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映画【タッチ】

2007-04-30 22:14:08 | 映画
タッチ
2005
犬童一心


万が一、ということもあるので観てみたんですが、観ている自分が恥ずかしくなってしまう程のクソ映画。
脚本も演出も演技も何もかもがあったもんじゃない。
犬童監督、どうして断らなかったんでしょう。

まぁ、長澤まさみプロモーションビデオだったと思ってあきらめます。
やるんだったら「ムム!南、~だぞ!」を連呼するくらいのモノにしていたら、その方面では楽しめたかもしれません。


「当たった原作+売れてるアイドルで1億ぐらいで映画化しろよ。本が売れてりゃトントンにはなる。5本やって1本当たれば良い方だ。」という誰かの悪意が見えてきます。
あんまりバカにするなよ。


ところで「タッチ 背番号のないエース」が20年前にアニメ映画化されていますが、まだ観られた。でも、アレもラストがなぁ・・・。
タッちゃんに優勝させちゃいかんよ。
あの映画はカッちゃんが決勝の日に事故で死んで、黒木さんがマウンドに立つまでは原作と同じ。
その後にタッちゃんがカッちゃんを装ってマウンドに立ち、新田(多分)を打ち取ってめでたしめでたし、というモノだったのですが、アレはイカン。イカンよ。
人間関係を描くのがメインであれば、孝太郎の「しまっていこう!」で終わるのがベストだったはず。勝たせたことで、かえってカタルシスが無くなってしまった。そこ、勝ち負け関係ないんだから。


実写の本作の場合は、どこをどう直したらとか言うレベルじゃないのでもういいです。

映画【ミリオンダラー・ベイビー】

2007-04-29 23:47:08 | 映画
ミリオンダラー・ベイビー
2004
Clint Eastwood (クリント・イーストウッド)


アカデミー賞キャンペーンというわけではありませんが本作。

クリント・イーストウッド監督というよりもポール・ハギスの脚本を観たという感じです。
良い映画です。

全く派手じゃない。じわじわもここまで来ると伝わっているのか自分が不安になります。
ボクシングのシーンも、多分狙っているんだと思いますが、はっきり言ってどうでも良いくらいあっさりしています。
ただ、淡々と中年女と爺さんを追う物語。

本日、打ち合わせ中に「スモーク」の話がちらっと出たんですが、自分内タイムリーさで本作に近い感覚だったと思います。
知ってるかもしれないけれども遠い世界で起こる些細で不思議な出来事を口承された感覚。

ある一部の人を除いてほとんどの人が知らない現実としてモチーフとして女ボクシングを選んだのかもしれません。
中途半端なリアリティを持たせないで、変な先入観を持たせないで、本筋をきっちりと描くために選んだモチーフ。
おかげで、ボクシングシーンは全然ドラマチックじゃありません。振り幅デカすぎ。
そのおかげで、二人の関係が恐ろしく浮き彫りになって、そこしか追いません。
台詞も少ないですが、かなり分かりやすく、含蓄のある言葉。

クリント・イーストウッドが年の割にいい男過ぎてそこがちょっと鼻につくのですが、それを補うヒラリー・スワンクの中途半端なルックス。
あらゆる構成が計算されてるなぁ、という邪推も入ってしまいますが、良いお話をきっちり見せるためにちゃんと作られた映画です。
変な仕掛けも無く、とても分かりやすい。
良い映画というのは、やっぱり小手先じゃないんですね。
下手にこねくり回された映画は照れ隠しなのか言い訳なのか分からないことがあります。
そういう意味でクリント・イーストウッドはやっぱり男前ですね。

映画【EUREKA(ユリイカ)】

2007-04-26 23:23:26 | 映画
EUREKA ユリイカ
2000
青山真治


すみません、本当にただの食わず嫌いでした。
とても良い映画です。
何故今まで観ていなかったのか悔やまれます。

「感動の人間ドラマ」なんて書かれていると大げさなモノかと思われがちですが、全くそうではありません。
じわじわと伝わる人々の話。
もちろん、モチーフはバスジャックとそれによって心を歪まされてしまった人々という非現実なのですが、それはモチーフとしてだけ。
テーマはやはり「人間」です。
尺がおしなべて長い青山監督ですが、その尺は必要な様です。
分かりました。

