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39-刑法第三十九条-
1999
森田芳光


1999年と随分中途半端に昔の中途半端にメジャーな作品を今更鑑賞しているわけですが、特に他意はありません。
何となく「そういえば観てないなぁ」と。

森田芳光監督作品と言えば「家族ゲーム」ですが、私は「(ハル)」です。
あの作品がある限り、ついて行きます。
最近はろくな作品撮ってないみたいですが。

今観てみれば大したことのない伏線回収モノと言ってしまえばそれまでですが、話を大きくしずぎず、あくまで刑法第39条(心神喪失及び心神耗弱とみなされた場合の犯罪の不成立及び刑の減免)の危うさに絞りきっているあたりが凄い。
結構本線と関係ない大風呂敷を広げてしまってナンダコリャ?というオチになってしまう作品ではなく、きっちり刑法第39条に物申すという目的を果たしています。なるほどねぇ。

ただ、あまりにも特殊な芝居(キャラ付けすぎ)とカメラワーク(寄りすぎ+揺れすぎ)のおかげで随分と見づらい映画でしたが、映画としてのキャラは随分立っています。お金はなくとも脚本と演出が頑張って、なんとか作品を作っています。

そう思うと、今の邦画は随分キャラが薄くなってしまったというか、画一的だなぁ。
ちょっとした見た目の派手さとか、カラコレとか、役者とかの微細な差異しか無い気がします。
それらをひっくるめて別世界にしてしまうのが映画だと思うのですが。

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監督・ばんざい!
2007
北野武


予想を遙かに下回る作品。
観なけりゃ良かった。

今まで『映画』を撮っていた監督とはまるで思えません。
急にコメディアンとしての自分を見つめ直してしまったんでしょうか。

本作を撮ったのが北野武でなかったとしたら少しは評価された作品になっていたのかもしれません。
抽象を通り越して、シュルレアリズムもぶっ飛ばしてよく分からない世界に行ってしまいました。でも、意外と構成はしっかりしていて、ちゃんと物語は展開しています。でも、その構成が面白くない。

全てが『狙い』であることがわからんでもないのですが、その『狙い』は鑑賞者に『面白い』と到達してこそでは。
「分からないやつは分からなくて良い」は映画じゃ無いと思うのです。

ほぼ同じベクトルでありながら、事前情報をカットするという手法を採り、また最後まで『映画』を持ち込まなかったかった松本人志監督の「大日本人」方が狙いが届いた気がします。


コアな北野武ファン以外は無理して観る映画じゃありませんね。

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ドーン・オブ・ザ・デッド
2004
Zack Snyder (ザック・スナイダー)


同名のジョージ・A・ロメロ監督の「DAWN of the DEAD」(所謂「ゾンビ」オリジナル)のリメイク。
リメイクだけあってほぼ同じ展開ですね。
オリジナルよりはやや軽いタッチでそれほど生死の価値観に迫る感じではありません。
「とにかく生き残るぜ」という映画。

本作で何より秀逸のなのが「ゾンビが全力で走って襲ってくる。(死んでるから限界知らない)」というもの。今更ですが。
大概のゾンビモノはユラユラしながら襲ってくるモノで、健常者ならナントカなりそうな感アリですが、こう全力で来られると勝てる気がしません。
特に冒頭で最初に全力疾走してくる主人公の旦那のゾンビの走りっぷりは生きているときより生き生きしています。

結構前の作品ですが、今更鑑賞。
オープニングの異常なカッコ良さは聞こえてきていて、それだけは観ていたんですが。
※ちなみにこちら
サスガCM出身の監督です。

同じくザック・スナイダー監督の「300」は結構ボロクソに書きましたがコレは結構好き。
やっぱり下手なCGIとか使わないで生身で勝負した方が面白い。
ゾンビ好きに悪い人はいません。


ところで、現代ゾンビモノで一番面白いと思うのがエドガー・ライト監督の「ショーン・オブ・ザ・デッド」
90年代UKのオタク感溢れるゾンビモノ。
ちなみに、この「ショーン・オブ・ザ・デッド」も日本未公開だったそうなんですが、エドガー・ライト監督の最新作で2007年で最も面白いと言われていて、劇場公開を超期待していた「Hot Fuzz」も日本では未公開のままかもしれないそうです。観たいなぁ。
「Hot Fuzz」については町山智浩さんのブログをどうぞ。
観たいなぁ。
「Hot Fuzz」劇場公開を求める署名サイトも立ち上がっています。私は10回書き込みました。
シネセゾンかCQNのレイトなら間違いなくイケルと思うんですが。

