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映画【岩井俊二初期作品集 initial #1】

2006-07-20 01:48:11 | 映画
岩井俊二初期作品集 initial #1
1991
岩井俊二


多分、この人がいなかったら今の自分はいないであろう、2番目に影響を受けている方の初期作品集が出ました。
このDVDが出るということを聞いたときに「もしかしたら岩井俊二は死ぬのか?」とも思ったのですが、多分大丈夫なんだと思います。

ところで、本DVDに収録されている2本。痛々しいです。深夜系。テレビって懐深いなぁと思った次第です。
勇気づけられました。「あの岩井俊二にもこんな時代もあったんだな」と。当時28才。
以前観ていたテレビ用作品では「ルナティック・ラヴ」くらいしか観ていなかったのですが、あれは大オチ系。面白かったです。ありゃ凄い。またゆくゆく観ますが。

岩井俊二といえば、ソフトフォーカスでもないのに淡い色調と煙まみれな映像。ホントに当初から一貫しています。自分の撮りたい画が完全に分かった上で撮ってる。でも初期ではカメラワークがまだカメラマン任せなところが見える。
その後のテレビドラマ界に影響を与えすぎたF(フィルム)効果は最初から相当なこだわりがあったんでしょうか。
ちなみに、私のAfterEffectsを駆使してのオリジナルF効果には自信があります。何でもない素の映像を「なんか、良い味」にしてみたい方はお試しを。でも、やっぱりフィルムが良いなぁ。70mmで撮ってみたいなぁ。

話を戻しますが、ストーリーと明らかにマッチしてないサントラもこだわりの産物なんでしょうか。
この辺の違和感を上手く使ってるのは分かるのですが、やはり初期の最高傑作は「打ち上げ花火、横から見るか?下から見るか?」に間違いないと思います。ストーリーの緻密さ、そのストーリーにマッチした画、ハズしているわけがないサントラ、カメラマンの入魂っぷり、役者の入りっぷり。
そう考えると「テレビでこれやっちゃうの?」というエッジが効きまくりの「打ち上げ花火~」は最高傑作かも知れません。未だに月に1回は観ます。毎回なずなとノリミチのプールでのシーンは涙で画面が見えません。

映画【蘇える金狼】

2006-07-20 01:19:28 | 映画
蘇える金狼
1979
村川透


先日観た殺人遊戯があまりにも無感動で感想も書かなかったので本作もあんまり期待しないで観たところ、意外とイケル。
ストーリー自体は5段オチみたいで、ひとまず劇映画として2時間消費するための延命治療的な脚本だったのですが、所々で優作節(本人比)が冴えてます。
終盤のキ○ガイばりの部屋をサルのように飛び回るシーンはなんか下手なアングラ芝居を見せられているようで辟易でしたが。
バブル前夜な社会背景で完全に浮いている優作節が良い感じです。

しかし、同じ村川監督なら「あぶない刑事」のファーストシリーズくらいのコンパクさに1カットだけキメがあるというスタイルの方がお気に入りです。

たまに、村川監督と村西監督を混同している方がいるようです。どちらも偉大な監督ですが、混同すると人格が疑われるので知った上でお話ください。

余談ですが、"蘇える"の送りがな間違ってませんか?多分、"蘇る"だとおもうのですが。この"え"の意味を知っている方がいたら教えてください。

映画【東京マリーゴールド】

2006-07-12 00:13:31 | 映画
東京マリーゴールド
2001
市川準


先日見た「トニー滝谷」があまりにも好きだったため、同じ市川監督のずっと見ないで温めてしまっていた本作を見ることにしました。

拍子抜けでした。
あまりに期待しすぎたと言うのがあるかも知れません。
理由の一つに田中麗奈が特に好きではないし、劇中でもなんか好きになれない。キャラが固まる前に撮影入っちゃった感じです。途中でおかしな程感情を爆発させようとするのですが、爆発すらしてない。「がんばていきまっしょい」と「はつ恋」は好きだったのに。素っぽすぎるのがダメなのかもしれません。悪く言えばいつも演技が一緒。よく言えば安定してる。

何でも本作は「ほんだし30周年記念作品」とのこと。といことで、もちろん樹木希林も田中麗奈の母親役で登場。随所に料理のシーン。そしてあのCMの「ほんだし顔」がちりばめられています。あのCMの本編がこちらということであれば、なおさら納得がいかない。
なんか、無理矢理付け足した本なのか。

