notation

映画【殯の森(もがりのもり)】

2008-06-30 00:09:34 | 映画
 
 
殯の森(もがりのもり)
2007
河瀬直美


もの凄いハイテンション。と感じるの方は少ないかもしれませんが、中盤以降のほぼワンシチュエーションで緊張感をずっとラストまで引っ張る。恐るべき映画です。
下手なサスペンス映画よりも目が離せません。

脚本は50ページくらいしかないんじゃないでしょうか。台詞も恐るべき少なさ。
故に、フォーカスの絞られ方が尋常じゃありません。
痴呆症の老人しげきと新人ヘルパーの真千子の、お互いに亡くしてしまった大切な人への想いだけで生きている二人の映画です。

今回は割とキャラ解説らしきシーンも入っていて「なんじゃこりゃ?」という作りではありません。
確かに地味と言ってしまえば地味な映画ではありますが、演出でここまでの空気が作り出せるのか、と恐れ入りました。

「萌の朱雀」の田村正毅さんも素晴らしい映像でしたが、今回のキャメラは中野英世という方。ちょっと寄り画(ハンディ)と引き画のテンションの違いが気になりましたが、それでも素晴らしいキャメラ。


2007年カンヌ国際映画祭にて審査員特別大賞(グランプリ)を受賞した本作。
納得。これは凄い。
ちゃんと映画館行けば良かった。

お知らせ【「HOT FUZZ」第二回トークショー開催!】

2008-06-23 21:31:25 | 映画
 
 
『ホット・ファズ -俺たちスーパーポリスメン!-(HOT FUZZ)』のトークショー第二回が渋谷アップリンクで行われます!

「ホット・ファズ」トークショーイベント第二回
6/29(日)
20:30 start
渋谷アップリンク


現在発表されているゲストは以下の通り。
・サエキけんぞう(パール兄弟など)
・桜井鉄太郎(Cosa Nostraなど。モーニング娘で、サエキさんとは仕事をしている仲でもある)
・森岡龍(俳優 「亡国のイージス」、「グミ・チョコレート・パイン」などに出演。監督作品が7月にPFFで上映)
・白石晃士(映画監督 「ノロイ」、「口裂け女」など)
・柏原寛司(脚本家・監督 「傷だらけの天使」、「太陽にほえろ!」、「探偵物語」、「西部警察」、「大激闘マッドポリス'80」、「あぶない刑事」などの脚本、「猫の息子」監督など)
・都築宏明(映画監督 「刀狩るもの~二本松の冒険~」(6/28公開))
・添野知生(ライター 「映画秘宝」など)
・MAD K(公開署名Webで前回のイベントレポートを書いていただいた)
・ギッチョ(Web「破壊屋」管理人)
(敬称略)

まぁ、またクセのある方ばかりで。
楽しみです。


映画「Hot fuzz」劇場公開を求める会

映画【ぼくの伯父さんの休暇(LES VACANCES DE MONSIEUR HULOT)】

2008-06-22 21:57:49 | 映画
 
 
ぼくの伯父さんの休暇
LES VACANCES DE MONSIEUR HULOT[原題]
MR. HULOT'S HOLIDAY [米]
MONSIEUR HULOT'S HOLIDAY [英]
1952
ジャック・タチ(Jacques Tati)


無声映画の様なコメディ。
ちなみに、日本では続編の「ぼくの伯父さん(MON ONCLE)」が先に公開されたため、1作目である本作のタイトルが「ぼくの伯父さんの休暇」となったのだそうです。豆知識ですが。

多分、映画本体よりもグラフィックの方がメジャーかもしれません。映画は観たことなくてもこのグラフィックを知らない人はあまりいないのではないでしょうか。
できれば、グラフィックだけに満足しないで本編も見ていただきたい作品。と言っても私も今更観ているんですが。

舞台はヴァカンスのビーチ。
恐ろしいほどのんびりとした空気の中でちょろちょろと動き回るユロ氏。日本でやったら熱海でドリフ。「志村、うしろー!」です。
本編を通してきっちりしたストーリーが通っているわけでもないので、なんだかだらだらしながら観るには最適です。