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オーシャンズ13)
2007
Steven Soderbergh (スティーヴン・ソダーバーグ)


シリーズ3作目。
『何も考えずに観られる』枠では相当面白い作品です。
ジョージ・クルーニーとブラッド・ピットをはじめとするキャスト群のコジャレタ会話と汗臭くない泥棒家業。
ドンパチをやらないスマートな映画。
細かいところまで行き届きすぎたコジャレ感。
結構サクッと大げさなことをやってしまうマンガチックな、正に映画の世界。

登場人物が多すぎて意味が分からなくなっていた前作の12より、さらに一人増えたモノのちょっとスッキリした感があります。
これだけ多くのキャラを作って2時間にまとめるのは相当大変なんだろうなぁ。


中盤で「アレ?コレ誰だけっけ?」とか言い出すとバカだと思われてしまう恐れがありますが、多分みんな忘れてます。
そういうあら探し映画じゃないので気楽に観られますね。
デイト向け。

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僕のニューヨークライフ
2003
ウディ・アレン


アレン監督が「セレブレティ」で描いた『面倒で上手くいきっこない男女』のお話を、さらにコメディにしてしまった様な作品です。
クリスティーナ・リッチ演じるアマンダの鬱陶しさったらありません。

ウディアレン監督の描く男女に、できることならなりたくないけれども、そこにしかない真実。
当人たちにその瞬間には決して分からない、鑑賞者として傍観しているからこそ分かるその瞬間へのアドバイス。あの時、ああ言えていれば・・。

これを想える作品が他にあったら教えてください。

本作は、アレン監督ファンが求めるコジャレではありません。
ただただ、男女の鬱陶しいもめ事を描いています。爽快さもなければ答えもない。
常々思うのですが、アレン監督作品をある種のアーバン・ライフのオシャレ感として観ている方は損してるとおもうのですが、如何なモノでしょう。
本作DVDのジャケットもどうかと思いますよ。

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血と骨
2004
崔洋一


あまりにも壮絶すぎて、何を思えばいいのかも分からず終劇。
ただひたすらに「怪物」の生き様を描き、そのまわりで翻弄される家族や人々。

もし「血も涙もない人間像の中に見え隠れする人間性」を描きたかったのであれば、ちょっとローとハイを区別しすぎでは。
わかりやすすぎ。
わかりやすいのが悪いことではないんですが、節々であまりにも急激にローに落としてくるために、ついて行けません。「なにか起こるのでは?」と勘ぐってしまいます。

とはいえ、やはりここまで描ききったのは凄い。
深作欣二か三池崇史か。イヤ、崔洋一。
暴力で笑えない映画を久々に観ました。

「この感覚は何だ?」と記憶を探したら熊切和嘉監督の「鬼畜大宴会」の感覚に近い。
ちなみに、「鬼畜大宴会」は学生運動中の内ゲバの様子を、登場人物達の本来の目的である政治活動やら思想面を一切排除して、ソリッドに暴力だけを描いた映画です。
この、ソリッドにそのものだけを描くことでしか到達できない境地があって、そうしなければ見えてこない『何か』があります。その『何か』は分からないことが多いけれども、絶対に残る。

「血と骨」が描こうとしてた『何か』も引っかかっていますが、鑑賞直後に全てが解けてしまう映画よりもこっちの方が好き。

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ミツバチのささやき
1973
Victor Erice (ビクトル・エリセ)


アナ(アナ・トレント)とイザベル(イザベル・テリェア)の2人の姉妹をモチーフとして、少女の持つ神聖性、純真さ、残酷さを描ききっています。
月並みな言い方ですが、やはりこの言い方になってしまいます。


スペイン内紛のさなか、街にやってきた「フランケンシュタイン」の映画を観た二人の姉妹は、まるでサンタクロースを信じる子供のようにその存在を信じ、夜はベッドでこそこそと話し合う。そのお話はフランケンシュタインのお話であるけれど、命の話であり、善悪のお話。そしてアナは一人でフランケンシュタインを探しに行ってしまう。

このあらすじを読んでおわかりの通り、モチーフが「パンズ・ラビリンス」と共通しているところがとても多い。
パンフレットの解説でも殆どの方が本作を引き合いに出しています。
ギレルモ・デル・トロ監督が本作を観たことがなかったとしたら驚異のシンクロニシティです。
そしてこの2作品に優劣を付ける必要は全くありません。どちらも素晴らしい作品です。
「パンズ・ラビリンス」では少女の空想を綺麗で残酷な映像に着地させることで逆説的に少女の置かれた悲劇的な状況をに浮き彫りにしています。
「ミツバチのささやき」はその空想を描かずして本人を通して、そのリアルな映像だけで垣間見させる。