本作は217分というかなりの長尺ですが、それを本当に感じさせません。嘘じゃありません。
多分、シナリオは100ページあるんか?という台詞の少なさですが、この映像は凄いです。
モノクロ(セピア側)で綴られるストーリー。ストーリーというか、人生。
バタバタと忙しい映画になれてしまうと、考える前に答えを次のシーンで見せられてしまったりして、まったく考えることなく終わってしまうことがあります。
しかし、本作では余白というかのりしろというか、もちろんその一件無駄に見えるカットにも意味があるんですが、多分、そのカットの持つ一番重要な意味は「そんなに物事を白か黒かで考えられんよ」と言うモノではないでしょうか。だから考える時間をわざと残す。
そこを表現したかったからこその表現ですね。
映像も素晴らしい。田村正毅さんという方が回していたそうです。凄いキマったアングルの連続。久々にここまで好きな映像が見られました。上手い、というか染みこむ映像。


ところで、こういった人を描くことで何かを表現しようとする映画についてよく揉めることに「リアリティ」というのがあります。
それについて先日とある監督とお話ししていたときにかなりの部分で合点がいきました。
「リアリティを追求した物語は所謂現実に沿った物語にならない。もちろん、シンプルになんてならない」
人を描くためには、その人の心が動く出来事が起こらなければいけない。
「日常の淡々とした中で描かれる」映画であっても、その「淡々」の中に必ず日常からかけ離れたことが起こり、それに対する心の動きを人間に代弁させて表現します。
やみくもに「リアリティ!リアリティ!」とか言ってるバカは何も起こらないけれども押しつけがましい説明くさいクソつまらない映画を撮ってしまうわけです。
当然、身の回りにいる人たちに何も怒らないわけが無く、何かが起こることによるその人の言動がその人な訳です。
何もおこらなかったら、それこそが人間じゃない幻影ですね。

映画【不思議惑星キン・ザ・ザ】

2007-04-25 23:40:07 | 映画
不思議惑星キン・ザ・ザ
1986
Georgi Daneliya (ゲオルギー・ダネリヤ)


ソビエトSF映画です。
恵比寿ツタヤで何故か目に付き、借りてみたモノの、なかなか見ようという気が起きずハードディスクに入りっぱなしだった本作。
見てみたところ「なんじゃこりゃ」という映画。B級とか、そういうレベルじゃない。


アマゾンやらのレビューでは恐ろしいほどの高評価。
その理由、分からんでもない。
分からなくもないけれど、ダメな人は全くダメでしょう。
私は、なぜだか分からないけれども全編観られました。決して「面白かった!」訳ではありません。
恐ろしいほどのまったり感。SFの設定なのに安すぎる舞台。すぐヘコむブリキのセット。
多分、好意的に表現すると「キッチュ」ということになるのでしょう。

設定がオリジナルすぎて前半は理解不能。だんだん慣れてくるとその物語の世界観が見てくる。
これだけ架空の話を組み立てられる才能というのも凄いもんです。同時に、制作の度胸も凄いもんです。
一歩間違えたら・・・、と言う以前に8歩ぐらい間違って制作されているので観る側が歩み寄るしか有りません。
最後まで意味も分からず見続けてしまった。


こういうのが好きな人もいるんですね。
勉強になりました。
こういう映画作ってる暇があるから国がつぶれちゃうんですね。
しかし、たまにはこういう映画も良いもんです。
続けては観たくないですけど。

映画【蛇イチゴ】

2007-04-24 23:30:21 | 映画
蛇イチゴ
2002
西川美和


驚愕の名作「ゆれる」の西川監督の1作目。
感覚はやっぱり同じ感覚で、期待はハズされず。
映画好きが映画を撮りたくて作ったという感覚です。あんまり商売気が無い。

お話自体はあんまり深くない感じ。
是非モノの「コレ!」というテーマが有るようには思えず、いろんなリアルじゃない話をごたまぜにして家族の持っている本当の感情を浮き彫りにしてみたいといったところでしょうか。多分、有る意味自伝っぽい。
1作目っぽい自分にしかできなそうなことをやろうという意欲も感じるし、それによってところどころ空回りしているカット割りもアリ。
それらを含めてよりソフィスティケートされたのが「ゆれる」だったんですね。