せかせかしたスピード映画からたまには離れてみるのも良いかもしれません。
夜に酒飲みながらというよりは、雨降りの休日の午後に茶でも飲みながら、の映画です。

映画【クロウ/飛翔伝説(THE CROW)】

2008-06-18 22:56:09 | 映画
 
 
クロウ/飛翔伝説(THE CROW)
1994
アレックス・プロヤス(Alex Proyas)


ブルース・リーのご子息であるブランドン・リー主演の本作。
本作の撮影中に不慮の事故で亡くなったことは誠に残念です。
取り切れなかったシーンは合成したとのこと。

荒廃した街の中で愛し合う二人。
突然のチンピラの訪問。
恋人を強姦され、その後恋人共々殺された救いようのない最後を迎えた主人公エリック。
その後、カラスに不死身の身体を与えられ蘇り、正体がばれないように白塗りのピエロのメイクをして次々と復讐を遂げていく。
痛快なアクション映画の様にいくらでも作れるはずなのに、悲しい話です。
いくら復讐を重ねても恋人は戻らないという想い。

問答無用に復讐し続けることと、恋人への想いが入り交じる。しかし、復讐を続ける。
自分の魂の浄化のためではなく、純粋に制裁のために殺し続ける。
ストイックです。
下手な言い訳は全くなし。

シリーズ化されているようですが、多分、本作だけで十分だな。
1作目ということもあり、作りとしては凄く安いんですが、それがチープとして映らない。
ちなみに、本作を心のナンバーワンとする知人がいます。
私はそこまでずっぽりではありませんが、これは好き。

ブランドン・リーの演技の憑依の仕方が尋常じゃありません。
苦悩にまみれたヒーロー。
決して彼自身には救いはない。
けれど、これぞヒーローに間違いありません。

いかにも90年代初頭の香りがプンプンするオルタナなのかパンクなのかメタルなのかよくわからないサントラも好き。
たまにこういう『ザシュッ!ザシュッ!』というギターの音が聞きたくなることも。

The crow

映画【ハートブルー(POINT BREAK)】

2008-06-16 00:59:54 | 映画


ハートブルー(POINT BREAK) アドバンスト・コレクターズ・エディション
1991
キャスリン・ビグロー(Kathryn Bigelow)


もちろん、「HOT FUZZ」の為に見返した本作。
本作を観ずして「HOT FUZZ」は楽しめないと言っても過言ではないほどのオマージュっぷり。

けれども、そういうネタ的な見方をせずとも、面白い。
サーフィンと刑事物(潜入捜査官)という一見相容れないモチーフも「男の世界」というテーマの力業かすんなり染みこみます。
ちなみに、同じく潜入捜査官モノのタランティーノ監督の「レザボア・ドッグス」は1992年。同じ時代であってもオタクが撮ると随分違うものです。
本作と近い温度でやっているのが名作「インファナル・アフェア」ですね。こちらも随分と男前、だけど刹那。時代背景、というかお国柄なんでしょうか。突き抜けきって骨しか無い様な映画はやっぱり米国の国民性なんでしょうか。

本作をして名作とは言いがたいものの、意外なほどに時が経っても観られるというのは結局こういう世界に憧れているからなんでしょうね。
「言葉はいらねぇ、お前が何を感じるかだ」と言わんとする映画、しかし監督は女性。これはむしろ女性(キャスリン監督だけかもしれませんが)の望む男像なのでは。
「本当に自分が感じるモノはルールで縛られるモノじゃねぇんだよ」と言わんとする展開。男気溢れる映画です。

小手先でグダグダやってる映画ばっかりで、こういうディテールで勝負しない大味でありつつ何かの真理があるように思わせる映画が最近少ないように思われるのですが如何でしょうか。

映画【オズの魔法使い(The Wonderful Wizard of Oz)】

2008-06-10 23:43:25 | 映画
 
 
オズの魔法使い(The Wonderful Wizard of Oz)
1939
ヴィクター・フレミング(Victor Fleming)


ルビーでできた靴のかかとを三度打ち合わせれば、たちまちあなたの望みの場所へ。
コレは何の比喩なのかなぁ、としばらく考えて結局結論出ず。

帰る家があるホームドラマと観るか、成長物語と観るか。
どちらかと言えばホームドラマですね。
少女の成長物語の名作、宮崎駿監督の「魔女の宅急便」とラストが全く違うというのが印象深い。
今更本作を観ているんですが、セットのチャチさとか、衣装どうなの?とか、実際ドロシー老けすぎじゃねぇの?とかおいといて、本作の本質は多分映画になることで薄れている気がします。
映像にならないことを想像するために書かれた本だったのでは。今となっては、の発想ですが。