そもそも本作が名作たる所以はアナ・トレントの奇跡的な名演技。あれは本当に演技なんでしょうか?撮影されていることをまるで分かっていないような空気感。
あの、世界の全てをのぞき込むような眼差しにはギクッとしてしまう。
「フランケンシュタイン」を観る、そのスクリーンを見つめる目は、本当に何かを観ています。この眼差しを久しく観ていなかった。

時代的に決して明るくはなかったスペインをモチーフにして、その中に暮らす少女の、その眼差しに光を求めた作品。
傑作です。
ビクトル・エリセ監督。ついて行きます。

なぜ本作のDVDが廃盤なのか。
納得のいかない世の中です。
歴史に残る名作映画というのは正にこういう作品のことを言うのでしょう。


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パニック・ゲーム
2006
ブッチャー・ブラザーズ

ほぼ同名のフィンチャー監督の「パニック・ルーム」に近い密室サスペンスかと思いきや、全然違います。
かといってホラーでもなく、スプラッタでもなく。
なんだコリャ、という映画。

「ある街にある一家(兄弟)が引っ越してきた頃から若い女性の行方不明者が増えてきた。彼らに関係はあるのか?彼らの家で繰りひろげられるゲームとは?」というDVDの紹介文なんですが、そこを無関係という考える方がプロットとして無理があるというモノ。
この辺から既に甘さが全開なので、本編もただその「本当の秘密」を隠し続けるだけ。それならそれで「悪魔のいけにえ」並の超B級スプラッタにオチていればまだ楽しめたんですが、その辺も見せたり見せなかったり。

残念なことに撮影・照明・美術が結構上手くできている。余計笑えません。
「志村、後ろー!」という面白さ無い本作。

ちなみに、もう一本のラインとして「幸せとは家族が中心なのか?」という主人公と兄弟の軋轢という柱を立てていますが、これも『その秘密』によるものなので、中盤までなんだか分からない。ルサンチマン爽快スプラッタという新たなジャンルを開拓したのかと思っていました。
この『秘密』を早々に明かしてこの話ベースで主人公の葛藤をメインに描いた方が良かったのでは。
ラストはこちらの「なんかいい話」っぽいところに落とし込んでいますが、大して好きでもない相手とセックスした後のピロー・トークの様で何も響きません。
やはり、映画のテーマは1本でなければいけませんね。

残念な映画でした。


なんか腹が立つのがブッチャー・ブラザーズという何狙いなのかバレバレな監督名。
こういうの、売れてから自然発生的に呼ばれないと恥ずかしいですね。

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ALWAYS 三丁目の夕日
2005
山崎貴


2006年の国内の賞をかっさらった本作。
どうしても観る気がしなかったのですが、やっぱり観なければ良かった。
本作が好きな方は以下読まないでください。


『誰でも分かるステレオタイプないい話』をずらっと並べて安いCGIで町並みを再現しただけの映画でした。
ここまで感情の沸点を下げなければ感情を動かされない程、現代は無感動になってしまったんでしょうか。
『良い話で感動する為に ~入門編~』みたいな作品です。
「本作を観て涙しなければ『感情ライセンス』もらえませんよ!」そんな作品です。

全てのエピソードが導入部で終わってしまっています。そこから物語りが展開するはずなんですけど。
もしかして私が観たのは予告編だったんでしょうか。


そして、あまりのCGI子役の動きっぷりに「これが日本のCGIの最高峰か」と仰天。サスガはアニメーション大国です。目が死んでいるのは観なかったこととして・・・。
え?アレ、生きてるんですか!!!!!


マズ、企画の目線が嫌い。
明らかに戦後の時代を馬鹿にしている。
「清貧」を描いたつもりなんでしょうが、そんなに脳天気じゃないでしょう。
まるで、白痴かなんかの様に人々を描いている。感情の全てを言葉で伝えてしまう。
絵本でももう少し行間読ませますよ。
私はもちろんその時代の人間ではありませんが、現代と変わらず問題を抱えまくって、その端々に幸せを見いだすのが人間ではないでしょうか。
その部分を描かないで、何が「昭和30年代、毎日が明るく輝いていた」なんでしょうか。

こんな、5分に1回幸せが訪れるような人間を馬鹿にした映画を作って喜ぶのは、恵比寿のコジャレタ飯屋で経費でメシを食い、駅前で10円募金をして優越感を得るような馬鹿貴族意識を持った連中。選民意識でも持ってるんでしょうか。
頭悪いですね。浅ましい。下品。
涙も汗も血も体温も想いもなにも無い。
『映画』がなにも表現していない。


