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マンガ【預言者ピッピ】
本読み
/
2007-07-22 00:03:33
預言者ピッピ 1
1999〜未完(現在第一巻発売中)
地下沢中也
「パパと踊ろう」
でソノ筋の方にはおなじみの地下沢中也氏の作品。
とはいうものの、本作は全く違う作風・テーマです。
古谷実氏の「稲中」〜「わにとかげきす」どころの変化ではありません。
ギャグマンガ作家の書いた作品とはとても思えない。
真面目に、何か本人の中からわき出てきた想いの様なモノが描かれています。
もの凄く素敵に「願い」というものについて描かれています。
本作の第一話が掲載されたのが1999年の
COMIC CUE
Vol.06でした。
特集は「手塚治虫remix」で、各作家が手塚氏の作品に登場するキャラクターやテーマを使ってのトリビュートを掲載していました。
本作も特に注釈無く掲載されおり、誰もが手塚氏のプロットで構成された作品だと思ってました。次号での掲載によって本作は地下沢氏のオリジナルであるということが判明したのです。
既に手塚クオリティ間違いナシです。
そして2007年の今頃に単行本化。
タイトルは連載時は「兆」だったり「Sign」の紆余曲折を経て「預言者ピッピ」に。
ちなみに、本文中の「預言」は「予言」と表されています。
預言:神や死霊の意志を媒介し、人々に伝えること
予言:未来の出来事や未知の事柄をあらかじめいうこと
どうやら「神」という概念があるかどうかの違いのようです。
ピッピの場合はどちらかというと「予言」ですが、次第に「預言」となっていきます。
この物語は、設定は所謂SF。
マザーコンピュータが政治・経済を司る世界の少し前の世界。
地震予知ロボットとして生み出されたピッピと想像力の固まりのような人間の子供タミオのお話からスタートします。
ピッピは近い将来の情報集積回路、もしくはGoogleが擬人化された姿です。
あらゆる情報を集積し、計算予測し、限りなく100%に近い予測をする。その言葉は正に預言(託された言葉)です。
ピッピの言葉はあくまで予測であってそこに善悪は無く、ただの計算の結果です。
従来のSF作品は「Matrix」「火の鳥」「ブレード・ランナー」の様な、そのコンピュータが司る世界が成立した荒涼とした世界で人間の本質への回帰を描いたものでした。
本作ではそのマザーコンピュータの導入過程に焦点を当て、完全なお伽噺ではなく、その渦中で突然預言を盲信する大衆とそれに立ち向かう人々のドラマをスリリングに描きつつ、ピッピとタミオの対話から人間本来の「願い」を描きます。
人気SF作家のフィリップ・K・ディック原作の映画「マイノリティ・リポート」が描く予知能力が作る荒廃的世界観近いモチーフではあるものの、後ろ向きではない結末が想像できます。
この「預言者ピッピ」はギリシャ神話に登場する
「パンドラの箱」
のお話です。
パンドラの箱に収められていたあらゆる災厄が現世に出てしまった後、ただ一つ箱に残った災厄は「兆(きざし)」。
この「兆」を人間が知ってしまえば、人はその後に起こる全てのことを知ってしまうことになる。
その既に分かってしまっていることに従うだけです。そこには希望も願いも無く、発見もない。
カーナビの行く末は自動運転。我々を垂直に運ぶ真っ白な箱。
「兆」とは言い換えれば「予知能力」です。
「あらゆる情報を集積し計算予測する道具」を創り出すことによって、人類は予知能力を神に与えられることなくして生み出してしまった。
その予知能力をが見せるものはただ一つ「終末」です。
人類であれば滅亡。
この作品では人々に二者択一を求めます。
「絶滅」か「進化」か。
進化をとれば、現在の姿をとどめることができない。絶滅をとればそこでおしまい。
そのどちらを願うのか、ということを願うことを知らないロボット:ピッピが投げかける。
ピッピの存在は、正にパンドラの箱に残された「前兆」です。
自分が望む世界があるのであれば、その世界を望み、そこに向けて歩き出すのが人間です。
そして、皆がそれを望んだときに、その世界は実現します。
これはかつてジョン・レノンが「Happy X’mas (War is over)」で歌ったことです。
本作の独自性は、正にここにあって、壮大な世界観からの説教ではなく、想いを身近な友人に語りかける口調で語られる点です。
その身近な「想い」こそが世界を成立させているということを訴えかけてきます。
第一話のラストでピッピの言う台詞がとても素敵です。
ここには敢えて記しません。
是非、読んでみてください。
大きめの本屋に行けばおいてあると思います。
近場の方は貸しますのでご連絡を。
掲載雑誌のCOMIC CUEは2003年のVol.300(なぜかVol.09の次がVol.100という冗談で付けられた号数のため、実際は12号)以降休刊状態となり、現状未完。
この作品を埋もれたままにするのはもったいない。
でも、このタイミングで単行本化されれたということは、書き下ろしで完結させるのか?
楽しみです。
コメント (
1
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コメント
Unknown
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n
)
2009-05-05 06:47:48
「パパ踊」だって随所に濃厚なブンガク臭がしてますよ。
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