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八畳石

2011-10-18 23:06:49 | 名石・奇岩・怪岩
八畳石(はちじょういし)。別名:三つ石(みついし。3つに割れているため。)。
場所:静岡県沼津市柳沢。国道1号線「大塚」交差点の北、約3km。東名高速道路の高架を潜ると、「赤野観音」の案内板があるが、そちらに行かずに直進、すぐ。駐車スペースあり。
「八畳石」は、寛永12年(1635年)の洪水により東方の山腹から転落してきたとされる巨大な安山岩で、石の高さは約3m。上面は平らになっていて、約50㎡の広さがあるらしい(ということは、江戸間換算で約32畳分にもなる。)。この付近は「赤野観音」(「赤野山 広大寺」)の霊地で、臨済宗中興の祖である白隠禅師(1686~1768年)が少年時代の頃、この石の上で修行したと伝えられている。白隠禅師は現・沼津市原の生まれで、地元の偉人である。白隠禅師が本当にこの石の上で修行したのかどうかはわからないが、その後、多くの雲水がここで座禅を組んだことは確からしい。
ところで、この石の裏側には、直径約2mもの丸い大きな穴が開いている。これは、この石に棲んでいた法螺貝(ホラガイ)が抜け出した穴だといわれている。伝承によれば、昔、この石に巨大な法螺貝が棲みつき、食物を探して村に下りてきては畑を荒らしていた。ある夜、大嵐が来て、激しい雷雨となった明くる朝、村人が見てみると、この石から海に向かって一筋の跡が付いていた。村人は、法螺貝が自ら風雨を起こして、海に入ったのだろうと噂したという。
実は、巨岩から法螺貝が抜け出るという話は、他の場所にもあって、例えば、愛知県岡崎市の「真福寺」境内の崖にも法螺貝穴があるらしい。いろいろな奇談集を読むと、石の中に竜が棲んでいて、風雨や雷鳴を伴って石から抜け出て昇天するという話がよく出てくる。民俗学的には、法螺貝が石から抜け出るというのは、これと同じで、法螺貝は竜(=水神)と同類とみなされていたことを示すらしい。竜でなく、法螺貝というのは、穴が渦巻状であることはもちろんだが、どうやら修験者(山伏)の持つ法螺貝のイメージが関わっているらしく、この説話の伝承に修験者が関係していたことが考えられる。
因みに、この「八畳石」はどうやら、山腹から転げ落ちてきた後、しばらく川底にあって水流で丸く抉られ、それが土石流で更に下流に流された際に裏返しになったのではないか、とも推測されている。

ところで、近くにある「赤野観音堂」であるが、本尊の十一面観音像は行基作と伝わる(実際には11世紀頃の作らしい。)。元々の地名を「阿気野」といい、「文徳実録」に記載がある「阿氣大神」を祀った(859年?)ところという。今も「阿氣神社」なるものが残っていれば式外社ということになるが、残念ながら廃絶してしまったようだ。「赤野観音」は元々「阿氣大神」の本地仏だったと伝わっているとのこと。


沼津市のHPから(八畳石)

ミノル不動産さんのHPから(柳沢の八畳石)


写真1:「八畳石」。西側の道路から見下ろす。高橋川の渓谷にある。


写真2:西側から


写真3:北側から。奥にわずかに見えるのが、東名高速道路の高架。


写真4:裏側(東側)に大きな穴が開いている(ように見える)。この下には川が流れている。
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