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映画【旅芸人の記録】

2006-12-27 02:13:27 | 映画
1975
テオ・アンゲロプロス
テオ・アンゲロプロス全集 DVD-BOX 1


特にやることもなく新しい机でも作ろうかと思っていた12月24日。
不意に先日の酒の場で映画に誘われ二つ返事。
で、行って参りました下高井戸シネマ

軽く下調べをしてみたら上映時間3時間52分。キネ旬No.1。
ギリシャ映画。
前日から変な緊張感。これから始まる我慢大会。
未体験アドベンチャー。

正直言って、楽しめたとは言い難い。長すぎ。
昼過ぎに入った映画館を出たらもう夜でした。

ほぼ1シーン1カットの展開で、序盤は「ほほう、こういう手法もアリかも」と思いつつも30分で既に眠気が。
後半からはやたら政治色が強くなり、というかギリシャ内戦映画。あそこまで共産党目線だとは思いませんでした。占領されまくりのギリシャ近代史をわりとリアルに見せつけられた感じです。でも、長いよ。
アンダーグラウンドみたいな感じ。でも、超地味。長い。
それに追い打ちをかけるような終始どんよりとした空模様。冬。
グラン・ブルーの様な澄み切った空と青すぎる海なんて終盤に1カットのみ(といっても10分くらい)。

新しい世界を垣間見た感じです。
中学生くらいの時に欲望(Blow Up)を初めて観て「何じゃコリャ?」と思ったときと同じ感覚かもしれません。
多分、見る人が見れば面白いのかも知れません。そんな感覚はちょっとはありました。でも、今の自分にはまだ。
ギリシャ近代史とか分かった上で、あと10年もすればこの映画の面白味がちゃんと分かるんでしょうか。

持ち前の集中力の無さで、長尺ものは割と敬遠していたのですが、ほぼショック療法。
どんとこいバリー・リンドン

映画【ナイスの森】

2006-12-24 02:14:09 | 映画
ナイスの森 The First Contact
2005
石井克人 / 三木俊一郎 / ANIKI



序盤、これは映画じゃない、と思いつつも見続けているとなんだか妙なハイになり、いつの間にか見終えてしまう、不思議な映画でした。
何本かのオムニバスみたいな感じ。それが暴力的に入り交じる。

多分、監督「既製映画のマネっこをやるつもりなんか全然無い」というのがビシバシ伝わります。
しかし、それに慣れるまでに時間がかかりました。最初の1時間はぼーっと洗濯をしながら見て、その後に引き込まれていく。
最終的にも所謂映画としては成立していないのですし、1本の作品としても多分成立していません。
でも見てしまう。
その理由は女の子が可愛いからに他なりません。
女の子雑誌系のモデル(ハーフ側)をふんだんに配置し、随所で主張してくる。全然役者じゃないから演技なんてできてもいない、けれども可愛いから観てしまう。オッサンです。
流石、元アイドルを嫁に貰う石井監督です。ここまで自分の趣味を反映させることのできる監督は凄いです。女と映画の関係はゴダールみたいですね。

ラスト付近の The Volumeという件だけが異常にに映像的で、これは言い訳なのか、コレがやりたかったための一連の作品なのかを是非とも聞いてみたいところです。多分、このカットはどなたか監督自身がファインダー覗いているはず。じゃなかったらそれまでのアングルとの区別の理由が分かりません。

この映画は、映画としてではなくて、以前やっていたGrasshoppa!というビデオマガジンシリーズの延長を短編作品としてではなく、あるトーンを決めての自由演技でまとめてみました、というものではないでしょうか。
だったら、映画館でやる必要もなかったと思います。正解は分かりませんが、多分こうじゃない。
雑誌(BrutusとかCutとかのカルチャー系)と連携しまくってオマケDVDを相当数な雑誌に付ける。1クール全部乗っ取るとかやっても良かったかも知れません。雑誌別DVD連載オマケ(全部集めると合体して巨大ロボに!)。

ところで石井監督関連作品で「映画」だったのは鮫肌男と桃尻女だけだと思います。他のはテレビでも映画でもない。
なんてことを言っていると頭の固いオッサンかとも思われますが、できれば適材適所が好ましいかと。
この金のかけ方と劇場公開を成してしまったのはネームバリューとプロデューサーの力ですね。採算採れたんでしょうか。