林真理子が原作とのことで今まで見ていなかったということを思い出しました。やっぱり合わない。何が合わないのか分からないけれども、肌に合わないモノは合わない。ストーリーが安い。テレビの連ドラくらにしておけば良かったのに。良い映像があるのにもったいない。
ポスターのビジュアルも本編のイメージとは違う。
貴様は何様かという感想ですが、そう思ったんだからしょうがない。

良くも悪くも、原作を生かすのが市川監督ということなのでしょうか。

映画【コーヒー・アンド・シガレッツ (Coffee and Cigarettes)】

2006-07-05 02:06:45 | 映画
コーヒー・アンド・シガレッツ (Coffee and Cigarettes)
2005
Jim Jarmusch


ユルイお話な割になにやら映像のエッジがきつい。どんな意図か分かりませんが。モノクロのせいも有るかもしれませんが、それにしてもうちの14インチのテレビではなおさらにエッジがきつい。でも、暖かい。

オムニバス11本のカラーが全て揃ってるってのは凄いです。出てる役者(?)もキャラがやたらと強いのに、一本になっている。
多分、先日見た「いぬのえいが」はこの路線に行きたかったのかもしれません。
一人の監督がオムニバスを撮るというのはその本数分のビッグ・アイデアが無ければいけないというのを覆してますね。それで映画として成立させちゃうんだからなおさら凄い。

というか、凄いばっかりでとりとめがないんですが、好きです、この作品。
ダルイ。酒でも飲みながらだらだらと見ては如何でしょうか。
時折入る「クスッ」っていうポイントが良いです。

映画は豪華じゃいけないとか、感情移入できるファンタスティックなカッコイイ兄ちゃんとか出てないとヤダ、と言う人は絶対に見ない方が良いです。
レコードで聴く音楽に慈しみを覚える方向け。

暫く日本映画ばかりを観ていたんですが、それに対する良いアンチテーゼかもしれません。
いくら頑張ったってそれをみんなが好きじゃないのは百も承知の助、でもこれって面白いと思うんだけど?という感覚のお話です。
歩み寄ってこないけど、ちょっとそちら側を見れば好きなモノがちらほらしている。

映画【ラブドガン】

2006-07-03 03:34:13 | 映画
ラブドガン
2004
渡辺謙作


終始言えることは永瀬正敏の存在がデカすぎ。そして、宮崎あおいがかわいすぎる。
それで、岸辺一徳がハマリすぎ。「せんぱ~い」の野村ひろのぶが良い役者だったと再認識。

キャストが揃わなければ、どうなってしまったのかが恐ろしいほどにキャストの力。監督何やってるんだよ。
カッコいい目のカット割りは全然良いんですが、のりしろゼロのシーン割。
静止したスクリーンの中で起こる出来事を追うこちらの身に少しはなってください。

実験的なカット割りはPVなら好きなんですが、連続で見せられるとどうなんでしょうか。
あんまりディテールが格好良くなかった。

それにしても、宮崎あおいのむくれっ面がかわいい。その筋の方は必見です。

映画【アンテナ】

2006-07-01 03:59:20 | 映画
アンテナ
2003
熊切和嘉


好きとか嫌いとか関係なく引き込まれました。
この力源が主演の加瀬亮さんなのか、熊切監督なのか、田口ランディなのか判別不能ですが、多分、原作も良かったんだろうし、熊切監督はなにがなんでもだし、加瀬さんは何の話なのか全く分からなくなるほどのワンシーンで燃焼しています。

なんだか、ちょっと映画が分かった気がします。
以前、自主制作の映像を撮って偉いプロデューサーさんに無理矢理送りつけて帰ってきたコメントが「あのとき、ああであってほしかった、と言う感覚が伝わってこない」ということを言われ、それをディテールがカタルシスなファンタジーを求めている事だと今までずっと勘違いしていました。

しかし、それはそう言うことではなくて「そうであって欲しかった」というのはそのプロセスのつながりこと。映画にとって結果はまず最初にありきで、そこに至るまでをどう構築するかということだったのですね。
「彼と彼女が出会って生まれた子供が大人になって世界を救う」なんてことは誰にでも書けるし、それに向かうただのなれ合いモノなんてどうでもいいです。
一つの結末が、誰かが死ぬというとんでもない悪いことであったとしてもそれに至るまでの過程をどう描くか。それをリアルにプロセスとして追うい、その物語を抽出するか。そこが映画だということがやっと分かりました。
起こってしまった出来事の積み重ねの結局がその結末に至るというとても簡単なことです。

どんな些細な結末でもいい。
この映画は決して些細な結末ではないですけど。
映画って凄いですね。
自分の馬鹿さ加減が分かりました。