☆映画の旅の途中☆

色んな映画をどんどん観る旅

『春江水暖』(2019) Dwelling in the Fuchun Mountains @東京フィルメックス2019

2019年11月26日 | 西洋/中東/アジア/他(1990年以降)
『春江水暖』 Dwelling in the Fuchun Mountains
【作品概要】
中国 / 2019 / 154分
監督:グー・シャオガン(GU Xiaogang)

杭州の富陽の美しい自然を背景に、一つの家族の変遷を悠然と描いたグー・シャオガンの監督デビュー作。絵巻物を鑑賞しているかのような横移動のカメラワークが鮮烈な印象を残す。カンヌ映画祭批評家週間のクロージングを飾った。
(フィルメックス公式ホームページより)

【感想レビュー】
内心、154分…集中力が持つかしら…と半ば心配しながら観始めました

年老いた母を、家族・親戚一同で祝う、中国の古き良きスタイル。
うんうん、なんか中国っぽい〜とのんびり観ていたのも束の間、あれよあれよと事態は動き出します

山と河。

いわゆる、中国のイメージそのままな画を背景に物語は進みます。

家族三世代の価値観の違いは興味深く、小津安二郎監督の『東京物語』を想起しながら、あぁ、どこも同じなんだなぁと思いつつ観ました
(上映後のQ&Aで、影響を受けた監督は、ホウ・シャオシェンやエドワード・ヤンとのことでした。)

登場人物達のリアルな空気感も圧巻でした。
そこに、その人物達がまるで生活しているかのような実在感…
これは、Q&Aで分かったのですが、やはり役者ではなく、監督の実際の親戚を起用したとのことでした。
予算の削減にもなるし、リアルさが出るから、とのことでした。
納得…。
やはり、歯とか肌とか髪の質感にリアルさは宿りますね…

でも、それがとってもとっても素晴らしくて、興醒めせずに入り込める何かがそこにあるような気がいたしました。

そして、この映画の凄さは、なんといっても!
作品概要にもあるように、“絵巻物のような”映像なのでした

画面の手前で泳ぐ人物、奥で歩く人物、それぞれの速度の違いを、絵巻物をめくるように映し出す長尺の映像は、初めての体験でした

ちょっと心配になる位にやり続けるのですね
(これも、Q&Aで感じましたが、監督が、かなりのマイペースなテンポで、さらにとってもソフトなお声でお話しをし続ける…(❗️)…ので、映画に監督の性質って反映されるのだなぁ、とも思いました)

リアルタイムのような生々しさで、杭州の移り変わりが描かれていて、そこもとても興味深いのですが、なんといっても、この絵巻物のような演出こそが斬新なポイントだなと思いました

個々の人々の時間の感じ方が複雑に折り重なって、この世界が在るということが、その長尺の絵巻物のような映像によって見事に描き出されているようでした。
凄い臨場感でした

映画が時間の芸術であることに、改めて思い至りました