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まほろ駅前多田便利軒
2006
三浦 しをん


直木賞受賞、と言うことでハズシは無しだろうと。

面白かったですよ。普通すぎてちょっと物足りないかもしれない。
ちゃんとしたエンターテイメント。カタルシスもあるし。
投げっぱなしで全てが謎の内に終わるなんてこともないし。
サーッと気楽に読めます。
説教臭くもない。
主人公が「便利屋」ってあたりが既にイタイ感じがあるのですが、それは下手に斜に構えず読むのが正解だった様です。
挿絵があまりにもそれっぽすぎるのがいただけませんが。

なんかテレビドラマっぽい。
ちゃんと12話で過不足無く組み立てられそうだし。まさか、それを狙ってるんじゃ・・・。

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八月の路上に捨てる
2006
伊藤たかみ


一定の期間でやってくる「なんか最近の面白いの読みたいなぁ」でまとめて買ってきた中の一冊。
芥川賞受賞作。なのに読みやすい。
話のテーマはそれほど重いものでもなく、その些細かも知れないことに対しての心の機微の振れ幅が絶妙だったと思います。言い切り方が好み。
そして、この本全体で好きなのは、爽やかじゃない暑苦しい夏の感じ。コレ。

もう、すっかり秋めいてきましたね。

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疾走

2005
SABU


重い。
しかし、良い作品です。

SUBU監督の作品はとても好きで、多分全部見ていると思います。
殆どの映画が、わりとグダグダした主人公にいきなり外部からのスイッチが入って突っ走り出す。
とにかく、どの映画にも走りまくるシーンがある。
本作にも、もちろんある。
しかし、なんか今までとは趣が違う。
今までは方向を見失ってでも前に、前に、という感じだったと思うのですが、本作の走りは何かを常に見ている。見えないものを見て走っている。走りまくる。全ての人物に悲劇が重なりすぎて、もう逃げ場ナシ。暴走気味。
今までの作風は何だのか?と思わせるほどのテーマ。映像に隙が無い。編集にも隙がない。

冒頭からバンバン死についての問答が繰り広げられ「まさかSUBUが説教映画か?」と思っていたのですが、やはりそうではない。
聖書を所々で引用しているのですが、それは原作共々日本人。ゴリ押しではありません。
岩井俊二監督のリリイ・シュシュのすべて
と似たモチーフが、さらに過激な形で描かれている。多分、方法として意識していると思われるシーンがちらほら。かといって、パクッているわけでもなく、必要な演出。是枝監督の誰も知らないも同じく。
"電車で柔らかい光に包まれるボロボロなふたり"というのはフォーマット化されてしまいそうでちょっと怖い。私もやってしまいそうです。多分、どこかでやります。

原作の重松清著の「疾走」は未読。
是非読んでみたいと思います。
原作が良くても映画化するとまるでダメなんてのが殆どですが、映画がこれだけ良ければ原作はどれほどなのか。
読んだ方、いらっしゃいます?

説教クサイ、とか言わないで。
ホントに思ってなければここまで真面目にできません。そのくらい無駄が無い。
見る人によっては嫌いでしょう。それは否めない。
下手に恋人と見ない方が良いかもしれません。

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サタデー・ナイト・ライブ ベスト・オブ エディー・マーフィー
1980頃
エディ・マーフィー


B級映画大会の続き。
これが映画と言うかどうかは別として。更に、B級どころか超A級のエンターテイメント。

いやぁ、面白い。
殆どの場合、US映画のギャグなんて分からないんですが、コレは別。ある程度当時のバックボーンを知らないと面白くないのが辛いところですが、知らなくても何となく面白い。
一番ツボに入ったのはこの件。

あるインタビュー番組。
自分が5人目のビートルズだと言い張って証拠写真を見せる。
そこにはポールの隣にサックスを持ったエディ。
合成ではないか?という反論に対して、自分が参加していたという音源を聴かせる。
"I wanna hold your hand"曲にかぶせてサックスと黒人ノリの"メ~ン"や"ィヤ!"がちりばめられている。


分かりやすく、面白い。で、決してビートルズをバカにしていない。全て本人の責任でやっている。
他にもやたら上手いスティーヴィー・ワンダーのモノマネやら黒人の視点から見た白人社会の風刺やら、報道番組への風刺やら引き出しが広いこと。
しかも、客前でライブでやっているから殆どノーカット。隙がない。凄い。


