notation




サマーウォーズ(SUMMRE WARS)
2009
細田守



ほったらかしっぱなしの当ブログでしたが、コレばっかりは言及せざるを得ません。

これは名作!
今年の夏物一点買いは、コレで間違い無しですよ!旦那さん!
キモチワルイくらいのベタ褒めです。
これから鑑賞される方は眉唾でお読み下さい。


細田守監督作品ということで、前作の「時をかける少女」があっての期待値はハンパ無いですが、いや、もう、ねぇ・・・。

今現在、国産で、破壊力というか、瞬発力というか、下手な理詰め抜きとか、邪推を凌駕するとか、そういった本来「作品」が持つべき力を持っている作品って何があるかなぁ・・・と思うと、殆どアニメです。
「涼宮ハルヒの憂鬱」「けいおん!」「EVA 破」あたりはまぁ面白いよねぇ・・・、とか言ってると損しますよ。超私見ですが。

もう、むき出しなんですよ。
楽しい!面白い!好きだ!とかいう感覚。
創っている方々の搾取されっぷりは度外視で。(※その辺もいい加減にして欲しいですが。)

TVドラマの続編の劇場版とかは、もうシネ!マジでシネ!消えて亡くなれ!
バルス!!(※ラピュタ語で「閉じよ」の意味。トルコ語でのBARIS(平和)が語源か)

余談ですが、川崎の劇場を出た足で秋葉原に向かって漫画屋とか、アニメショップとか、フィギュア屋とかを徘徊していたのです。
そこにいるお客さんが、恵比寿の有隣堂あたりにいる死んだ魚の目で何となく流行っているモノを探す目ではなく、確実にハンターの目。
ぽっと出の私がそこにいることが憚れんばかりの静かなる戦場。



少しばかり分析チックなことも綴っておこうと思います。

本作のテーマが細田守監督が言う「家族」と「繋がり」というのは観た方であれば言うまでもないでしょう。方々のインタビューでもそう宣っています。
少なくとも、パルムドールを獲る様な人間の本質に迫るような描写があったわけではなく、万人に受け入れられそうなアカデミー賞のような最大公約数ヒーローもいません。もちろん、日本アカデミー賞を獲るようなメジャー俳優が声の出演をしているわけでもありません。
何故、面白かったのか?

考え込むと『サマーウォーズとは何だったのか?』という昔のEVA特集のスタジオヴォイスの様な疑問が浮かんできます。
いや、焼き付いているシーンを思い返してもストーリーとかテーマとかモチーフとかに対して明文化できそうな感想は無いのです。
「ディアドクター」を観たときのような『あれは「良い意味でいい加減」なことを是とする閉鎖された村社会のお話なんだけど、最後はファンタジーで締めちゃって、なんだか視点がぼやけた映画になっちゃったよね。いや、良い映画なんだけど』といった分析できてんだかどうなんだかわからない映画通っぽい理屈が通用しない。

「サマーウォーズ」に登場する仮想空間OZの世界観にしてはSF側からのツッコミ所満載ですが、それは敢えて物語をシンプルにするための仕掛けの一つだと考えています。現在ある技術の中で、「理解しやすい」「バーチャル」でありつつ「繋がり」を象徴するテクノロジーの選択という解釈で。
「EVA」における「人類補完計画」ではなく、「2001年宇宙の旅」におけるHAL 9000(ディスカバリー号に搭載された人工知能を備えたコンピュータ)であると解釈するのが妥当でしょう。

あるのは「もう一度観たいなぁ」という漠とした感想。
果たして「サマーウォーズ」に何があったのかと聞かれたら「細田演出」のズバ抜け方に尽きるかもしれません。
宮崎駿監督のテーマ(?)である人間嫌いとか、大友克洋監督のパラノイア的な緻密な作画とか、庵野秀明監督の丸出しの自分哲学とか、サマーウォーズ以前の作品を思い起こせば、そこにあるのは何かに向かった表現手法がコンテクストとマッチしてるなぁ、と。
全ての映画はコンテクストの上で、ないしはコンテクストをステージとして踊る人たちというアウトプットだと思っているのですが、それを超如実に顕しているのが本作「サマーウォーズ」なのではないでしょうか。
『「家族」や「つながり」、それをもって僕たちは人を人たらしめる』という出口の表現のために、あえて脚本上はシンプルに組み、表現手法追求しまくった作品結果が「サマーウォーズ」というコンテクストなのではないでしょうか。

ちなみに、コンテクスト、という単語も随分曖昧なのですが、よく「文脈上の共通解釈」という意で訳されます。
でも、もう少し主題とかファクターとかという言葉に近い意味で私は使っています。

何だか分からないけれど感動した、という方が殆どだと思います。
正にその通りで、明文化せずとも、コンテクストから逆算の理解でテーマを肌で感じる。
で、結局何だったの?というのは複雑になりすぎた映画作りへのアンチテーゼの様にも思えますが、それはただの深読みでしょうか。
その最深部にある、言葉では言えない表現を探り当てた映画。
とある映画監督が『テーマ?それが一言で言えれば俺は映画なんて撮ってない』と言っていましたが、その言葉は翻って『映画?一言で理解できるなら映画なんて観ない』ということにもなります。
これは計算で出来ることではありません。もし、出来たとしたらとんでもないことです。
本作は細田守監督が言語化できなかったことを、言語化しないままに私たちが感じることができる作品ではないでしょうか。
シンプルで、逃げも隠れもせず、真正面から面白かった。


面倒なことをグダグダと捲し立てましたが、巡り巡って言葉を探して、結局私が行き着く一言。


良かった、また観たい。





本作とか、昨今の映画とかアニメについてなんやかんやある方、是非ご連絡下さい。
ビール片手に建設的にクダ巻きまくりましょう。

コメント ( 4 ) | Trackback ( 0 )