notation




 
 
アナトミー
2000
Stefan Ruzowitzky(ステファン・ルツォヴィツキー)


ある医科大学の解剖実習室で起こるオカルト団体も交えたドイツ産ホラー作品です。
これだけで相当面白そうなプロット。
で、観てみたところ、確かに面白い。
映像の質感も凄く良い。サスペンスっぽい。
けど、なんかスケールが小さい。
こぢんまりしてる。
それが悪いというわけではないのですが、ちょっと物足りなかったです。

ややスラッシャー風味な解剖シーンなんかもあったりして娯楽作としての完成度はとても高いです。
ただ、はたしてコレはホラー映画だったのか、サスペンス映画だったのか。
サスペンス・ホラーというジャンルもあるそうなんですが、それって反語な気がします。
サスペンスというのは割と理詰めであり、ホラーというのは感覚の怖さ。
それをいっしょくたにしてしまうと一体ナニが出来上がるのか。

本作の場合、感覚的なところをエロとし、理の部分を医学にもってきたりして、さらにその医学の中の解剖学をエロスと結びつけるという結構複雑なことをやってのけているんですが、結局人間の体を触りまくるという触覚にエロとホラーを着地させています。
で、その場合どっちが勝るかというとエロ。
ということで結局コレはサスペンス要素よりもホラー的な感覚が勝ってしまい、そこにオカルト団体の登場。もちろんサントラはスラッシュ・メタル。
B級感満載、オタク感満載。もう、収拾がつかない。
けれどもそこを職人芸で高級感を以てまとめ上げるルツォヴィツキー監督。相当な手練です。


良いトコも沢山あるんですが、詰め込みすぎちゃってテーマがぼやけてしまっている感アリ。
なんか観たことある感じ。

けれど、質感は凄く良い。
サスガはバウハウスの国、ドイツ産。
美術はアリモノを使っているとは思えない素晴らしさ。


同じプロットでアレン監督が撮ったらコメディにしかならないでしょう。
けど、それ観たい。

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ぜんぶ、フィデルのせい
2008
Julie Gavras(ジュリー・ガヴラス)


突然、両親が共産主義に目覚め、今までの裕福な暮らしがめちゃくちゃになってしまったアンナ(主人公)。
終始仏頂面で不満と質問を大人に投げかける様は、そこにある種の真実がある気がしてなりません。

本作をコメディとして観るか、社会派作品として観るかは自由だと思うのですが、日曜のガーデンシネマは年齢層が超高め。むしろシニア層。皆様微笑ましい作品を観るかのように笑っている。
不思議な映画です。
ちなみに、フィデルとはカストロ議長のことです。カストロ議長・・・、アナグラムするとドエライ名前ですが、それは別のお話で。


私の中では「ミツバチのささやき」「パンズ・ラビリンス」ラインの大人の理屈に巻き込まれても、それとは切り離された子供の世界で幸せらしきものを見つける(固持しようとする)少女のお話かと思いきや、大筋ではやっぱりそういう作品でした。
ただ、本作の場合はアンナが大人に対して不平不満をぶちまける。その様が世代によっては孫を見ているかのような微笑ましく映ってしまうのか、ただのクソガキに映るのか、イヤ、ただのクソガキには映りません。
あの仏頂面は既に名人芸です。

残念なのがジュリー・ガヴラス監督(コンスタンタン・コスタ=ガヴラス監督の娘)が長編映画初だからなのか、フラフラとしたキャメラなのにやたらとカットを割る。この演出はちょっとどうかな、と言ったところ。
もう少し時間をゆっくり感じさせる方が好みです。
母がいきなりウーマンリブに目覚めたりとか、それで揉める夫婦像とか結構盛りだくさんなのでやむを得ずか。


