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「西郷どん」で鶴瓶師匠(岩倉)が叫ぶ「天子さまー」・孝明天皇暗殺説について

2018年11月03日 | ドラマ
「西郷どん」

どうやったこんな「深みのない薄っぺらい」脚本が書けるのか。「脚本家は頭がおかしいか、天才なのかも知れない」と思って調べたら、中園ミホさんです。

「やまとなでしこ」を書いています。あれは良かった。「ドクターX」も書いている。あれは個人的には嫌いです。頭もおかしくないし、天才でもないようです。じゃあどうやったらこんなひどい脚本が書けるのか。小池真理子先生の原作がさらに凄いのかなー。一生読みませんが。

録画したけど見ていない回があって、さっき見てみたら鶴瓶師匠が、岩倉か、どっちでもいいけど、岩倉が天皇を慕って「天子さまー」と叫んでいました。

なんじゃそりゃ。

もちろん真実ではないでしょうが「孝明天皇暗殺説」は、孝明天皇死後直後から存在しました。「当時の時点」から岩倉は疑われていたようです。昭和になってからは堂々と岩倉が暗殺したという説が出されました。

これはトンデモ説だとしても、史実としても、岩倉は孝明天皇に対して、かなり厳しい批判を「当時から」ビシバシとやっていて、文章にも残っています。

孝明天皇は佐幕派でした。特に会津を信頼していました。岩倉や薩長にとっては面倒な「玉」だったわけです。当時からいわゆる志士たちは天皇を「玉」(ぎょく)と呼んでいました。

あまりに見事なタイミングで崩御し、継いだのはまだ幼い明治帝です。そりゃ暗殺説もでるわけです。ちなみに死因は天然痘と言われています。

「孝明天皇、岩倉暗殺説」がトンデモだとしても、「岩倉ならそれぐらいやりかねない」という見方が当時から存在しました。

そういうことを知っていると、というか幕末にちょっと詳しい人間なら「誰でも知ってます」が、鶴瓶師匠の「天子さまー」はコント以外の何物でもないわけです。

岩倉の話はここまで。

「西郷どん」という題名がよくありませんね。「西郷のみに着目して明治維新と明治政府を描く」ことになるので、どうしても「底の浅い作品」にならざるを得ないのです。
ほとんど意味があるとは思えない「家庭のお話」とかに時間を割くことにもなります。「西郷の家庭」なんて誰が興味を持つのだろう?「糸がどーしたとかこーした」とか本当にどうでもいい話です。
しかも戊辰戦争が終わってからは、西郷は「ほぼ何もやらず」(廃藩置県をしたりしましたが、西郷が主導したわけでない。)、唯一やったことと言えば「西南戦争」ぐらいのものです。
そもそも戊辰戦争だって全ては村田蔵六(大村益次郎)が江戸で指示をしていたわけです。西郷は上級指揮官の一人に過ぎません。

韓国では西郷は「悪人で有名」ですから、たぶん「西郷は何をやった」と言えば韓国の学生なら「征韓論を唱えて、韓国を侵略しようとした」と答えるでしょう。

でも日本では「坂本竜馬は何をやった」にも答えられない学生は多いのです。まして「西郷」なんて。「明治維新で活躍した人」と答えられればいいほうでしょう。

「西郷によって明治維新はなしとげられた」というは「ウソ」になります。「西郷とか桂とか大久保とか龍馬とか大村とか、とにかく多くの人間によって維新はなった」わけです。西郷は何百という人間の「その中のひとり」に過ぎません。それを無理やり「多くは西郷がやった」としようとするものだから、中身のない薄っぺらい脚本にならざるを得ません。

西郷批判ではありません。西郷はたぶんがんばったのでしょう。問題は原作、それから脚本、TV局の「製作意図」です。「意図」があるとはどうしても思えないのですが。

意図があれば、例えば「翔ぶが如く」のように、維新後の西郷を「近代的価値と武士的価値に引き裂かれた悲劇的人間として描く」という「意図」があれば、「維新後の西郷だって」、魅力的な人物として描くことができるのです。

例えば「翔ぶが如く」における西郷下野のシーン。征韓論は決まっていたのですが、最後に天皇の裁可をえる段階になり、三条はあまりの重荷で倒れてしまいます。そこで岩倉が「三条の代理」として参内することになるのですが、岩倉は「自分の意見、つまり征韓論反対意見も述べる」と言います。

それを聞いた西郷、江藤、板垣は岩倉邸に押しかけます。しかし岩倉は命の危険があると知りつつ、断固として征韓論反対の意見を変えず、それを天皇に奏上するといいます。
最後のシーンでは西郷の用心棒である桐野(半次郎)が刀をちらつかせます。しかし岩倉は「そんな刀が怖くて、一国の右大臣がつとまるものか。馬鹿ものが」と中村半次郎を一喝します。

西郷はもうその時には部屋を出ていて、追ってきた江藤新平、板垣退助にこう言います。

「右大臣、岩倉具視、よーくきばった」(根性のある見上げたヤツだという意味)、そしてニコリと笑います。そしてそのまま薩摩に下野するのです。

見どころのあるシーンです。維新後の西郷でもここまで魅力的な人間として描くことは「できる」のです。


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