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不詳の人
2004
山下敦弘


「リンダリンダリンダ」の山下監督の多分自主制作作品。
というか、製作年が本作と同じ。
劇場用作品を撮りながらこんなこともやっている山下監督、素敵です。

ストーリーは「とある映像制作会社が演劇塾のPRビデオを依頼され、撮影してたら、どうもそこがうさんくさい、と言うことで掘ってみたらやっぱり詐欺同然だった、しかし・・・」という作品です。
何が何だか分からないですね。スミマセン。
架空のドキュメンタリー作品です。
「その男狂棒に突き(汁刑事)」と同じような作風です。
あちらがツボな方は是非。

こういった作品をきっちり台本を書いてやっているのでしょうか。
主演の山本剛史氏は「その男狂棒に突き」の主演でもあります。
この人が相当面白い。アドリブだとは信じたくないボキャブラリー。
この人が撮りたいだけの映像なんじゃないの?と思いたくなります。


本作(DVD)に収録されているもう一本の「道」という作品。
これもなんだかよく分からないドキュメンタリー風作品。
海外の映画祭でグランプリを受賞した(という設定の)女性監督が、次作を製作する過程でスタッフともめまくる、だけの作品ですが、面白い。バカバカしい。
けれども、実際現場にいるとココまでではないけれども、本作に登場する人物に近い人がいます。
無条件で笑えませんでした。
けれども、いちいち台詞が面白い。
「この映画のテーマは子宮」
「この風を撮りたい」
バカ丸出しです。しかし、周りが見えなくなると言ってしまうかもしれない。コワ。
おもしろいなぁ。

劇場向け大規模映画へのアンチテーゼなのか、新進ネクストジェネレーションズへの嫌がらせなのか、そんなことなんてどうでも良いよ、なのか。
山下監督、何を思って撮っているんでしょうか。

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ヘイズ/HAZE-Original Long Version
2006
塚本晋也


シチュエーション・サイコスリラーとでも言うのでしょうか。
どこだか分からないコンクリートの密室(超狭い)に訳も変わらず閉じこめられた男のお話です。

かなり実験的な作品であるモノの、どうも挑戦的な感じがしませんでした。
冒頭の期待させるもの凄く不愉快な密室感も結構やり尽くされた感じ。
塚本晋也監督らしからぬ小さくまとまった作品となってしまっていると感じました。
予算とか関係なく、予算がないなら無いなりのとんでもない手法で表現してきた一連の塚本作品とはちょっと・・・、と言ったところ。

本作は実はサスペンスではなく、主人公の気持ちを「密室に閉じこめられた男」に比喩した映像であるという文学作品。
期待させておいて「文学作品かよ!」とツッコミが入ります。

映像からしてCUBEを連想させる作品です。
起点を変えた、と言うか発想の着眼を変えているから別の作品なんですよ、という言い訳も聞こえて来そう。
でも、下敷きにはあるだろうなぁ。

しかし、冒頭の恐怖の演出はサスガです。
ココまでイヤな気分にさせる映像はなかなかありません。種類は違えど、ハネケ監督の「FUNNY GAMES」にも通じる救いの無さ。これで押し通したら凄いエグイ作品になったかもしれません。
「恐怖」をテーマにした割には、綺麗にまとめてしまったあたりがかえってボケてしまった感アリ。
ちょっともったいない作品です。

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パフューム ~ある人殺しの物語~
2005
Tom Tykwer (トム・ティクヴァ)


随分お金をかけてますが、つまらないです。
毎度の私見ですが。

ストーリーは恐ろしいほどの嗅覚を持った青年が臭いに取り憑かれ、究極の香水を作るために処女の臭いを集め出す。
切り裂きジャックかドラキュラかといった古典的なお話です。

「臭い」という目に見えないものの映像化にチャレンジした作品で、たしかに匂い立つ感じはあります、が、そこに注力しすぎていて本線がもの凄く単調。
映像にもの凄い力が入っているし、気を抜いていない、女の子もカワイイ、多分、芝居も上手い。
けど、普通の映画です。
イヤ、金がかかってる分、期待値の下回りっぷりが酷い。
テイストとしては映画の「ダ・ヴィンチ・コード」をもっと薄くした感じ。