その社会の身勝手さを9才の子供の愚痴として発すると、コミカルだけれども、そこに政治では決して解決できない人間の本質の様なものが見え隠れします。
果たして、その愚痴が正しいことなのか分かりませんが、直感的に大人が「なんとなく」にしている部分をズバッと付いてくるらしいのです。
「お菓子買って!」と本気で自分中心のダダをこねる反面、そういう部分もあるなぁ、と。
本作のアンナにとっての敵は共産主義ではあって、決して人(両親)ではない。そのあたりの描き方は絶妙でした。罪を憎んで人を憎まずなのか、出来た娘です。

先日、私の知り合いが「シュウキョウってナニ?」と3才のお子さんに質問されたとのこと。
キリストも仏陀も、多分生死の概念もおぼつかない子どもにどう説明すればいいのか。私には分かりません。


ただのコメディにあらず。
とても良い映画です。
是非。

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カプリコン・1
1976
Peter Hyams(ピーター・ハイアムズ)


『有人火星探査に向かうロケット。そこに士気高く乗り込む3人の宇宙飛行士達。
しかし、打ち上げ直前の直前にロケットを下ろされある場所へと連れて行かれる。
そこにあった建物の中ははまるで映画の撮影現場。しかもそこに組まれているのはまるで火星の地表のような・・・。
彼らは、偽の火星中継を強要されようとしていた!』

というSF好きならバックリ食いつくこと間違いなしのプロット。
随分前の作品ですが、この作品を観ていなかったとは。
正直、それほど面白いSF作品ではありません。
が、どうしても観てしまう悲しいSF好き。

序盤はサスペンスタッチで進み、中盤からはアクションという割と節操ない構成です。
アポロ11号の月着陸映像が、実は捏造だったという都市伝説というところからの着想なんのでは。
ちなみに、その映像はキューブリック監督が撮ったという尾ひれが付いてたりしますが、飛行機に乗れないからイギリスで映画を撮り続けたキューブリック監督にそれは無いと思うんですが。
さらに余談ですが、アイズ・ワイド・シャットでは主要キャストを1年以上拘束。飛行機が相当嫌いだった様です。

本作のようなスケープゴートらしき作品があると余計に勘ぐりたくなるのは「宇宙人の解剖」も同じくです。
けど、あっちはやっぱりクサイんだよなぁ。


余談はさておき、正直チープだけれども楽しく観られました。
ツッコミ所満載のおかげでしょうか。

物好きな方は一度ご覧になっても良いかと。
ラストシーンは驚愕の空気投げです。
順撮り(物語の進行通りに撮影)してたら途中でお金が無くなってしまったの様な後半の展開は、ある意味驚愕です。

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イレイザーヘッド 完全版
1976
David Lynch(デヴィッド・リンチ)


私ごときがこの映画についてコメントするのもおこがましい。
というか、意味が分かりません。

影の多いモノクロ映像、むしろ影の中におぼろげに浮き上がる何かの輪郭。
常に轟音のSE。
ストーリーはあるし、割と普遍的なことを描いている気がするんだけれども意味不明。
この映画を4年もかけて、ほぼインディペンデントで地下に籠もって撮っていたデヴィッド・リンチ監督は本当に楽しかったんだろうなぁ。

完全に悪夢。
でも、本当に悪夢なのか。
私たちには悪夢と捉えられるだけで、映画の中の彼らにはそれが日常。

もの凄く漠然と頭の中にある「ちょっとズレてるだけなのに圧倒的に現実と違う」映像を映像としてアウトプットできるというのはもの凄いことです。
出てくるのは生身の人間だし、その部屋にあるベッドもタンスもライトも現実にあるはずのものなのに、完全に現実とズレています。
このバランス感覚はどこから来るんでしょうか。世の中をそう見ているからなのか。デヴィッド・リンチ監督には世の中がそう映ってしまっているということなのか。
自分の思うままの現実を映像で表現したらキチガイの世界になってしまったというのは、「撮りたいものを撮る」ということと対極にある「自分にはこう見えているからこう撮った」という、ある種の天才にしかできない映画の王道の撮り方なのかもしれません。

一瞬でソチラ側に連れて行ってくれる作品の監督には世界はそう映っているに違いない。

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プレスリーVSミイラ男
2002
Don Coscarelli(ドン・コスカレリ)


面白い!
コレは面白い!