夜に家に帰るのが当然で、外泊は御法度の時代的なものがあるのかもしれませんが、それにしても牧歌的すぎる。
著者のライマン・フランク・ボームが「ただ今日の子ども達を喜ばせるために書いた」と語っているとおりなんでしょう。深読みいらず。
この本で楽しみたい。

お伽噺にツッコミを入れるほど愚かなことはありませんが、例えば老齢の御仁が孫に見せるには、あまりにも時代が変わってしまった。
もしくは甘やかせっぷりの比喩としては通じるかもしれません。その感性があれば、のはなしですが。
プチ家出をして世に揉まれている気になっている少女達には逆効果ですね。
用意された経験を経て、成長した気になって家に帰る子ども達にどうぞ。

6/8 秋葉原

2008-06-09 02:00:26 | 侃々諤々
 
 
この事件のつい一昨日、友人とメイドカフェとパーツ屋とエロショップを徘徊するためにまさに「あの場所」にいた。
ちなみに、隔週くらいで何かしら訪れている。



『歩行者天国の只中を一台のダンプカーが突進してきて数名の男女を跳ね飛ばす場面を目撃した。信じがたい情景を目にした博徳は、驚きのあまり足が竦み、息を呑んだ。眼前の景色全体が、映画のスクリーンにでも豹変してしまったかに思えた。(中略)運転手が逮捕されたのかどうかすら知り得ず、その場にいる誰もが、事の真相を掴みきれず、一様に唖然たる面持ちを曝していた。』
(阿部和重著「シンセミア」より抜粋)



現実は小説を模倣するという言葉を持ち出すまでもなく、これまで幾度となく繰り返されてきた想像(フィクション)が現実になる惨事。
たまたま私がこの小説を読んでいて、酷似していることから引用した。



何が言いたいのかと言えば、この事件の日、そこにいる人間の何人かは既に(脳内で)経験しているであろうということ。
私のようなサブカルに明るくない人間ですらこの程度のことを知っているのだ。
あの場所の大多数の人間の頭の中には私以上の鬼畜な知識を有している人間が数多くいたことだろう。

彼等の頭の中にはそれまで空想でしか成し得なかった事実を目撃することが出来た高揚感があり、前提としては現実であると認識するまでのギャップによってその事件を「楽しんだ」のでは。
恐らく、私がその場所にいたとしても似たような行動をとっただろう。同じ人種だ。
もしくは、何も出来ずに立ちすくみ、しばらくしてから立ち去っただろう。後日、あの日のことを目の当たりにしたことを嬉々として喋るかもしれない。
彼等を一様に責められない。
なぜ、そういう思考になったのか、その原因を考えるべきだ。

咄嗟に現実として認識し、人命救助ないし事態の収束に向かった方々の思考回路こそ「正しい」のだろうが、その「正しさ」が正常に機能しないくらいに脳内の経験が豊富になってしまっている。予測不可能な事態に直面したときにこそ「人となり」が出てしまう気がする。


「その場にいたら何かしてあげたかった」と思うことは「事後ヒーロー」ではないか。
現場で、直感で「ヒーロー」たらんとした彼等を嘲笑する輩がいないことが救いだ。
同時に、傍観者であった彼等を責めることは誰にも出来ないと思う。


あと思うことは、今日「秋葉原事件」とか「秋葉原通り魔」とかの名前で報道されたことがマスコミの認識であって、明日以降のマスコミの報道には何の価値もないと思う。生い立ちやら知人の評価やら趣味趣向やらが捏造の元に発表されるだけだ。

事後判断ではなく、その瞬間の判断こそが人間だと思う。


何を考えての犯人の行動かは本人にしかわからない。
今回も原因はあとから勝手に作られるんだろうな。
人が考えた原因を鵜呑みにしない方が良い。

映画【木曜組曲】

2008-06-08 10:45:24 | 映画
 
 
木曜組曲
2001
篠原哲雄


木曜日は大人の時間。
とかジャケ裏に書いてありましたが、そういう映画なんでしょうか?

