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ファニーゲーム(FUNNY GAMES)
1997
Michael Haneke (ミヒャエル・ハネケ)


※注意
本作は映画を見慣れている方以外は観ない方が良いと思います。
読解力の話ではなく、あまりに強烈な為にトラウマとなりかねません。
私もあまり長く引っ張りたくない鑑賞後感です。
数多ある映画のうちの一本としておかなければいけません。
年に数本しか観ない方は、そのうちの一本にしては絶対にいけません。



ということで以下、感想です。


凄い。コレは凄い。
切り口がこのほかの映画とは全く違います。
後味が悪すぎる。
救いがなさ過ぎる。

できれば、私のコメントなど読む前に観てください。
「ピアニスト」(2001カンヌ国際映画祭 グランプリ受賞)、「隠された記憶」(2006カンヌ国際映画祭 監督賞)のハネケ監督作品です。
嫌いな人は大嫌いな映画だと思うので、後味の悪い映画が嫌いな方は避けた方が良いでしょう。
カタルシスが無ければ映画じゃないという方は絶対に見ない方が良いです。


サスペンスっぽいあらすじです。
ある幸せな家族の別荘での休暇。見知らぬ訪問者がやってくる。一見礼儀正しい彼らは突然豹変し、明日の朝まで君たちが生き残っているか賭をしようとゲームを持ちかける。そして繰り広げられる惨劇。救いのない結末。



ハネケ監督独特の演出手法で、真似しても絶対に真似しきれない。特殊と言っても良いかもしれません。
本来、物語の中で起こっている出来事を視覚的にあんまり見せない。
反則と言っていい位の映像の中での不親切さ。しかし、それが観る者の感覚を揺さぶる揺さぶる。
感情描写やモノローグ、BGMすら殆ど無く、淡々と現実に起こっていることだけを描く。
見せないことで想像させまくる。
何も起こっていない映像の中でも、何かが起こっている気にさせる。
だから一瞬も気が抜けない。
映画に引きずり込まれる。
これで映画として成立しているのが恐ろしい。



本作を観た人が口をそろえて言うのが「不愉快」だという感想。
本作には人間が人間として生きていく上で必要な道徳とか善悪とか常識が一切無い。
また拠り所となるヒーローもいない。
まるで人間の形をした別の生命体の様な2人の殺人者と、弄ばれる家族。
それだけ。
もし、快楽殺人者に殺された人のドキュメントを、事件の最中に撮ることが可能であれば、こういうことになるんでしょう。

ここまで不愉快な映画はなかなかありません。
「セブン」なんて娯楽大作じゃん、と思うこと必死。というか比べるものじゃ無いです。比べる作品が無いです。

ハネケ監督の作品は、見終わって初めてその作品の意味が分かるというものです。
中盤からじわじわ、ということではなく、突然の終劇の瞬間に「あ!」と思う。私が鈍いだけですが。
「ユージュアル・サスペクツ」のラストシーンのフラッシュバックの様に自分の中で今まで観ていた映像が一気に繋がって、一つの意味を持つ。
そこには逃げ道もないし、言い訳もない。
ただ一つだけ、その映画の中で表現されていたことが浮かび上がります。
「ピアニスト」では一見冷静に見える人の持つ脆さとエグさを強烈に描きました。これは映画として人間を表現している。
「隠された記憶」では誰かに見られているかもしれないという感覚の怖さを描きました。サスペンスとして最終的に成立している。


暴力的とか問題作とかいろいろ言われている作品ですが、それはただの宣伝文句じゃありませんでした。
好き嫌いとかではなく、これは凄い。


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