折にふれて

季節の話題、写真など…。
音楽とともに、折にふれてあれこれ。

星はすばる

2020-09-22 | 星空の誘惑

「星がきれい...」

かのんの散歩から戻った家内が言う。

住宅街の中では家の明かりや街灯で

満足に星空は見えない。

それでも、その夜はよほど空が澄んでいるのか、

家内の言葉が気になって外に出てみることにした。

日付が変わるころ、なるべく光が少ない場所から

東の空を窺うと、暗い空にかすかに密集した星が見える。

「すばる」だ。

「すばる」...なんとも不思議な語感だがれっきとした日本語、いや「やまとことば」だ。

清少納言が枕草子で

星は、すばる。彦星。夕づつ。「星と言えばすばる。彦星(アルタイル:わし座のα星)、宵の明星(金星)もいい。」

と綴っていることは有名。

語源は「統ばる(すばる)」でまとまっていること、

すなわち小さな星が集団をなしていることから

そう名付けられたようだ。

 

また、「すばる」はカタカナ名では「プレアデス星団」といい、

ギリシア神話に由来する。

月の女神アルテミスに使えたプレアデス7人姉妹のことで

肉眼で見える主要な星には7人の名前がそれぞれ付けられている。

神話では7人の姉妹はオリオンに追いかけられる役回り。

それで、冬になると

「すばる」の後を追いかけてオリオン座も東の空に現れる。

 

さらにもうひとつ、「すばる」には名前がある。

名前というか「M45」という記号がそれだ。

18世紀のフランスの天文学者シャルル・メシエによるもので

メシエは星雲や星団、銀河を分類して(『メシエカタログ』という)

それぞれに自身の頭文字「M」で始まる記号をつけた。

その45番目が「すばる」というわけだ。

ちなみに「M1」は「すばる」同様、おうし座にある「カニ星雲」と呼ばれる天体だ。

天体といっても星ではない。

千年前に超新星爆発により生まれた星の残骸、それが星雲状に見える。

実はこの話は有名で、当時の中国や日本でもいくつかの文献に

突如、金星のように明るい星が現れたと記されてあるようだ。

残念ながら今ではその輝きを失い、肉眼で「M1」を探すことは難しい。

次いで...を続けると、

誰もが知っている銀河の代表格アンドロメダ星雲は「M31」。

さらに、ウルトラマンの生まれ故郷は「M78」星雲である。

話が怪しくなってきたが、「M78」は実在する。

ウルトラマンの話はともかくオリオン座の三ツ星の近くにあるのだ。

 

さて、ひさしぶりに(...というか何十年ぶりに)

「すばる」を間近に眺めた感動から

昔覚えたウンチクを思いつくままに書き連ねた。

けれども、その感動とは裏腹に自分が持つカメラ機材では

くだんの写真が限界とも思い知らされた。

いよいよ空が澄み渡り、役者揃いの冬の星座が天にかかる。

それを前にカメラ散財の悩ましさは募るばかりだ。

 

 

 

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星空の誘惑

2020-09-01 | 星空の誘惑

越前岬からの話題が続く。

 

10日前にここで会ったカメラマンから聞いた話だが...

越前岬の灯台の明かりはぐるっと岬の斜面も照らすそうだ。

灯台が立つ場所は標高にして120mほど。

一方で私とそのカメラマンが立っていた場所は150mを超える。

その高低差ゆえに灯台の明かりは足元の斜面を回りながら照らし

遊歩道や草むらが「走馬灯」のように浮かぶのだ、と。

ところがその時は興味を持ちながらも

帰りを急ぐあまりそのまま立ち去ってしまった。

その後、時間がたつほどにその幻想的な光景が気になってしようがない。

さらにもうひとつ。

これだけ開けた空ならきっと夜空も期待できるはずだから

灯台の明かりと夜空はどんな風景を作り出すのだろうか...と

興味が尽きないのだ。

それで、待ちに待った一週間後。

現地の好天を確かめた上で

迷うことなくロケハンに出かけたという次第だ。

 

   福井県越前岬 2020.08.29  07:24pm  Sony α7S2  FE2.8 16-35 GM (16㎜ ,f/2.8,0.6sec,ISO3200) 

 

陽が落ちて一時間後。

灯台が岬の斜面を照らし始めると

薄明かりの空にはひとつふたつと星がきらめきだす。

方位はほぼ西。

知っている星座は...と目を凝らすと

今にも水がこぼれそうな大きなひしゃくが見えた。

北斗七星だ。

 

子供の頃、星を眺めるのが好きだった。

父に買ってもらった天体望遠鏡とペンタックスで

夜空を撮り、そのネガは父が現像してくれた。

それが高じてカメラ、写真好きとなったのだが

思えばその頃以来の星空撮影だった。

当時覚えた星座や星の名前はほとんど忘れてしまっているが

図鑑を頼りにその日の写真に備忘として星座を書き込んでみた。

 

  福井県越前岬 2020.08.29  07:48pm  Sony α7S2  FE2.8 16-35 GM (16㎜ ,f/5.6,8sec,ISO3200) 

 

暗い星座が多い中、

目立つ星と言えば北斗七星と

「うしかい座」のアルクトゥルスくらいだったが

偶然写りこんだ流れ星が地味な星空に

少しばかりの花を添えてくれた。

後で調べてみたのだが...。

秋が深まった深夜、銀河が西の空にかかり

「白鳥座」や「わし座」といったよく知られた星座が現れるようだ。

 

家から100キロ、二時間半の道のりは遠いが、

子供の頃、夢中になった夜空を

もう一度に眺めてみたいという気持ちは

その道のりを何とも思わないほど強くなっている。

「この年になって」と、自分ながらおかしくもあるが

それほど星空の誘惑は断ち切り難いのだ。

 

 

 

 

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