困ったことに、こんな安い三文映画でも観ているうちにそのレベル低さに慣れてしまい「まぁ、こんなもんかなぁ」と思ってしまうこと。
これは例えるならiPodのクソ悪い音にも徐々に慣れてしまい「こんなモンで良いか」と思ってしまうことと近いかもしれません。
と言うことは、程度の低いテレビ番組で十分にアタマのレベルを下げて投下した本作。
狙い通りでしょう。


こういう馬鹿な大人のエゴだけで作られた映画を観させられる子供達は本当にかわいそうです。
この映画の中で現代の子供達が感情移入できるシーンはあるのでしょうか。


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『ブレードランナー』製作25周年記念 アルティメット・コレクターズ・エディション(5枚組み)
2007
Ridley Scott (リドリー・スコット)


DVD買ってしまいました。(※画像は本DVDのジャケットです)

だって「ブレードランナー」ですからねぇ。
多分、5年くらいぶりに観ます。

5枚組のDVDに収録されているのは下記。

■本編類
1.『ブレードランナー ファイナル・カット』(2007)
  ※リドリー・スコットが製作25周年を記念して再編集
2.『ブレードランナー』ワークプリント(1982)
  ※劇場公開前のリサーチ試写で使用された、オリジナル本編
3.『ブレードランナー』(1982)
  ※オリジナル劇場版
4.『ブレードランナー 完全版』(1982)
  ※オリジナル版から削除された残酷シーンなどを追加したインターナショナル劇場版
5.『ディレクターズカット/ ブレードランナー 最終版』(1992)
  ※音声・画質初リマスター

■メイキング類
1.新作長編ドキュメンタリー『デンジャラス・デイズ:メイキング・オブ・ブレードランナー』
2.初収録メイキング映像、フィリップ・K・ディックのインタビュー(音声)、ポストプロダクション映像 他


全部観られるわけねぇじゃん!

とはいうものの、本邦初公開の『ファイナル・カット」と『オリジナル本編」はとりあえず鑑賞。
『ファイナル・カット』はほぼ『ディレクターズカット』と近いです。
ただ、随所にCGI処理がされていて映像がかなりクリアになってしまっています。特に、一番印象深いであろう巨大ビジョンにゲイシャガールが映し出されている街並みカットは奥行きが相当ついてます。でも、オリジナルの方が好きかも。退廃した煙った感じはオリジナルの方が出てるなぁ。

ラストシーンはやはりディレクターズカットと同じ展開。
劇場版の最後にデッカードとレイチェルが見ているであろう空撮シーンはやっぱりいらない。モノローグもいらない。
カタルシスの為の保険みたいなシーンでしたし。
ああいう鑑賞者を馬鹿にしたオマケみたいなのは鑑賞後感を異常に損ねるのでやめた方が良いと思うのです。プロデューサの意向で追加したそうなんですが、リドリー・スコット監督は異常に気に入らなかったということで後のディレクターズカットでバッサリ削除。
余談ですが、映画のファイナル・カット(最終編集権)はプロデューサーサイドが持っています。自分の納得のいかない作品を世に出す監督の気持ちというのは如何なものなんでしょうか。
そりゃ、何度も再編集したくなるのもわかります。最初が気に入らないんですから。
けど、再編集しすぎでしょ。ワークプリントからの再編集はもちろんとしても以後トータルで4バージョンも存在するとは。
で、買ってしまったり観に行ってしまう私のようなアホがいっぱいいるわけです。


本作に収録されているメイキング類の映像特典は合計10時間にも及びます。
観ねぇよ!
今のところ半分くらいですが。
結構、金の話が多いです。
でも、全員が「面白いに違いない」と信じて作っていたというのはとても伝わります。

サスガにオモチャ付き(スピナーとユニコーン)プレミアムバージョンは買いませんでしたけど。オマケがデッカードが持ってた銃(超リアル)だったら危うし。
ナウシカの時も王蟲付きのボックスは相当悩んだ挙げ句に我慢。あれがメーヴェかテト付きだったら危なかった。
テト・ロボット兵・ジジ・小トトロ・バロン男爵付きのジブリボックスが出ないことを祈るばかり。

SFを愛する者の『お布施』のようなこのDVD。
でも、買って良かった。
多分、Blu-rayボックスとかHD DVDボックスとかその先の世代のボックスが出たらその都度買ってしまうことでしょう。

あると結構観てしまうものです。そう思わせるのも本作の魅力。
大概の作品は「一度観ればいいや」なんですが。
やっぱり良い作品だなぁ。

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