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好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

もしもし、運命の人ですか。

2017-04-08 20:14:38 | 穂村弘
穂村弘 平成29年1月 角川文庫版
あれえ、これ読んだことなかったっけかあ、とか思いながら、たしか2月末に買った新しい文庫。
単行本2007年で、2010年にいちど文庫化されてるっていうし、やっぱ以前の私は、書店で手のばしかけて見送ったのかも。
私の好きな歌人の穂村弘による、恋愛エッセイ。(そんな分類あるか知らんが。)
で、例によって、著者のときめくとこは、微妙にズレてるっていうか、ちょっと変わったアングルもってるので、そこをおかしく感じながら読むことになる。
なんたって、たとえば初対面の女性の名刺に「小谷真由美」とか「高田泉」なんて文字を見ると、シンメトリー(左右対称)だから運命のひとぢゃないだろうかと、どきっとしたりするんだから、どういう基準なんだよって。
でも、そんなのは特別なネタみたいなもんで、やっぱ行動がちょっとヘンなひとに魅かれてしまうとこがあるみたいなんだけど、そういうのは同意できるものある。
女性二人と車に乗っていると、運転してる女性に、もうひとりの車を運転しない女性が「エンストって何?」って訊いた。
答えないでいるとおもったら、突然がっくんと車がとまって、運転してる女性であるAさんが言う「これがエンスト」。
これに対して「その瞬間、私はAさんのとりこになってしまった。」(p.77「心の地雷原」)とかね。
部屋からみえる花火に対して、どこで打ち上げてるか何時まで続くのか正確なことわからないのに、「みにいこうよ。みえてるじゃん。あれに向かって歩けばいいんだよ」という女性に、つい「素敵だ。」(p.102「行動パターンと相性」)とかね。
それはいいけど、やっぱ基本的には妙に妄想を抱きがちな性格だから、必要以上にどきどきすることが多いようで。
友だちの家に夜集まって遊んでいるときに、コンビニに買い出しにいくのに自分が名乗りをあげたら、ひとりの女性が「じゃあ、あたしも行く」と言った。
それだけで、このコは自分のことが好きなんぢゃないかと想像が止まらない。
>私の未来に大きく影響する情報だ。
>〈今〉を起点として無数に枝分かれする未来ルートの何本かが、きゅんきゅんきゅーんと点灯するのがみえる。(p.169「コンビニ買い出し愛」)
大袈裟な。
そんな調子だから、友人の女性には、「ほむらさん、恋愛に対するセンサーが過敏っていうか、意識が過剰だよ」(p.90「1%のラブレター」)とか言われてしまう。
また、何年もつきあってた女性にも、「誰のことも、一番好きな相手のことも、自分自身に較べれば十分の一も好きじゃないよね、あなたは」(p.108「恋と自己愛」)と言われてしまったらしいんだけど、自己愛の強さには自覚はあって、だからいろんな場面で不安になるらしい。
「このフタ、固いの。開けてくれる?」なんて女の子から瓶をわたされると、とたんに緊張して、試練だ、開かなかったら二人の関係はどうなってしまうんだろうと恐怖にかられる。
そういう気持ちを、女の子は男ならフタ開けられると思いこんでるんだから困るよなー、みたいに打ち明けると、居合わせた女性からけちょんけちょんに反論される。
「そういうとき、本気の本気でやればあたしでも何とかなりそうかな、っていうのをわざわざ渡したりしてるんですよ」
「そうそう、だからうだうだ云わずに、がっとやってくれれば大丈夫なの」
「フタが開いたら『わあ、すごーい』って云って貰えるんですよ。最初からそれが云いたくて渡してるんだから」
「うん。男女のコミュニケーションの一種なんですよ」(p.143-144「男子力と女子力」)
とか言われてビックリさせられてしまってる。こういう情けなさがおもしろくていい。
でも、そのあとの、
「そもそも固いフタを渡されるくらいがなんだっていうの。女ならできる筈、って男が勝手に思い込んでることは、その100倍くらいあって、とっても大変なのに」
ってのには、私なんかも痛、痛っ、痛いな、と思うところはあるかもしれない。
でも、たとえば、「ボタンとれた? つけてあげるよ」とか言われたら、自分でできるよなんて言わずにキュンキュンして渡してしまうかもしれない。
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