こういう作品があると、新しい方法(メディア)が発見できそうな気もします。

映画【ハンニバル】

2006-12-23 03:36:58 | 映画
ハンニバル
2000
リドリー・スコット


一連のレクター博士シリーズを見直してみました、と言うことで締めとしてはやはりコレ。
文句なしの作品ですね。
映画マニアからするとイマイチらしいのですが、そう言う人はよく分からない芸術映画かタレント映画だけ観ていれば良いのだと思います。
批判するために観るなんて馬鹿馬鹿しいですね。
でも、クラリスはやっぱりジョディ・フォスターが良いです。ジュリアン・ムーアはちょっとイカツ過ぎ。惜しい。
スケジューリングやらで出演できなかったんだと思いますが、代役だったなりの演出になっています。

このシリーズを一連で見てやっとキャラクターに情が沸きます。愛すべき情を持った変態たち。ティム・バートンの描く異形の者たちと少なからず接点があるかと。もちろん、レクター博士だけではなく、クラリスももちろん、その他のキャストも。
本作ではレクター博士の演出が控えめだけれどもキャラが最前面に出ています。完全に主人公。
シャーロックホームズ(レクター博士)を観るワトソン(クラリス)目線のストーリーテリング。手記みたいな感じ。
演出が完成されすぎてて怖いです。

BGMで「美しく青きドナウ」がやたら流れます。好きな曲なので許せるのですが、この曲にそこまで固執する理由が分かりませんでした。舞台はイタリアじゃなかったの?
理由を知っている方がいたら教えてください。
メロディー違いのバージョンまで出てくる。それはイマイチでした。

シリーズをちゃんと見てみるとやっぱり楽しめます。ということが分かりました。2度おいしい。


小説の方が面白いらしいのですが、未読です。
あんまり比べる物じゃないと思うので、ソレはソレということで。

映画【レッド・ドラゴン】

2006-12-22 02:06:09 | 映画
レッドドラゴン
2002
Brett Ratner



レクター博士シリーズ第三弾。
「羊たちの沈黙」のプロローグ的な作品です。
もしくは、当たったシリーズだからもう少し小銭稼いどくか、といった趣き。

「そうだ、観ていない」と思い、昨日の「羊たちの沈黙」で復習してから、本作ということです。

レクター博士が、あんまりフィーチャーされていない本作はやや不満。クラリスも出てこないし。
作風も、やたら現代っぽいアクションが多々あり「監督誰だコノヤロウ」と調べればBrett Ratnerという「ラッシュアワー」の監督。決して嫌いではない監督ですが、作風違いすぎ。こういう雰囲気の映画じゃないと思うんですけど。
ちなみに「ハンニバル」の監督はリドリー・スコット。文句無し。というか、結構忘れた。明日観ます。

3段オチに普通に驚く。油断しすぎ。2002年の製作だということをすっかり忘れてました。
中盤の甘い展開はこのためだったのか。
迂闊。

映画【羊たちの沈黙】

2006-12-21 02:10:29 | 映画
羊たちの沈黙
1991
Jonathan Demme


訳あってまた見直してみました。
やっぱり良くできた映画です。面白い。エンターテイメント。
観ている側が欲求不満にならない程度の伏線の張り方が絶妙ですね。スーパー脚本家の仕業でしょうか。
懲りまくりの脚本の割に意外と普通なカメラ。照明もリアルすぎて雰囲気を付けてない。これはわざとやってるんでしょう。
雰囲気作りの為の演出照明に慣らされている家畜視聴者に想像力を取り戻させるという意味では大正解。私もその一人です。

レクター博士からインテリを抜くとタダの変態。
インテリというのは、もの凄い仮面になりうるんだなぁ、と思った次第です。

レクター博士とクラリスのプロファイリング合戦のお話なので、深みがあまりない。
やっぱり、この映画は娯楽映画だということが分かりました。
後に、セブンであれこれと人間味を加えすぎてちょっと失敗し、SAWへと受け継がれていく訳で、エンゼル・ハートくらいの無茶苦茶っぷりは別ジャンルの映画として発展してしまった現在ですが、如何お過ごしでしょうか。

供給(GR)

2006-12-19 02:20:30 | 侃々諤々
土曜日、2件の忘年会で程々にしつつも終電を逃し、菊名止まりの東横線からタクシーで帰宅後、先日スチールを撮影したバンドの連中と合流して27時くらいまで呑み。自宅に帰って借りた漫画を読みつつ就寝。
起きて鎌倉に邸を構えた会社の先輩宅へ遊びに行き、その息子とじゃれ、海岸まで散歩。
道が混む前にと日も暮れぬ前に後にし、いざ秋葉原へ。

