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映画【ビデオドローム】

2006-06-28 01:57:30 | 映画
ビデオドローム
1982
David Cronenberg デイヴィッド・クローネンバーグ


クローネンバーグと言えば、気味の悪いクリーチャーがとんでもないところで顔を出してくる映画。ホラーと言われている作品もどちらかと言えばアメリカンニューシネマの様に見えます。投げっぱなし。
本作もテレビ文化に対する警鐘なのか賛歌なのか分かりませんが、多分インスタントに制作される(当時の)テレビ番組の発達への嫌がらせの様なモノじゃ無いんでしょうか。

「ブラウン管に映っていることすら見てしまえば経験になってしまう」そうです。極端な物言いですね。
視覚の刺激を経験に置き換えることのできない愚か者の私ですが、できればそうなりたくはないです。
ブロードバンドがいくら発達しても映画館は無くならないし、小説の単行本も無くならない。できれば本屋さんも無くならないで欲しい。音楽も無くならない。
経験をどこで得るかというのはこれから本人次第になってくると思います。
情報として入ってくることがもの凄く多くて、そこに行かなきゃ分からないってことだらけです。
私も、人の話を本で読んで分かった気になったりしてますけど、できれば会って話をしてみたい。でも、会ったら緊張してそれどころじゃないんだろうな。

ところで、科白として登場する言葉なんですが「現実なんて認識次第なのだよ」って、どれくらい前から言われていることなのでしょうか。それを言葉として頭から信じてしまうと下手な洗脳されちゃったりするんでしょうね。
自分の認識、というか自我を人から植え付けられちゃったらラジコンです。
で、この映画の主人公はラジコンで終了。
おー、こわ。

映画【ヴィタール】

2006-06-26 02:09:28 | 映画
ヴィタール
2004
塚本晋也


塚本晋也監督と言えば「鉄男」というのが大学生からの私の了見です。
なんだかよく分からない演出で映画を成立させてしまう、カット割りの鬼。
本作もどちらかと言えば芸術映画だと思うのですが、先日見た芸術映画の筆頭「トニー滝谷」とは対局。
でも凄い。素晴らしいと言うより凄い。
好きなタイプの映画ではないのですけど、引き込まれて「あと何分」とか思う暇もなく終わる。
それまでの映像との繋がりを無視しているけど、多分それら全てをまとめたラストのワンカットで鳥肌が立ちました。
今更見ているのでこんなこと言ってもどうしようもないですけど、凄い映画ですね。
好き嫌い以前に圧倒されました。

ところで、この映画の助演女優のKIKIというモデルっぽい女の子。かわいいけど、女優じゃない。喋らなければ良かったのに。でも、好き。顔は映画なのにもったいない。テレビにやられないで欲しい女の子です。


恐ろしく日本的な映像。脳内っぽい感じ。デビット・リンチ。いや、塚本晋也。
日本って国土の割に良い監督がホントに多いですね。エコノミックアニマルで良かった。

映画【AMADEUS(アマデウス)】

2006-06-20 01:27:47 | 映画
AMADEUS(アマデウス)
1984
Milos Forman (ミロシュ・フォアマン)


モーツァルトの半生を第三者目線で描いたという本作。
クラシックもたまには聴くのですが、どうも、モーツァルトはあまり聴いていません。
胎教に良いとか、頭が良くなるとか、リラックスできるとか、音楽の本筋と離れた所ばかりが取りだたされていて「別にその辺に興味は無いよ」なんつって高をくくっていました。
が、オペラが観てみたいです。どうやら面白そうだ。

今までオペラなんて一回も観ていないし、何をしてオペラというのかも全く分かりません。
The Whoの「Tommy」という映画がロックオペラらしいのですが、あれはあれでおもしろかったですけど。多分、超拡大解釈なのかも。

どうでも良いんですが、ガキの頃音楽室に飾ってあった額縁の髪型の人たちが沢山いる風景というのは滑稽ですね。映画だとしても。


3時間もある本作ですが、飽きずに一気に観られたのはやっぱり音楽なのでしょうか。知ってる曲がばんばん流れるとそれだけでちょっと分かった気になる。それとも演出が無茶苦茶上手かったのか。

