ルビーとフーラは犬と猫

愛犬ルビーと愛猫チニタ。罰や「NO!(ダメ)」を一切使わず彼らと楽しく暮らす為の勉強をしています。

「人という動物と分かりあう」を読んで

2014-05-09 13:38:08 | 読みもの
著者 : 畑正憲
ソフトバンククリエイティブ
発売日 : 2006-03-16

ムツゴロウさんは生理学(脳や神経)を専門的に学んだ方なのですが、文章は一般の人にもわかりやすい言葉で書いてあるからとっても読みやすくて好きです。

この本も、読んでいるうちに自分がどんな風にできあがってきたか、^^;懐かしい様な切ない様な感覚になる場面がいくつもありました。取り上げたい事柄は沢山あるけれど、今日は2つだけ書いておきたいと思います。

ひとつは、ああこれってチャーリーママさんがよくおっしゃってる事だなって思ったもの。

ムツゴロウさんが犬や猫を寝かしつけてしまう方法なのですが。

本から引用させて頂きます。

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(p.90)

まずペットに話しかけてお互いのボンド(結びつき、絆)を確認します。次には胸の一部を相手の頭につけて、何でもいいから語りかけ、そう歌でもいいですよ。子守唄ならベストです。

・・・(中略)・・・

それからどちらかの手を動物の後足の掌球、つまり脚の裏にあててください。踏ん張るし、もがいて、蹴る動作になるかもしれません。それを受け止めて押し返してやるんです。束縛する気持ち・・・ちょっと違うかな、外で出てくる力をそうっと内に戻してやる・・・
-------引用ここまで---------


これって、落ち着きをペットに対呈示しながらホールドラッピング・・・じんわりと心地よい圧力をかける、とか、もしくは暴れている子に自分自身の身体を意識させてあげる事で精神的なバランスを取り戻させる(リラックスさせる)、というようなことなんだろうな、と。

じんわりとした圧力が動物にとって心地よいというのは、『動物感覚』にも出てきますね。 

日本放送出版協会
発売日 : 2006-05


そしてもう一つ心に残ったのが、

動物の脳には急激に成長する時期があって、この時期に沢山のインプットがあることで脳の回路が出来、使わないものは消滅していく。脳の回路は環境との相互作用によって”抑制”の機能をも持つのではないか?

という部分でした。


礼として養狐場の子キツネのお話しが書いてあったのですが、そのくだりです。

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(p.144)

インプットされる情報が脳にとどまり、残りが整理されるのだろう。ブロイラー状態のケージの中には、風もなければ雨もない。餌を巡っての兄弟との争いもない。広い野原に立つ恐怖もない。記憶や感情の回路は無用の長物となる。小さいけれど、大脳の前部には人の前頭葉にあたるものがあり、意思や意志の抑制を司っている。そしてそのような器官は環境と相互作用をしてどう存在するかを決めているのである。

-------引用ここまで---------


だから、動物が育つ環境はとても大切なのだと思います。

抑制の回路が必要のないほどのインプットの少ない状況は、動物にとってよくないだろう事が想像できますよね。

また、人間の例をとって、無視やネグレクトされた子が親になった時、酷い虐待をすることがあって、脳を調べてみると海馬(記憶を司る)が委縮していたのだそうです。

養狐場のキツネは一匹ずつ隔離され母親から離されてエサだけ与えられる・・・母親の愛情を与えられない環境、これはネグレクトそのものではないか?という事もおっしゃっていました。

このことからペットショップの犬や猫達を思い浮かべた方は少なくないのではないでしょうか。彼らの脳に与える影響を想像すると胸が痛みます。


人間が彼らの抑制回路の成長を阻んでおきながら、その抑制がきかないことを問題行動とし形だけ矯正されたり、または抑制が効かないが為にさらなる囲い込みで(さまざまな事を禁止する)増々インプットを減らされる犬達も少なくありません。囲い込みや過干渉の事を、”善意のネグレクション”と表現されていたのも印象的でした。

動物を飼育するにあたって、脳の成長がとても大切であることを真剣に考えて下さる方が増えますように。ムツゴロウさんの本を読んで、そんなことを思いました。