タイトルからしてのバカ映画ですがその期待を裏切らないバカっぷり。

監督は知る人ぞ知る、知っていたら観ずにはいられないB級の名作「ファンタズム」のドン・コスカレリ監督です。
このあたりから推して知るべしなんですが、知らない方のために注釈。
辻褄をあわせることを最も苦手とする作風で、恐らく思いついたことをとりあえず撮ってしまい、編集で悩みまくるものの結局並べることしか出来ず、出来上がった映画はプロットしか存在しない(台本が無い)であろうという映画です。(「ファンタズム」「プレスリーVSミイラ男」共通)。
私見なので、本当はもの凄い計算され尽くされた作品なのかもしれません。

年老いたプレスリーがミイラ男と戦ったらどうなるんだ?という着想だけで突き進んでみたら無茶苦茶面白い映画になってしまった奇跡の作品。
ちなみに、本作に登場するプレスリーは本物という設定。
で、このプレスリーの設定が既に面白い。
本物のプレスリーが、思いつきから自分のそっくりさんと人生を交換してみたいと思って交換。そしたら本物として活躍していたプレスリー(元そっくりさん)が死亡。モノマネ営業をつづけるそっくりさん(元本物)も、がんばりすぎてステージから転落。腰を強打。その後、歩行器無しで歩けない有様。しかも局部に腫れ物を患う。そのまま医療老人ホーム行き。
病が原因してか勃起不全。看護婦にヌルヌルの液体を塗られてもピクリともしない。その姿に過去の”キング”は重ならない。
ある日、ミイラ男が老人ホーム近辺に出現。自分はロックンローラーだと言うことを思い出し(何故か)ミイラ男と戦うことを決心。歩行器とJFKを名乗る老人(黒人)と共に共同戦線を張る。

書いてて全く辻褄があっていないことは分かっているんですが、本当にそういう映画なのです。
疑う方はご鑑賞下さい。

下手な辻褄合わせのクソつまらない映画に辟易している方、是非。

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モンティ・パイソン 人生狂騒曲
1983
Terry Jones(テリー・ジョーンズ)


風刺やらブラックユーモアを超えてグロイ。
イヤ、大好きなんですけど。

こういう人たちがテレビを荒らしまくっていた時代というのはどういう倫理観だったのか、想像するに牧歌的だったというか、アリかナシかのジャッジを表現者に任せていた良い時代だったんだなぁ、と。

「人生とは?」の問答みたいな作品ですが、そこはもちろん超ブラックコメディ。
さんざん講釈をたれた後に「そんなモン知るかよ」というオチ。
最高です。
オチをして良しというよりも、人生問答について何の答えも出していません。
普通に笑って観られるコメディ作品です。
とはいえ、社会的タブー全開すぎて引くこともあるかと。

この作品で笑ってしまうと公では社会不適合者扱いを受けること間違いなし。
でも、こっちで笑える方が正常だと思うのです。


ユーモアをユーモアと解釈することができる懐のために、あらゆることを関連づけて考えることも大事ですが、それをトチ狂って全ての情報を関連づけてしまうと、最大公約数みたいなクソつまらないものしか残らない。
そんな作品なんて観てもなんとも思わない。むしろ腹が立つ。
悪趣味だと言われるくらいの作品で突き抜けた方が楽しいなぁ。


メジャー映画が悪い意味でCM化してしまって、毒にも薬にもならぬ世の中なんて、ポイズン。

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アヒルと鴨のコインロッカー
2007
中村義洋


ストーリーは凄く良い。
伊坂幸太郎って、本当に凄いストーリーテーラーですね。
結構多作なのにもの、凄い着眼のプロット。
一つのしかけだけでグイグイ引っ張ります。

本作の種明かしはしちゃうとこの映画の魅力が無くなってしまうので、できれば本作をご覧下さい。
こぢんまりと地味ながら、割と良い作品です。

ただ、惜しいのは本作は多分原作の方が100倍面白いだろうなぁ、ということ。
映画としてのスペシャルさが無かった。
ただ映像に落とし込んでみました、というもの。
序盤ではあまりの演出の情けなさに何度かDVDを停止。
役者の芝居があまりにもダイコン。
そして、分かりやすすぎる脚本。
そんなに1から100まで台詞で語ってくれなくても大丈夫です。
むしろ、それをやらずに映像で語りかけるのが映画なのでは?
本作で原作に書かれていなかった演出ってあったんでしょうか。