ラストシーンのでの語り部が自分が収容されている精神病院みたいなところで同じ患者達に向かって「おまえ達は凡庸な人間だ。でも凡庸の神である私はおまえ達を赦そう」という言葉がもの凄く印象的。最近よく思うな、こういうこと。あんまり偉すぎる人に言われると、哀れまれているようでかえって落ち込みますが、偉くない人(劇中ではとても偉い)にそう言われることが意外と本気で赦される気がするのですが如何なものでしょう。

映画【メゾン・ド・ヒミコ】

2006-06-19 03:11:08 | 映画
メゾン・ド・ヒミコ
2005
犬童一心


ゲイのための老人ホームでのお話。
私がたまに飲みに行くバーでもこのホームに入っていてもおかしくない年齢のゲイの人たちがバーテンとして働いています。
その人達と話すのはとても楽しくて、いろいろ御馳走にもなっています。

多分、そう言う人たちはノンケの私たちが感じるような男女の煩わしさなんてものは煩わしいとも思わないほど今まで煩わしい思いを重ねてきたんだと思います。
この映画を丸ごと信じてしまえば、こういう生き方もアリだな、と。開き直りという意味で。
好きなんだからしょうがない、という女子中学生しか発想できない守護神を纏った彼らに怖いモノなどあるのでしょうか。でも、楽しそうだ。こういう小さなコミュニティが好きなのかも知れません。

映画【花とアリス(Filiming H&A)】

2006-06-18 02:46:13 | 映画
花とアリス(Filiming H&A)
2003
岩井俊二(花とアリス)
遠藤尚太郎(Filiming H&A)


概要

特別版DVD買ってしまいました。Filimig(メイキング)入り。
先日、友人の合同誕生日会でプレゼントをあげたところ、おかえしにっつってHMVの商品券を貰ったので、ちょっと高くて躊躇していたところ良い機会だということでこのDVDを買ってきました。いっしょに「トニー滝谷」も買ってしまった。こちらもメイキング入り。


以前、この映画のことを「自分の好きなものばかりがつまった美術館のようだ」と言っていたのですが、やっぱりそうでした。
メイキングも一気に観てしまったのですが、これがメイキングなのでしょうか。本編を観た後にこのメイキングを観て、より幸せになれる。素晴らしいメイキングムービーです。
これを監督した遠藤尚太郎さんという方が誰かと思って調べたらPFF2005で観客賞を獲った監督さんでした。その作品、是非観てみたいです。

映画の撮影って楽しそうだなぁ。憧れます。
私事ですが、以前一緒に仕事をさせて頂いたカメラマンさんと酒を飲んでいたときに「今回、学芸会みたいで楽しかったよ」と言われ、バカにされた様な気持ちになりちょっとカチンと来てしまったのですが、このメイキングを観て多分、そんな意味じゃなかったんだと思います。
できることなら学芸会でいたい。
次の学芸会は近そうです。

「花とアリス」がどうも好きらしいぞと言う方はこちらもご覧ください。きっともっと好きになります。貸しますよ。

映画【シャイニング (THE SHINING)】

2006-06-18 02:16:04 | 映画
シャイニング (THE SHINING)
1980
スタンリー・キューブリック (Stanley Kubrick)


概要

何回観たか分からないんですけど、また見てしまいました。
怖いですね、この映画。
何が怖いって、あるはずのないモノ、そう見えるはずのないモノがちゃんと映像として映ってしまっているのが怖い。
普通に生活していて「うわ、コワ!」ってなるのが私の場合は無茶苦茶整ったシチュエーションだったり、なんかのタイミングでそう見えてしまったりする瞬間です。
それがとても美しいと感じることもあるのですが、たいがい怖い。自然じゃない。それが自然物(山とか岩とか地形とか)だったりするともっと怖い。とてつもない、かなわない力がそこにあると感じてしまいます。
都庁程度じゃ何とも思いませんが。

キューブリックのシンメトリック手法なんですが、たまたま私がそう言うモノに怖さを感じるからかもしれません。
でも、見方が全く違う「2001年宇宙の旅」はそれはもう綺麗で好きです。あそこまで人工で無機質なら好きなんだと思います。古くて整ったモノってなんだか人智を越えた力が働きすぎている気がします。あ、今気付いたんですけど、その古いモノすら無機的に見えてしまうところが怖いのかも知れません。無機的な、システマチックな宇宙人っぽい感じ。おまえの事なんて何も気にしてないんだよ、という感覚。分かっていただけます?