作品として全然面白い。楽しめました。
あんまり残らないですけど。
西川監督は、プロットだけ読んだらつまらなそうだけれども、そのお話を楽しませるねじれた脚本家として優れた方なんだと思います。

映画【やわらかい生活】

2007-04-23 23:47:44 | 映画
やわらかい生活
2006
廣木隆一


なんだか分からないけれども、じわじわ来る滋養のある映画です。
本当にコンパクトな一人の人と、その人を取り囲む小さな人間関係のお話。
起こる出来事は超些細な出来事ばかり。
でも、なぜかじわじわ来る。
好きな映画です。
ザ・邦画と言った感じもあり。

今のところ見ている寺島しのぶ主演映画はハズレ無しです。
凄い女優さんですね。
失礼な言い方ですが、取り立てて綺麗なわけでもなく、スタイルが良いわけでもないけれども映画になると物語になる方です。
俳優陣もやたら豪華なキャストです。

暇があったら見てみても良いかもしれません。
好みが激しく分かれそうですが、私は好きです。
テーマはちょっと重いですが、描き方が淡々とじっくり。この映画、100分程度だと凄く陳腐になってしまうんでしょう。
余計と思われるカットにもその時間に意味があります。ということに見終わって気づきました。
その時間が意外なほど早く流れます。
不思議な映画です。

映画【バベル】

2007-04-22 23:47:47 | 映画
バベル
2007
Alejandro Gonzalez Inarritu (アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ)



六本木はミッドタウンのGAGA新試写室にて。
椅子も良いわ、音も良いわ。スクリーンが小さいですが、座席と距離が無いのでスケール感としてはあまり劇場と変わらず、です。
平日の昼間から仕事という名目で堂々と映画を観られるなんて。



あんまり説明はいらないかと思いますが、「21g」のイニャリトゥ監督の最新作です。

ストーリーとしては「21g」に非情に近くて、それをスケールアップして、「21g」で出来なかったことをやってしまったという感じ。
お話ももの凄く良くできていています。しかし、出来すぎてしまっている感じはありません。

無関係な人たちの運命が交差するのですが、それも伏線を張りまくって最後に全てが繋がるという伏線のための映画ではなく、本当にたまたまその人たちの人生を生きていたらどこかで繋がっていましたという程度の描き方です。
なので、あまり血眼で伏線探しをしないで観るのがよろしいかと。
「クラッシュ」とテーマが近いのですが、あちらほど丁寧に順序立てて説明をしてくれる映画ではありません。ある程度投げっぱなしな余白があります。
途上人物達が各々意志を持って動いている。
人の思念みたいなものをあまり表立たせず、でも臭わすという描き方にもの凄く長けた監督さんです。感情の渦。邦画のテイストに近い。

ところで、パブリシティでは菊池倫子と役所広司がもの凄くフィーチャーされていますが、裏切ることなく結構ちゃんと登場しています。菊池さんの演技ははやり迫るモノがあります。ハマってます。聾唖(ろうあ)の女子高生役なのですが、ここまで入り込めるモノかと。
先日観た「図鑑に載ってない虫」でも登場していますが、あちらは使い方間違ってたんじゃないでしょうか。せっかくの持ち味が生きていなかったかもしれません。

このお話に「バベル」というタイトルを付けたセンスが素晴らしい。
神が人に与えた罰の象徴である言葉の離散。それが生む壁。しかし、その中で愛し愛されてされて生きる人々。
良い映画です。
見た人が解釈を付けられる映画。
この映画がアカデミー賞作品賞を獲っていたら、アカデミー賞が好きになっていたかもしれません。

ちなみに、私はもう少し大雑把に細かな出来事を追った「21g」の方が好きです。
本作はちょっとだけ「狙った」感じがありますね。
カンヌのベスト・ディレクター賞にうなずける感じ。


