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サッド ヴァケイション
2007
青山真治


シネマライズでの最終日も近かったのですが、入りは3割。平日の真っ昼間にしては入っている方では。
常々思うのですが、こういう平日の真っ昼間にこういう類の映画を見に行く人というのはどういう人なんでしょうか。

本作は北九州サーガ三部作ということで、「Helpless」、「「ユリイカ」に続く完結編ということだそうです。
しかし、扱っているテーマが違いすぎ。
本作の下敷きに「Helpless」が大きくあり、「ユリイカ」の設定は宮崎あおいを出演させるためだけの口実だったんじゃないか?と思うほどに「Helpless」寄り、というか完全に続編。
けれども、本作だけ観ても十分にテーマは伝わります。
以前の作品観るのがタルいなぁ、なんて思っている方は本作だけ観ても十分かと。その後に前2作でもオッケー。多分。


本作のテーマは「ゆるぎない女性」ということです。コレは相当真正面から響きました。
「母性」ではなく「女性」。
この言葉はプログラムの冒頭に書いてあった言葉で、チラシに書いてあったかどうかは失念。公式サイトにはビシッと書いてありました。
後付じゃないの?と思うほどに映像が即興的で、これはかなり「Helpless」寄りの演出。
整理されまくっていた「ユリイカ」とは全く違う感触。
そのなかで、本筋を通してくる青山監督はやはり演出家として相当優秀な方なんですね。自分が決して持っていない本能を映画という形で表現するなんてそうそう出来ることじゃありません。

画一的な側面を持つ「母性」という単語では表しきれない「女性」を本作では描いています。
それだけに、この「女性」を担う女優が何人か登場します。
最も印象に残っているのは借金取りの追っ手に怯えるオダギリジョーを膝に抱く宮崎あおいの顔。
私の宮崎びいきはやむをえずとしても、これは残る。と、思ったらパンフレットにもスチールが。


主人公や殆どの動きのある芝居を男性が占め、しかしその芝居が浮かび上がらせたい"女性"の輪郭を浮き彫りにします。
グダグダと自分のことばかりにかまい続ける男の視野とは全く違う女性の視野。
ラスト付近までこの物語の本来のテーマが全く分かりませんでしたが、見終われば「なるほど」と膝を打つ。
映画一本を通してちゃんと表現したいことが響いてくる。
コレが映画ですよ。
派手なシーンはありませんが、作品として残ります。



ところで、本作は日本映画の中で実力派とされる方が多数出演していますが、その中でも浅野忠信の信頼感というか、安定感がもの凄いですね。
今となっては実力派俳優として通っているオダギリジョーが本作では完全に脇。多分、浅野忠信が同じ作品にいなければ、ちゃんと際立ってきたんでしょうが、その存在を薄めてしまう浅野忠信の存在感。この人の何がそんなに凄いのか分かりませんが、一瞬で視界を奪うことができる数少ない俳優ではないでしょうか。


「青山真治作品って面倒でなんかキライ」という方が多いかもしれませんが(私もその一人でした)この3部作は必見です。
トリロジーDVD出ないかなぁ。

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