ある売れっ子女流作家の死を巡る女5人(4人は親族で全員何らかの作家、1人は死んだ作家の担当編集)の駆け引きの映画です。
毎年恒例の食事会の最中に死んだ売れっ子女流作家。彼女死の真相は?
ほぼ1シチュエーションのサスペンス(?)。
そこで描かれるのは、女同士の駆け引きが全てです。

この映画が優れている理由は、そこに漂う女同士で無ければ生まれないであろう駆け引きの空気。
一見仲の良さそうな5人の女性たち、しかし、お互いに含むところはあり、それを正直には言えない間柄。たとえそれが姉妹であったとしてもプライドが顔を覗かせ彼女たちの間に薄いヴェールをかけてしまう。
この描き方は絶妙です。
サスガは篠原哲雄監督。日本の誇るプログラムピクチャーの雄。

私は3人姉弟で、姉二人がいる家庭で育ったので、その距離感というか、その言で歯に着せた衣の感覚がもの凄くよくわかります。
ある一定の歳を超えると本音で語り合うのは希となり、言葉の端から推して知るべしという駆け引きが生まれるモノです。もしくは、知らぬが仏、という実際に言葉になったことしか事実として認めないという頑なな姿勢。
まぁ、私の場合はその場にいるのがいたたまれなくなり、すぐに身を隠すんですが。

年にそう何回もない会合を事を荒立てずになんとかとりなそうとする本作の女性たちの各々の言動。
それがたまに実家で顔をつきあわせる姉たちの言動と非常に近い。
テーマがどんなに重苦しく、例えば本作のように人の死ということであったとしても、むしろテーマが重くなればなるほどしっかりと客観視することが美徳であるという女性の目線。それがとてもリアルに描かれています。

『彼女たちにとってはそれが美徳なのだなぁ』という客観視する目線を貫いた篠原哲雄監督の視点が素晴らしい作品です。

映画【食人族(CANNIBAL HOLOCAUST)】

2008-06-05 01:35:37 | 映画
 
 
食人族(CANNIBAL HOLOCAUST)
1981
ルッジェロ・デオダート(Ruggero Deodato)


ブレアウィッチのオリジナル、もしくは川口浩探検隊(水曜スペシャル)の元ネタとも言える本作。
本作を以て「これは実話なのか?」という牧歌的な時代が偲ばれます。

水曜スペシャルは欠かさず観ていました。
当時、ビデオで録画するという習慣がなかったため、網膜に焼き付けるかのようにテレビ画面を凝視。一瞬たりとも決定的瞬間を逃すまいと構えていました。しかし、ラストは毎度の発見ならず。もしくは隊員の負傷による無念の帰還。
「いい加減にしろよ」という発想は不思議と無く「次こそは!」と、まるで隊員の一人であるかのように意気込む小学生。
あの時の想いは一体ドコにいってしまったのか。
映画を観れば狙いがバレバレな割りに憤り、テレビを観れば芸の無い芸人に辟易し、ニュースには既にジャーナリズムは無いと嘆く。
そんな30代に誰がした。

映画【ナンバー23(THE NUMBER 23)】

2008-06-04 23:11:39 | 映画
 
 
ナンバー23(THE NUMBER 23)
2007
ジョエル・シューマカー(Joel Schumacher)


ハズレ。

もっともらしい歴史上の事例を挙げまくって「23」につなげるの過と思いきや、それほどでもないエピソード群。
ただの強迫観念といういか、ノイローゼの人のお話でした。
でっち上げでも良いからネタになるようなエピソードを入れ込んで欲しかったところです。


「ダヴィンチ・コード」もどうしようもない映画でしたが、わりと近いタイプ。
壮大な謎解きモノを期待して観るのはオススメできません。

ジム・キャリーがどうとか言うまでもないクソ脚本。
エピソードのショボさは脚本というか、リサーチ不足。
そこ、めんどくさがっちゃダメでしょう。
もっと掘ればいくらでも出てくると思うんですが。
まぁ、2と3を使えば二桁のどんな数字でも割り切れますわ。そこにこじつけの計算持ち込んだらダメでしょう。
「13日の金曜日」クラスの押しつけがましさが欲しかったところ。

短尺なのでサクッと観られますが、これを観るくらいなら他にいくらでも良い作品があるので、先ずリストから外してください。