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マンガ【ソラニン】

2007-10-04 23:36:33 | 本読み

「ソラニン」
2005
浅野いにお


ツタヤ渋谷の1コーナーに目がとまり、読んだところ割にずっぽりハマリ、浅野いにお著のマンガを片っ端から読んでみました。
テイストはどれも似た刹那な感じですが、その中でも「ソラニン」、これは名作です。
いつの間にか目から汗が。
マンガでの感涙は「預言者ピッピ」Banana Fish以来。
(※全然違う種類のお話です)


20代前半のモラトリアムモノなんですが、その描き方に悲壮感が無く、なんだかよく分からない爽やかさがあります。
もの凄く小さな世界での話で、世界で起こっている出来事と自分達との世界に大きな隔たり(無力さ)を感じつつも、誠実であろうとする、大げさではないけれども前向きに生きようとするオトナなのかガキなのか分からない彼らのお話です。

序盤はうんざりするほどのリアルな浮世離れ感ですが、2巻に入って急展開。
ビックリするほど素敵なお話です。
繰り返しますが、大げさではない、遅いミニマムな青春のお話。
多分、共感するのは未だモンモンとするオトナコドモ。私もその一人です。

「マンガなんて、所詮マンガじゃん」とか思っていると損です。
以前、どこかのエライ小説家のインタビューで「僕が絵を掛けたらマンガ描くに決まってるじゃん」という言葉がありました。QuickJapanあたりのサブカル雑誌だった故というのもあるでしょうが。
文字だけで描写できる小説家というのも、もちろん凄いです。想像する出来る余白がある分、間口が広いかもしれません。
けれども、その思い描いた風景ををブレ無く読者に伝えることが出来るのがマンガ。絵の好みでちょっと読者が狭くなってしまうかもしれません。けれども、取っつきやすい。
どちらも好きですが、最近はマンガブーム。

既に映画化決定とのこと。全2巻でサイズ的にも映画向き。
これは駄作にして欲しくないなぁ。


ところで、最近少年モノの漫画を読んでないからかもしれないけれども、マンガがマンガっぽさを失ってる気がします。
「キャプテン翼」の地平線が見えるようなどこまでも続くピッチとか、「スラムダンク」の山王戦ラスト1分で1巻になってしまうような時間の演出とかの「マンガならでは」感が無くなっているような。
この「ソラニン」もこの絵を切り貼りしたら絵コンテが出来てしまいそう。
作家さんが映像で育ってきたということなんでしょうかね。


とはいえ本作、少ないながらも最近目にした中では、イチオシです。