日本のテレビ芸人たちって、人の悪口と揚げ足取りばかり。
編集ありきのバラエティ番組に慣らされて自分を面白いなんて勘違いしている輩ばっか。
ディレクター自身が編集する気のない正月特番で馬脚見せちゃって、はい、サヨウナラ。
一時のお笑いブームのおかげか、テレビが嫌いになりました。引っ越しして以来テレビを観ていません。たまに定食屋なんかで付いているテレビに嫌悪感を覚えます。
もの凄い少数意見かも知れませんが、人に嫌な想いをさせて何が芸人か。
上手く踊れないのならやめてしまえ。

チャップリンの何かの映画を中学生くらいの時に担任の先生に見せて貰った時のこと。
その映画はチャップリンが犬にからまれてどたばたを繰り広げるというモノだったのですが、その先生曰く「チャップリンはこの偶然性が気に入らなくて自分ではこの作品はボツにした」とのこと。その時は十分面白かったんですが。
たまに出てしまった面白い偶然を自分の手柄にしない。自分の考えたこと以外自分のモノとしない姿勢に驚き、不思議にも思えました。

浪花節じゃないけれども、そのためにあらゆることを犠牲にしまくる人がいても良いと思うんですがね。

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死霊の盆踊り
1965
A. C. Stephen


友人から「今度うちでB級映画大会やるからなんか見繕って」というオファーがあり、恵比寿ツタヤへ。
タイムリーにもレジ前の特集コーナーでカルトムービー特集。かねてより噂は聞いてた本作と後何本かを借りてきました。他の作品についてはいずれ。

正直、度肝を抜かれました。且つ、魂も抜かれました。
B級と言ってもいろいろあります。コレに比べてしまえば悪魔の毒々モンスターあたりは王道映画の部類に入ってしまうでしょう。

ここまでやってくれると、かえって清々しい。若いうちに観てしまっていたら、その後の映画観がちょっと違うモノになっていたかもしれません。
先日ボロクソに批判したギミー・ヘブンあたりはこの辺のセンスがゼロだったんでしょうね。

あなたの周りでこの映画について触れる人がいたとしたら、多分そこに悪意はありません。
観た後は、あなたもきっとその一人になるはずです。

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きっとこれは誰かの陰謀だと思う。
もしくは「あの頃」をどこかで一緒に過ごした彼らが、遂に最前線に出てきたというノロシだと思う。

Flipper's Guitarのアルバムが再発され、小山田が5年ぶりにシングルを出し、犬は吠えるが文庫化され再発され、Venus Peterが再結成(1年限定)。

このままだと、Primal ScreamのCome Togetherが再リミックスされて、Stone Rosesが再結成して、ブライアン・ウィルソンがやる気を出しちゃったりして、Aztec Cameraの「High and Hard Rain」がデジタルリマスタリングされちゃったりして、小沢健二がふらっとBlue Noteのコンピに参加しちゃったりするのではないでしょうか。

Venus Peterなんてホントに10年くらい名前も思い出さなかったのに、ふらっと入ったHMVの特集コーナーで見かけ「何!!!」となり、一緒にいた後輩の手前「あぁ、昔はこういうの好きでさ・・・」なんて渋くキメてみたものの、帰りの東横線で猛烈に気になり、iPodで何故かFlipper'sのGroove Tubeを猛リピート。そのまま寝付き、起きたら元町・中華街。

結局本日横浜HMVにてVenus Peterのベスト盤とニューアルバムを買ってしまった次第です。
カッコイイですね。
これをカッコイイと言う自分は果たしてカッコイイのか?とてつもなくダサいのか?
「今更渋谷系?ププッ」なんて思ってるヤツ、出てこい。全員正座15時間で脳を洗い直してやる。

「ヤードバーズってさ・・・」なんて講釈をたれる50過ぎの先輩方の気持ちが垣間見えた30の夜。

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犬は吠える、がキャラバンは進む  -アラブの諺


恵比寿の有隣堂でフラフラしているとレジ前の平積みコーナーがカポーティコーナーになっていました。今月末から公開される映画【カポーティ】のためのコーナーです。本作は「冷血」のドキュメンタリーだそうですので、興味のある方は是非。多分私も見に行きます。