このお話の舞台となっている巨大ホテル。こんな立派なホテルに泊まったことはないのですが、なんというかホテルがあまり好きではありません。都合でどうしても宿泊することになる事もあるのですが、そんなときはとにかく乱します。いろんな所に自分の服を掛けたり、椅子の向きを変えたりして。怖いんですもの。だから自分で旅行に行くときは殆ど旅館。旅館は入った瞬間から木目とかシミとか変な置物とかでなんだかごちゃっとしていて好きです。どうでも良いですね。スミマセン。

映画【野獣死すべし】

2006-06-16 01:14:00 | 映画
野獣死すべし
1980
村川透


概要

カッコイイハードボイルドじゃない。もの凄くかっこわるい。
進展する毎に松田優作のドーランが濃くなっていく。後半では腕と顔の色が全く合ってい無けれども、青白くなっていく様の精神が迫ってくる。

さんざんこのブログで「人が死ぬ映画は嫌い」なんてことを言っているのですが、たまに例外があります。
この映画も例外です。
ばんばん殺していくのですが、ストーリーが全て殺す理由なんじゃないでしょうか。

ただ人が狂って人を殺しまくる映画じゃないです。
終盤は「地獄の黙示録」の様な展開ですが、優作先生のキレっぷりが尋常じゃない。形相に飲み込まれます。


昨今たまにニュースを聴けばどこかのガキが誰かを殺したようなニュースばかり。彼らに理由はあるのでしょうか。
まず、この映画を観てからにしろ。その上で自分が人を殺すことに相応した人間か考えてからにしろ。
そんな人間いませんけどね。

映画【春眠り世田谷】

2006-06-16 01:13:06 | 映画
春眠り世田谷
2001
山田英治


概要

恵比寿ツタヤにて大好きな俳優の大森南朋さんの主演映画の映画がレンタルされていました。この映画です。全く知りませんでした。
この映画自体はモロ自主制作の青春をやや過ぎたモラトリアムムービー。やや耳が痛い。それ故に好きなところがたくさんあります。
こういった映像を少人数で制作できる(エンドロールを見る限りスタッフは10人程度)、その映画に良い役者が出るということが嬉しいです。

ところでこの主演の大森南朋さん。どのタイミングで好きになったのか分かりません。最も印象に残っているのが何年か前にオンエアされていたNTT DoCoMoのCF。

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中堅企業に勤めるサラリーマンとおぼしき20代後半の男性。
ある日、社員食堂で見かけた女性に興味を持つ。同僚(真木蔵人)が彼女の事を知っている「かわいいだろ、彼女。でもな・・・」どうやら彼女は聴覚障害者とのこと。しかし彼は果敢にトライ。
その後、彼と彼女の幸せな季節が巡る。そのハブとなる携帯メール。
ある冬の日、些細なことから喧嘩をしてしまう。そしてうっかり彼女の耳のことに触れてしまう。
自分の非を棚に上げ同僚と酒を飲んでいると彼女からのメール。そのメールの一言に彼女への想いと自分の浅はかさと彼女への想いから突然席を立つ。それをほほえましい顔で見る同僚「恋だ」
必死で駆け込むホーム。向き合う二人。
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素晴らしいCFだった。もう一度見たいのですが、Webでの配信が終わってしまった様で、見ることができません。どうにかして観られないものでしょうか。