原作の魅力を映像が打ち消してしまったパターンです。

それにしても伊坂幸太郎は映像化に恵まれませんね。
もったいない。
というか、売れたからって無理矢理映画化することは無いと思うのですが。

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情痴/アヴァンチュール
2005
グザヴィエ・ジャノリ


ちょっと外した気分。
夢遊病の女に恋した男の報われない恋愛模様、もしくは、報われない恋故に夢遊病になってしまった女の様、という映画です。

主演のリュディヴィーヌ・サニエの本気汁はよく分かるのですが、残念ながら好みじゃないし、モロの裸にあまり性的なものは感じません。
ちなみに『モロ出しよりも倒錯したフェチズム(チラリズムとか)に欲情する方が心理学的に性に成熟している』というのはユング博士曰く、です。
その説でいくと、ナントカフェチがコアであればあるほど成熟しているということになり、ロリコンを極めて殺人にまで至った某氏や、近所の子供を殺してその記憶でオナニーしていた某少年の成熟っぷりは凄まじいものとなってしまいますが、それをして人間としての成熟とは全く無関係。


本作の邦題の「情痴」という部分。これが間違いの元。
セックスに溺れまくる男女を描いたのかと思いきや、本当は夢遊病に悩む女とその女に恋して必死に尽くす男(下心アリ)のお話。
おフランスらしい、ダメ男丸出しの慎ましい作品です。
打ち出し方を間違えちゃった感アリ。
というか、勘違いしてしまった。
『情』は良しとして『痴』はイカンですよ。
ちなみに、『情痴』とは『色情に溺れて理性を失うこと』です。

ついでに言えば、リュディヴィーヌの肌の質感が死人の様。
これは狙ったんでしょうか。ただ加齢の為なのか。リュディヴィーヌは当時26才くらいです。
この質感がメイクだとして、死人のような人間、もしくは亡霊に恋する男を描いたというもの凄い意訳だとすると、結構良い作品です。
そんな件は全く出てきませんが。



結構良い映画だったんですが、入り口を間違えて間違った構えで観てしまった。
残念。

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素晴らしき哉、人生!
1946
Frank Capra (フランク・キャプラ)


米国ザ・クラシックス。
お気楽な映画と思いきや、深い作品です。


『決して豊かではないが正しい道を突き進む男ジョージ。
彼は家業である住宅ローンを父親の急逝により引き継ぐこととなる。商売敵の嫌がらせなんかの逆境に立ち向かいつつ人のためになる経営をモットーに営むジョージ。しかし、社員のミスにより莫大な損害を被ってしまう。全てに絶望したジョージはクリスマスの夜に冷たい川に飛び込み自殺をしようとしていた。そこに天使だと名乗る男が声をかける。「あなたが存在しなかった世界を見せてあげよう」そしてジョージは自分の存在しない荒んだ街を観ることになる・・・。』
というストーリーです。


映画のタッチはコメディ路線。そしてラストは一見大団円のハッピーエンドなんですが、どうもしっくり来ません。
米国では本作が毎年必ずクリスマスにテレビで放映されて「情けは人のためならず」という道徳の教科書のような扱いになっているとかいないとか。

この主人公ジョージが存在しなかった世界というのは天使が見せた幻想ではなく、パラレルワールドとして存在する世界なのです。
この天使が見せた世界というのがただの幻想であったならば道徳として通用するのですが、そうではない。
平和な街も荒んだ街も、一つの世界のあり方であるということなのです。
本作ではジョージがいた場合、いなかった場合を並べているのですが、これは世界のどこかで同時進行している世界であるという面もあります。