それよりも私にとって重要なのはこの短編集が再発されたこと。
高校生の頃、小沢健二の"犬は吠えるがキャラバンは進む"を聴いて、聴いて、聴いて。ライナーノーツを読んで、インタビューや関連記事を読みあさりました。
どうやら、このカポーティの短編集からアルバムのタイトルをとったらしいとのこと。

当時住んでいた街の一番大きな書店に行き「本がどうしても欲しいのだが取り寄せてもらえないだろうか」と言ってみても「そんな本ありません」という返答。横浜に出てきてからも何件かの本屋さんにあたってみたものの「ありません」と。
当時は今のようにあらかたのことはインターネットで分かる時代ではありませんでした。まさかシリーズのタイトルだったとは。
あれから10年。
本のタイトルは「詩神の声聞こゆ」と「ローカル・カラー/観察記録」です。

やっとこの本が手元にあります。
まだ未読ですが、多分、読んでみても殆ど理解できないのでしょうが、この本をやっと手元に置くことができました。
この2~3ヶ月であまりに多くのことが起こります。

あのとき強力に、盲目的に好きだったことを思い出せと言うことなのか。
それは懐古なのか、それが自我なのか、進むべきベクトルなのか。
多分、何であったとしてもそれに従うべきなんだろうな。

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新しくなった横浜のヨドバシカメラで小一時間スピーカーの試聴大会。
先日、スピーカースタンドを買い、ケーブルを変えたばかりで、今使っているTechnicsのスピーカーの性能をフルに発揮できたという筆も乾かぬうちからそんなことやっています。

ほとんど欲しいモノは決まっていて、ダメ押しの為に言ったのですが、押されたのはこちら。

JBL 4312Mというコンパクトなスピーカーを買う気満々で向かい、念のため試聴させていただこうと。
しかし、何故か横浜ヨドバシカメラはJBLの品揃えがやたら良く、ざっと観ただけでもラインナップの殆どがあるのではと思うほど。他多数のスピーカーとは隔離され、JBLだけが独立したユニットで試聴システムを組まれていました。
で、4312M4312D43184305H4304Hあたりを入念に試聴させていただきました。

概ねの感想として一番好感が持てたのは4312D。やはりベストセラーだけあって、JBLのスピーカーを持っていない私にも「これがJBLサウンドか・・・」と思わせる音色。もの凄いクセのあるスピーカーなんですね。いわゆるモニタースピーカーらしいのですが、これがフラットだとは思えません。田舎丸出しという音ですね。バーボン作ってる国の音という感じがします。先日、私のバーボン観を覆すようなバーボンをある席で飲ませていただいたのですが、その味がこの音。クセがあるだけじゃなくて、旨い。
多分、JBL全般がこうなんでしょう。空気を包み込むような音です。音が出ているというのではなく、その空間にいるという感じ。
4318は良いに決まってると思って聞いたらやっぱり良かった。JBLサウンドに加え、解像度が高いというか、楽器一つ一つの位置がくっきり分かるくらいの立体感。コレに比べてしまうと4312Dは部屋の中が霧がかった感覚です。でも、その感覚が嫌いじゃない。
4305Hは音が早いというかレスポンスが良いというか、現代的なハウスとかテクノとか聞く分には良いのでしょうが、しっとりとしたジャズやボーカルモノなんかは不得手の様な感じがします。あまりにもくっきりした音で長時間聴くと疲れてしまいそう。若い人にはこちらがオススメなのではないでしょうか。なんて書くと自分が随分歳をとった気がしますが、実際に家で聞くモノはロックでもしっとりとしたモノばかり。昨日からずっとジョン・レノンとジミー・スミスです。
ルックスで食わず嫌いをしていたものの、意外と嫌いじゃなかったのが4304H。ウーファーが一つのスピーカーに2つ付いているちょっとお得な感じのスピーカーです。音の広がりがより広い。包まれるような感じ。でも、その分ステレオ感がちょっと犠牲になっています。無茶苦茶広い部屋に住んでいたら5.1chでこのスピーカーでもアリかなと。
そして、一番驚いたのが4312M。コンパクトスピーカーとは思えない馬力。低音がやや弱いのはサイズの制約なのでどうしようもないとしても、中高音域はコンパクトとは思えない。このスピーカーならちゃんとスタンドに乗せて耳の位置で聞けば間違いないと思い、ちょっと高い位置に置かれていた4312Mを耳の高さで聞くためにその辺にあった椅子の上に乗ってしばし試聴。好き。
ちょっと浮気してB&Wのスピーカーを聴いてみたんですが、おとなしすぎ。オクテ。というかつまらん。ちょっと無茶な音を鳴らすJBLが好きなようです。途中から交代したオーディオ専門の店員さんにも「あんたはJBLの音が好きなんだろ?」という態度を取られてしまった。プロにはかなわん。