映画【いぬのえいが】

2006-06-06 02:59:04 | 映画
いぬのえいが
2004
犬童一心
黒田秀樹
黒田昌郎
佐藤信介
永井聡
祢津哲久
真田敦


オムニバスです。多分、体裁はそんな感じの構成になっています。
大分前にDVD化されたのですが、随分見ていませんでした。犬童監督が入っているので、いずれ観ようとは思っていたのですが。
前半では"あ、これは犬好きの為になんとくなく作ったマーケティング映画なんだな"と思っていたところ、最終話で号泣。

この最終話で、全てを語っています。と、思います。
ここから全て真田敦監督の最終話についてのお話です。
この映画を観た方で"あんなもん、バカじゃねぇの?"と言う方がいたら、かわいそうと思うよりも、自分がこういう気持ちを持っていることに感謝してしまう。

そして、ここからは私の"犬想い出"です。どうでも良いお話です。
ガキのころの想いというか、こうであったら良かったなという妄想がばんばん。


私のうちでもガキの頃犬を飼っていました。ちなみに、今でも実家では私が上京した直後から柴犬を飼っています。

うちで犬を飼っていたのは私が物心付く前から。
その犬に私が膝を噛まれ保健所が来て、狂犬病だと言うことが判明し引き取られていきました。
しかし懲りずに姉と共に"犬を飼いたい"とオヤジに無理矢理頼んでその1年後くらいにどこかのペットショップに行き私に一番なついてきたヤツ(今度はちゃんとした血統書付きのシェットランドシープドッグ)を引き取り、連れて帰りました。確か、そのまま連れて帰りたいとだだをこねて連れて帰った気がします。
名前は"ジョリー"にしました。当時アニメでやっていた"名犬ジョリー"から頂きました。

しかし、ジョリーは名犬どころかバカ丸出しでした。
シェットランドは普通耳が途中で折れ曲がっているのに何故か直立している。雄なのにいつまでたっても片足を上げてのおしっこができず、いつも中腰で雌のようにおしっこをする。車が横を通りすぎるたびに追いかけようとする(何度もはねられかけた)。無理矢理滑り台を滑らせたら腰を抜かして抱えて家まで抱えて帰る。変な草を食べて腹をこわして一週間入院する。"お手"と"おかわり"はできるが"伏せ"ができない。風呂が大嫌いで洗ってあげる度に大暴れで私までびしょ濡れ。偏食で半生タイプのドッグフードしか食べない(乾燥タイプと混ぜても丁寧に乾燥タイプは残す)猫になめられる。うんこを食べる。車に乗ると酔って吐く、そして吐いたものを食べる。階段が下りられない。おなかがすいたとき以外吠えない。
でも、毛並みは凄く綺麗。優しい目をしていた。

私が飼って貰いたくて無理矢理飼って貰ったジョリーの散歩も私は1日に一度くらいしか行っていませんでした。
でも、私が学校から帰ってくると、柵に手をかけて大喜びでしっぽを振って迎えてくれました。
それから10年。
高校2年生の雨ばかりが続く秋、ジョリーが調子がずっと良くない。獣医見せるとフィラリアにかかり余命は3ヶ月も無いと告げられました。
それからジョリーは熱が常に出ているらしく、雨の中小屋にも入らずずっと冷たい雨に身をさらしていました。どうにかしてさまそうとしていたのかも知れません。
また雨の続く日が続き、ジョリーは全く小屋に入らず、庭のなるべく隅っこに伏せたままでした。あのとき、母は"死ぬ時を見られたくないんだね"と。
ある日曜日"今日ジョリーは死ぬんだな"と朝起きて何となく分かった日。私は昼からパチンコに行っていました。なるべくジョリーをみていたくないから。その日、今までで一番の大勝ちでした。山積みのドル箱。それで分かりました。うちに帰ったらジョリーはもう死んでる。
玄関で母が泣いています。
変な体勢で横になっているジョリーがいます。
玄関を出て原チャリで近所の浜までなんだか分からない歌を叫びながら。
その私が叫んで向かった砂浜はこの映画のラストシーンのロケ地でした。


やっぱり、また犬が飼いたいです。