GR DITIGAL購入。
Nikon D70sを購入した同じ店。行列のできる電気屋。

「やっぱいいわ、リコー」

まともなコンパクトカメラはミノルタのTC-1以来です。

28mm単焦点、そそります。
そういえば大学進学の時にオヤジから貰った(盗んだ)Nikomatも暫く28mmだけで撮影していました。
この微妙な広角な感じ。ややパンフォーカス。合わせづらいピント。
このレンズの歪みの少なさ。パースは付くけどゆがまない。寄ってしまえばそれなりに流れてしまう周辺部。そりゃやむを得ない。

ダイアルが2つある。マニュアル操作の時は絞りとシャッタースピードを各ダイアルで操作できる。
それを先日買った友人から教えて貰ったときに決意しました。
メニューは直感的とは言い難いものの、慣れ次第。
まだ外部ファインダーは購入していないのですが、急務です。

どうやら「売る」ことよりも「満足」を前提として作られたプロダクトだけあります。一気に愛着が沸きました。
持ったときの重量感・バランス・質感。撮った写真。
デジカメは消耗品なんてことを言われて久しい昨今ですが、コレは良い。
持ってて嬉しい。撮ってて楽しい。
あの2chでさえGRスレはまるで馴れ合いブログの様な有様。愛が伝わります。
一眼レフばかりでゴリゴリに構えて撮っていた日々よ、しばらくサヨウナラ。

あんまり手放しで浮かれるのもどうかと思うのでこの辺で。

映画【赤目四十八瀧心中未遂】

2006-12-16 02:03:05 | 映画
赤目四十八瀧心中未遂
2003
荒戸源次郎


ザ・邦画。
好き。

決して好きなタイプのお話ではないのですが、邦画の良いところばかりが出ています。
嫌いな人は「こんなタルイ映画観てられるかよ」ってなもんでしょうが、それはそれでしょうがないでしょう。

尼崎を舞台に展開するのですが、方言を(多分)忠実に制作しているために所々分からない言葉。
土着というのか、何なのか分からない感覚ですが、嘘をつかない感覚は好きです。
昔ながらの街というのも下手なセンチメンタルでの撮り方をしていないので、素直に好きな部分だけを感じられる。
いちばん好きなシーンは「真夏の夜のバス停」。バツグンです。もっと長く観ていたかったけれども、すぐに転換。

主人公の役者の演技が上手いとか下手とか言ったら、そういうジャッジじゃない。芝居を観ている感覚ですね。だから多少の誇大は許せます。完全に非現実。
これが邦画を観るときにいちばん欲しいファンタジーと言うのではないでしょうか。同じ国に暮らしているのにもかかわらずの非現実。
リアリティって下手すると貧乏くさいだけだから、それを違う方向へ昇華してくれる構成が好きです。
できないことはやらない、けどできることは無茶なほどやる。

先日観た「疾走」でちょっと薄いかなと思ったところがモロ出し。構成は「疾走」の方が緻密でしたけど、こちらはロケンロールな暴力さ。率直すぎ。

花村満月っぽいなと思ったら「ゲルマニウムの夜」制作総指揮だそうです。

実りつつ熟成されて腐って落ちる寸前っていう感じの漂う映画です。
3年前に観ていたら全然好きじゃ無かったと思うんですけど、好きな作品です。
「毒を食らわば皿まで」な貴方、お勧めです。

映画【ポルノスター】

2006-12-14 00:00:41 | 映画
ポルノスター
1998
豊田利晃


タイトルも良いし、ジャケ写の千原ジュニアも良い。ジャケ裏も煽ってくる。先日見た「空中庭園」が割と印象深くて、豊田利晃という監督をちょっと掘ってみたらこの有様
知っている方は知っていたんですね。

で、いちばんキレてるという本作を見てみたのですが、どうなんでしょう?
空から変なモノが降ってくるというのが「空中庭園」との共通項。血だったり、ナイフだったり。

本編の話しですが、「いらないもの」を消す自分もいらないんじゃないかという強迫観念の様な千原ジュニア。ちょっと前風に言うと「僕、このままじゃ透明人間になっちゃうよ」な人の行動。
この映画での「いらないもの」はヤクザなんですが、普段生活しているとヤクザなんてあんまり見ないし、見ても見てないふりをするので、その人達も自分にとっては透明人間。透明人間達のいざこざ。で、結局一般人である私たちとは全く別の次元で展開。
ヤクザモノでもなかったし、なんか変な未来映画を観ている気分でした。
コレは何だろう?と思えば「時計じかけのオレンジ」の序盤ですね。
やりたかったことはなんとなく分かるんですけど、どうも薄い。物語が進展する毎に薄くなる。だんだんつまらなくなる。
最初から飛ばし気味で、この後はどうなっちゃうんだろうという感覚だったのですが、最終的にはどうも尻切れ。

