さんは、人質の安全のために現場には出かけて行かなかったんだけど、「国家試験合格千里眼者」という看板をかかげているシュロッターベック未亡人のところへ行って、水晶玉で二人を追跡して状況を監視する。
よい魔法使い登場だけど、やっぱ前作の悪い魔法使いに比べると魅力がないなあ。
かくしてカスパールとゼッペルとおばあさんが計略をもちいて、大どろぼうに縄をかけたところへ、魔法使いの飼い犬の嗅覚による追跡力を頼りに巡査部長が現場に駆けつけて、一件落着。
そして、大事なことには、カスパールとゼッペルは焼きソーセージとザワークラウトにありつくことができました、となる、めでたしめでたし。