しかし、主人公が裁かれようとするラストシーンだけは見物。
750人の乱交シーン。
全ての映像制作者が、イケルかどうかは分からないけれども一度はやってみたいと思うシーンでは。
この映像、をこのスケールでやったのはこの人が初めてじゃないでしょうか。
多分、このシーンがあったからトム・ティクヴァは引き受けたのでは。
このシーンだけは必見。


しかし、本作を観るくらいなら他に良い作品がたくさんあるのでソチラをご覧下さい。どっちだよ。



関係ないですが、私は基本的に香りモノは嫌いで香水もお香もダメ。
とはいうものの唯一と言って良いほど例外的に好きなのがサンタ・マリア・ノヴェッラの香り。
以前、友人からこちらの石鹸を頂いたのがきっかけで、それ以来愛用しています。といっても洗うために使うわけではなく置いておくだけ。結構強烈な臭いがするので、これで体を洗ったら大変なことになるんじゃないでしょうか。
ちなみに、この香りを紙に染みこませたアルメニア紙というのもあります。これは燃やすと臭いが部屋に立ちこめるというモノ。
少々お高いですが、良いモノだと思いますよ。
かのレクター博士(羊たちの沈黙)もご愛用の一品。フィレンツェにある本店は800年の歴史を持つ世界最古の薬局だとか。



毎度おなじみの想い出コーナーですが、香りについて一番強烈だったというか、思い出深かったのが、中学生の時に初めて女の子とデートしたときの彼女のシャンプーの香り。確かスーパーマイルドだった覚えが。
理科の実験なんかで顔が近づいたときにも同じような臭いを体験しているはずなのですが、そのデートの時を最も強烈に覚えています。
多分、それは「好きだ」というエッセンス込みだったんでしょう。
臭いも、その時の本人の状態によって捉え方が違うモノです。


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「ソラニン」
2005
浅野いにお


ツタヤ渋谷の1コーナーに目がとまり、読んだところ割にずっぽりハマリ、浅野いにお著のマンガを片っ端から読んでみました。
テイストはどれも似た刹那な感じですが、その中でも「ソラニン」、これは名作です。
いつの間にか目から汗が。
マンガでの感涙は「預言者ピッピ」Banana Fish以来。
(※全然違う種類のお話です)


20代前半のモラトリアムモノなんですが、その描き方に悲壮感が無く、なんだかよく分からない爽やかさがあります。
もの凄く小さな世界での話で、世界で起こっている出来事と自分達との世界に大きな隔たり(無力さ)を感じつつも、誠実であろうとする、大げさではないけれども前向きに生きようとするオトナなのかガキなのか分からない彼らのお話です。

序盤はうんざりするほどのリアルな浮世離れ感ですが、2巻に入って急展開。
ビックリするほど素敵なお話です。
繰り返しますが、大げさではない、遅いミニマムな青春のお話。
多分、共感するのは未だモンモンとするオトナコドモ。私もその一人です。

「マンガなんて、所詮マンガじゃん」とか思っていると損です。
以前、どこかのエライ小説家のインタビューで「僕が絵を掛けたらマンガ描くに決まってるじゃん」という言葉がありました。QuickJapanあたりのサブカル雑誌だった故というのもあるでしょうが。
文字だけで描写できる小説家というのも、もちろん凄いです。想像する出来る余白がある分、間口が広いかもしれません。
けれども、その思い描いた風景ををブレ無く読者に伝えることが出来るのがマンガ。絵の好みでちょっと読者が狭くなってしまうかもしれません。けれども、取っつきやすい。
どちらも好きですが、最近はマンガブーム。

既に映画化決定とのこと。全2巻でサイズ的にも映画向き。
これは駄作にして欲しくないなぁ。


ところで、最近少年モノの漫画を読んでないからかもしれないけれども、マンガがマンガっぽさを失ってる気がします。
「キャプテン翼」の地平線が見えるようなどこまでも続くピッチとか、「スラムダンク」の山王戦ラスト1分で1巻になってしまうような時間の演出とかの「マンガならでは」感が無くなっているような。
この「ソラニン」もこの絵を切り貼りしたら絵コンテが出来てしまいそう。
作家さんが映像で育ってきたということなんでしょうかね。


とはいえ本作、少ないながらも最近目にした中では、イチオシです。

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