この作品で日本映画監督協会新人賞を受賞しているそうですが、ホントですか?
サイト見たらこないだ見た「ある朝スウプは」の高橋泉監督が2005年に受賞していて二度びっくり。
確かに、新人賞なんですね。
文芸で言えば群像新人賞みたいな感じでしょうか。
ちなみに、私の大好きな岩井俊二監督も「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」で受賞しています。こちらは異例のテレビドラマでの受賞。これは最高です。文句なしです。

本作ですがこの後、どうなるのか、どうしたかったんでしょうか。多分、構想としてはもっと具体的な突っ放すエンディングがあったはずです。
次回作に期待したいところですが、しばらくは映画撮れないんだろうな、この人。もったいない。

映画【愛についてのキンゼイ・レポート】

2006-12-12 21:56:33 | 映画
愛についてのキンゼイ・レポート

2004
Bill Condon(ビル・コンドン)

映画大会の続きです。半分寝てしまったので観直しました。

割と話題になったセックスレポートを書いたキンゼイ博士のドキュメントのような映画です。
この映画の原題は「Kinsey」。で、邦題が「愛についてのキンゼイ・レポート」。
この辺の変なぼかし方が和風です。何でも綺麗にまとめてしまおうというバカな配給。
多分、この映画では「愛」と「性」は全く別物。それを混同するから学者が成り立たない、というお話だったと思うのですが。

確かに、ラストシーンはちょっと綺麗にまとめてみましょうという感があるのですが、それでもバッシングされたことに別に悪びれるでもないキンゼイ博士とそれについて行く妻のシーンでおしまい。ハリウッドっぽい。
この映画から変に感化されてしまう人はあまりいないと思いますが、やっぱりセックス関連は秘め事であるのが好ましいかと。
科学者というのは独善的になりがちです。気持ち、分からんでもないですが。

私も多分に漏れず飲み屋では散々エロ話で盛り上がることが多々あります。しかし、いい歳になり、如何に気の置けない仲であろうとも不可侵条約が暗に取り交わされているかのような暗黙のルールの様なモノが出来上がっています。空気、と言っても良いかも知れません。
エロ話、20代前半まで外環を誇張して話すことが多々ありますが、歳を経ることにディテール重視になってきています。「今日のイケニエは?」で根掘り葉掘り聞いたり喋ったりもしません。
ディテールとは言っても個人名や行動を事細かに話すのではなく、ソムリエのような比喩でお互いに分かるであろう暗号の様なモノで伝える。ある意味、ここでのボキャブラリーが面白さを決めると言っても過言ではありません。
私生活をさらけ出す事なく、まろやかな、広がっては消えていくエロ話で繋がれていく愛すべきサークル。
オトナのたしなみではないでしょうか。

映画【クルックリン】

2006-12-11 20:45:34 | 映画
クルックリン
1994
スパイク・リー


第二回映画大会の為にS氏が買ってきてくれた、スパイク・リー監督のあまり見ない作品です。
廃盤らしいので、ファンの方は今のうちですよ。

ブルックリンに住む貧しいのかもしれないある家庭を追ったちょっとハードコアなホームドラマ。
一つの出来事に執着しないで、淡々と生活を追う。でも、よく考えてみるともの凄くハードな毎日。今日の日本では考えられない。
制作が1994年らしいのですが、ホントにそうなんでしょうか。映像のクリアーさからは分からなくもないのですが、時代考証が正確すぎる。ような気がする。自伝なのかしら。

ストーリーがあまりにも説明的ではないため、黒人社会をよく知らない身としては理解に苦しむシーンがいくつかありました。この辺はスパイク・リー監督ならではなのでしょうか。白人がほとどんど出てきません。

それにしてもサントラがまさに70年代のヒットパレード。殆ど知ってる。だから、それだけでも楽しい。
70年代の黒人音楽好きにはそれだけで楽しめる映画化も知れません。
カーティスのスーパーフライをBGMにシンナーを吸ってるガキ。"Super Fly"の歌詞は"オレはイカしたヤクの売人~"って感じだったと思うのですが、それが映像ではクソガキで吸ってるのがシンナーって。
多分、他にもそういうシーンがあったんでしょうが、分からなかった。悔しいですね。