ぶんやさんち

ぶんやさんの記録

M.エンデ作「夢世界の旅人マックス・ムトの手記」

2007-12-16 20:38:44 | 雑文
「完璧な創造は創造主を呑み込んだ。そう、これが答えなのだ」。
この不可解な作品「夢世界の旅人マックス・ムトの手記」は、この一言を言いたいために書かれた、と思われる。話の筋は、主人公ムトが「老寵姫」という不可解な人物に頼まれて、西の砂漠に建設された「センター」と呼ばれる都市の様子を調べに行く旅行記である。この「センター」は姫が数年前に何人かの建築家や技師を雇い、派遣して作らせたものであるが、その後連絡がまったく途絶えてしまったのである。早速、ムトは数人の同行者を集め、「空飛ぶ帆船」に乗って、西の砂漠を目指す。
都市はすぐに見つかった。ところがこの都市は奇妙なのだ。都市の建物はすべて白で、まるで生きもののようお互いに「食い合っている」。まぁ、こんな調子でこの不可解な物語は展開する。何もかも呑み込んでしまう都市のセンターに「公文書館」が聳えている。この都市の状況を説明し出すと切りがない。読んでもらうしかない。それが、エンデの策略なのだろう。ともかく、先に紹介した言葉が、この旅行記の報告書である。
作品全体を通して、何かを象徴しているようで、それにこだわってしまうと、辻褄が合わなくなってしまう。何か論理があるようで、ない。読者自身が、作品の中に呑み込まれてしまう。呑み込まれるのは読者だけではない。作者(創造主)も、である。故に、評者としては読者がこの作品を読まないことをお奨めする。読んだら最後、もうあなたの安全を、わたしとしては、保証できない。

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