ところで、菊池倫子さんが演じているのが聾唖の役でありアカデミー賞候補という話題性から、日本の聾唖の方からの「バベルの日本語音声にも字幕を!」という運動が起きていたようです。このいきさつを知らずにいたのは恥ずかしい限り。
制作サイドも訴えた側も双方納得のうちに日本版プリントは全ての言葉に字幕が入ります。これ、試写後の決定なので相当な費用がかかりますが決定だそうです。いろんな打算が入っているかとも思うのですが、であったとしても正解だと思います。
ほとんどの邦画のDVDにも日本語字幕が入っていないというのが現状とのこと。
観たい方にはやっぱり観て欲しいというのが作った側の気持ち。でも、実際はそこまで気が回らないのが現状。字幕を入れるより、パブリシティを稼ぐ方が大事となってしまっています。
制作も心を入れ替え、観る側をもっと考えねばなりません。

映画【カナリヤ】

2007-04-20 00:38:58 | 映画
カナリヤ
2004
塩田明彦



良い映画です。
説教クサイ台詞は結構出てきますが、それを谷村美月に喋らせる。芝居も演出も上手いです。
凄いですね、この子。憑依しているかのように、そのもの本人に見えてきます。
先日ボロクソに書いた行定の「ユビサキから世界を」でも主演しています。確かに光っていましたが、あの映画ではこの子の魅力が出きっていません。
西島秀俊にも重要なところを語らせていますが、この人のぼそぼそ喋りにも不思議な説得力があります。

映像が良い山崎裕氏が撮影しています。
「誰も知らない」の撮影もされています。好きなはずです。

某カルト教団の事件と、それに巻き込まれた子供と、その子供になぜか真正面から向き合う子供と勝手な大人の話です。
こう書くと、モチーフは違えど「誰も知らない」とも通じるテーマです。
幼稚な大人に振り回されてしまった不幸な子供のお話。

ここで言う幼稚というのは、すぐに投げ出して逃げ出す、どこか隔離された世界に逃げ込む人たちのことです。
最近のニュースなんかみていると、幼稚な人多いですね。子供が幼稚なのは分かりますが、どうなってるんでしょうか。

映画【クラッシュ】

2007-04-18 23:42:09 | 映画
クラッシュ
2005
Paul Haggis (ポール・ハギス)


こりゃ良い映画だ。

もの凄い重い映画かと思ってみたモノの、確かに重いけれども、その重さというのは人が誰でも持っている重さなんですね。
「21g」とチョットに通っているかもしれませんが、あちらは完全に死がテーマとなっています。アレは重い、けれども良い作品です。
本作は死を含めた生活とか暮らしとか。
やはりスーパー脚本で隙が無い。
本作のポール・ハギス監督の「ミリオンダラー・ベイビー」まだ観てません。観てみます。


それにしても、劇中で父親がまだ5つくらいの小さな子供が銃におびえてベッドの下でしか練られないというシーンがあるのですが、そんな暮らしというのはどういう暮らしなのでしょうか。
平和ボケした私にはとてもじゃないけれども想像が出来ません。
夜の宮下公園でさえちょっとビビリながら歩いてます。
その子供と接する父親の言葉にグッと来てしまいました。というかあのキャラにやられました。

どっかのエントリでも書いたかもしれませんが、こういう人の生活を垣間見てしまう感覚、窓の明かりの数だけ人の生活があって、すれ違う人全てにとって大事な誰かがいるということを気にしてしまうようになると、明日はちょっと優しくしようと思ってしまいますね。
綺麗事ですが、たまには考えてみるのも悪くない。
うん、悪くない。

映画【青 chong】

2007-04-17 23:05:43 | 映画
青 chong
1998
李相日


「フラガール」の李監督の学生時代の卒業制作です。
インディペンデント(?)ではありますが普通に観られます。尺も50分程度と短めですし。

井筒監督の「パッチギ」
に近いお話ですね。「井筒監督、パクってんじゃないの?」と言うくらい同じ設定。
もちろん青春モノです。

ただ、こちらは最後まで朝鮮人差別がかなりの部分を占めている。恋愛とかはちょっと臭わす程度。
こちらの経歴を見る限り、自伝なんじゃないかとも思えます。
テーマで毛嫌いする人もいるんですが、もったいないのでそこは置いといて観ても良いかもしれません。
サブストーリーはいろいろ入れ込んでないので素直に本筋だけを楽しめます。
これを当時プロではない監督が脚本を起こしているというのが驚き。全然観られます。
山下監督よりもちょっと上ですが、同年代。
良い監督です。脚本のセンスも凄く良い。
早く次のが観たいです。