黒田硫黄 2009年 新装版 講談社アフタヌーンKC 上・下巻
こないだ『大王』で初めて黒田硫黄を読んでみたわけだが、なんかピンとくるものなくて。
あきらめずにもうひとつくらい何かと思って、これを探してみた。
最初見つけた古本市ではずいぶんと高い値段がついてて躊躇したんだが、その後リサイクル書店で安くしてるのを見つけたので買った、先月のことだ。
読んでみたら、これはおもしろかった、けっこうおもしろい。
2000年から24回連載した短編を集めたもので、著者あとがきにいわく、
>茄子がテーマで、毎回違う短編を描くという変な企画です。(略)
>(略)当時の編集長が「茄子のマンガ描けよ」とムチャ振りしたからです。
ということらしいが、よくまあ24回も描けたものだし、ナイスムチャ振りとも思う。
基本は、もと学者かなんからしいが農村地帯に引っ込んで野菜つくってる五十男と。
その男のところに「寝だめ」に高級外車でやってくる、ふだんは2~3時間しか眠れない、なんか事業やってるらしい5歳年下の女性と。
親が借金つくっていなくなってしまい、親戚に引き取られて、農村地帯に来てからは、何かと五十男のところに顔を出す女子高生と。
高校卒業して2年経つけど、なんか特にやりたいこともないままでいる女性、といったあたりが主要登場人物で、毎回ちょこちょこっと茄子が出てくる。
で、変わったところでは、平成38年(2026年)の富士山地熱プラント工事中の怪異っていうSFっぽいのとか。
初物買いが過熱したんで公儀御法度で五月にならなきゃ茄子は手に入らない江戸での時代劇っぽいのとかってのあって、目先が変わって楽しい。
その変わり種のなかに、タイトル名だけは私でも知っていた、有名な「アンダルシアの夏」があって、これはスペインの自転車ロードレーサーの話で、地元の名物だという茄子のアサディジョ漬けが出てくる。
これはワインといっしょに食べるものであって、ビールと食べちゃダメだ、なんてくだりはあるが、主題は自転車レース(主人公のチームのスポンサーはベルギーのビール会社だが)であって、それも茄子を食べたからレースに勝ったとか負けたとかってつくりぢゃないんで、茄子はどーでもいーったらいーんだが、それがまたなんともいい。
こいつぁ、おもしろい、と思った。
その1 3人(前編)
その2 3人(後編)
その3 2人
その4 空中菜園
その5 アンダルシアの夏(前編)
その6 アンダルシアの夏(後編)
その7 4人
その8 ランチボックス
その9 39人(前編)
その10 39人(後編)
その11 東都早もの喰
その12 続 東都早もの喰
その13 富士山の戦い(前編)
その14 富士山の戦い(後編)
その15 残暑見舞い
その16 お引っ越し
その17 焼き茄子にビール
その18 電光石火
その19 いい日
その20 茄子の旅
その21 一人
その22 考える人
その23 スーツケースの渡り鳥
その24 夏が来る
その後 As time goes by