人生の意義を見いだせず、無為に日々を過ごす26歳の健太郎は
ふとしたきっかけから特攻隊員として同じく26歳で戦死した祖父宮部久蔵の生きざまを調べることになる
戦争の記憶が遠のく中、ようやく久蔵を知る戦友を探し当てた健太郎だったが...
「宮部の口癖は”死にたくない”
奴は海軍一の臆病者だった」
浴びせかけられた言葉に愕然とする
なんとか気を取り直し、何人もの戦友を訪ねるうちに久蔵の真実の姿が徐々に浮かび上がる
敗色濃厚な戦況、誰もが絶望し、死にはやる中
「家族の為に自分は生きて帰る」
強い信念と類まれな空戦能力で幾たびもの死地を切り抜ける久蔵は
戦友や部下のみならず、敵からも称賛される優秀なゼロ戦パイロットであったことを健太郎は確信した
勝算のない戦いの中、生きる意義を見いだし、特攻という狂気を拒絶し続けた久蔵が
なぜ自ら特攻に赴き、壮絶な死を遂げなければならなかったのか
驚愕のラストシーンに涙をこらえられませんでした
読み終わった後
以前、南太平洋上空で眺めた空を
学生の頃読んだ小説の一節とともに思い出しました
雲こそわが墓標 落暉よ碑銘を飾れ
「雲の墓標」 阿川弘之