村上春樹のコラムでJBLについて書いている言葉でとても良く覚えているのが「神経症的な音を出すモニタースピーカーを出す前の時代のJBLが愛おしい」というのを曖昧に覚えているのですが、それってどんな音なんでしょう。やっぱりオールドの音なのかしら。ジャズをモノラルで聴くほどのコアなファンではないのでやっぱりちょっとは現代的な音に吸い寄せられてしまいます。

なぜそこまでJBLに固執するのか。デザインが好きだから。そして、やっぱり音が好きだったから。

まだ買っていませんが、また嬉しい悩みが増えてしまった。こないだ買ったスピーカースタンドが無駄になってしまうかも知れない。それならそれで構わない。

JBL

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ギミー・ヘブン
2005
松浦徹


たいして良くも悪くもない映画についての感想は書かないのですが、コリャ酷い。
制作者には悪いんですが、どうしてこんなもの作っちゃったんでしょう。
よっぽどの宮崎あおい好きでなければ観ない方が良いです。

ダメな要素のパラダイス。
・主人公に無理矢理特異なキャラを持たす(超能力者チックな)
・そしてそのキャラが浅い(しかも説明されても「ふーん」程度の)
・説明クサイ台詞が浅い(ネットでサクッと調べた程度っぽい)
・ディテールへの力配分がいい加減(アリモノばっかりで作り込んだ形跡がない)
・安藤政信のイノセントな若者っぷりがイタイ(何したかったんでしょう)
・松田竜平が役不足。(今更サイコな役やらせてる)
・江口洋介がサングラスを頭に乗せてる。(何時代?)
・昔ヒットした要素をパクる(ナイト・ヘッドじゃないですか?)
・廃屋で撮りたがる(そこにいるつじつまが合ってない)
・ズームが多い(フレームが定まってない証拠ですね)
・車がアメ車(ハイエースだと思う)
・住宅街の空き地で発砲する(危ない!)
・安いCGを使う(無駄遣い)
・脚本が坂元裕二(セカチューの人)

爆笑できるならまだしも、あまりにも中途半端。企画のモノなのかも分からない。
こんなのに金を使うならもっと有能な若い監督に撮らせてあげてください。

You Tubeでゴレンジャイ観て寝ます。

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地球で最後のふたり
2003
ペンエーグ・ラッタナルアーン

以前のエントリでこの映画に触れていたのはもう2年も前のことでした。
で、観てみて初めて知ったんですが、タイの映画なんですね。主演が淺野さんというだけで。
序盤、どうも日本っぽくない景色ばかりが続くなと思えば、撮影は全てバンコク。ちょっと日本。ちょっと彩度の浅い、さらっとした押しつけがましくない映像。
リアリティなんてどうでも良いという設定。
タイトルが徐々にストーリーとなじんでいく感じ。

はっきり言ってしまえば、とても地味。そして全く説明的ではない。だからストーリーを追って観るというよりもなんとなくその画面の中の意味を考えながら観るという映画。嫌いじゃないです。むしろ好きです。

そのフレームの殆どがとてもきれい。アートフィルムを観ている様です。しかし、同じ淺野忠信主演で言うとクリストファー・ドイルの「孔雀」がストーリも何もあったモンじゃないアートフィルムだったのですが、そういう方向ではなく、さらっと美しいシーンがある。ちゃんとエンターテイメントの部分もある。
孔雀もアレはアレで好きなんですけど。ジャズ・ピアニスト板橋文夫のサントラも素晴らしい。廃盤みたいなんで、見かけたら買っておいた方がよいですよ。

何が起こるか期待しながら見なくても、ちゃんと物語は進んでいきます。タイの映画は殆ど観たこと無いと思っていますが、本作は邦画の気分で観てしまっても問題ない。三池監督がちょろっと出演しているあたりでご判断を。そのスジです。設定はモロ邦画路線。
糸井重里のほぼ日でも触れられていました。参考までに。

しかし、フレームの切り方が素晴らしい。きれいな映像を見たい方は是非。
バンコクに行ってみたくなりました。

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