逆に、ジョージが存在している世界をジョージが存在していない世界の人間が見せられたらどう思うでしょうか。
自分がが存在していることが現実であって、それを否定された世界を誰が受け入れるでしょう。その善し悪しは傍観者には分かりません。
キャプラ監督は、この物語をパラレルワールドとして表現したのではないでしょうか。

公開当時は内容のダークさに万人受けせず、大コケで会社が潰れてしまったそうですが、現状ではハッピーエンドの典型として捉えられている。
現在は物語の上っ面しか理解されていないのではないでしょうか。
その画面上で起こっている出来事しか理解できないのでは。
最新のCGIや中途半端なお涙モノに慣らされて、現実にない世界を目の当たりにすることができる様になった代償に、想像力はどこかへ行ってしまった。
映画を観るということは画面を眺めるといのも一つであるし、それは決して否定しません。
が、かつてTokyo No.1 Soul Setでビッケが”More big Party"で唄った「その小説の中で集まろう」というフレーズ。これをそのまま引用すれば「あの映画の中で集まろう」。この引用が果たして正しいのかは分かりませんが、そういう感覚で観るということも楽しいのでは。

このハッピーエンドに見える時間、もう一つの世界では誰がどういう暮らしをしているのかという想像力が無くなってしまった。
そこを感じることができず、ハッピーエンドの一つのケースだけを真実と受け止めて喜んでいる人間はただの不感症だと思うのです。
もしくは、コマーシャルに洗脳されてしまった者と同じで、既に分かりやすい(ラクな)答えを用意されたものにしか反応できなくなってしまったということでは。


デヴィッド・クローネンバーグ監督に曰く『「素晴らしき哉、人生」をハートウォーミングなコメディだと考えている人は、一体何を観ているのやら』とのこと。
全くその通りだと思います。


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ホステル 無修正版 コレクターズ・エディション
2006
Eli Roth (イーライ・ロス)

タランティーノ製作総指揮の本作。それに釣られてみてみました。
ホラーです。しかもスラッシャー(スプラッタ)。

エロとスラッシャーを追求しています。
あんまり好んでスラッシャー映画を観ないので本作がどのくらいのクオリティなのかは分かりません。
2が出ているあたりからして結構ヒットした作品なんでしょうか。


刺激を求めてヨーロッパを旅をするダサイバックパッカー3人。ナンパしてはフラれ、クサを吸っては暴れて店から追い出される有様。
アムスでとある男からスロバキアにヤバイ場所があると聞く。そこは最高のセックス楽園があるらしい。早速向かう彼ら。話通りの素晴らしいエロ体験をするが・・・。
というお話。

良い話感も説教ももちろんゼロ。
これだけやり通しているとかえって清々しいはずなんですが、なんか違う。
エロとスラッシャーという二部構成にしてしまったのが故なのか、どうも深みがない。笑えもしない。
恐怖感の演出が地味に入っている。
さらに、一番求めていない風刺めいたものが入ってしまっている。ヨーロッパに於けるアメリカ人蔑視みたいなのがちりばめられている為にそれを伏線と勘違いして期待してしまったのが間違いでした。
あと、映像がクリアすぎ。
室内シーン以外はほぼ日中撮影。
何の都合か分かりませんが、B級狙いならもっと荒い質感でゴリゴリ責めてくる手触りがあっても良かったなぁ。

スラッシャーモノとしてはかなりのデキでなんでしょうが、人を責めるのが人であるというのが気味悪い。
平和な古き良きB級スプラッタでは全くありません。あんまり笑えません。
ゾンビモノは好きなんですが、コレはあんまり好きじゃない。良い作品とも思えない。
けれど後味が悪い映画を求めている方にお勧めです。
そのラインでの最高傑作はハネケ監督の「ファニー・ゲーム」です。それに比べたらヌルイ。


B級スラッシャーを狙ったんだけどシチュエーションが良くて1流のホラーになってしまった、という珍しい作品の様な気がしてなりません。


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