Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

土筆(166)

2018-08-24 08:21:49 | 日記

 「違うって?」

じゃあ、何であの子はむくれてるのさ、泣いてまでいたんだよ、俺らが仲良く話していたからだろう。と、蜻蛉君も茜さんの声音に合わせて不満気に言い返しました。茜さんは驚きました。泣いてたの?あの子が?茜さんは滅多に蛍さんが人前で泣かない事を知っていました。もし彼女が泣いても、泣いている事を人に知られないようにしている事も知っていました。それで茜さんはもう1度蛍さんの方を注意深く見ると、確かに赤い目や頬に手で涙を擦った汚れが付いているのが認められました。

『なるほど、あの子泣いてたんだ。』

だからあの子すぐにこっちに来なかったんだ。茜さんには従妹の事情がそれとなく察しられるのでした。あの子が泣くなんて、何か余程悔しい事があったに違いない、そう彼女は思いました。

 そこで蜻蛉君の方に向き直った彼女は、何があったのか彼から探る事にしました。

「あんたあの子に何か言ったんじゃないの。」

何かするとか、いえ、『やはり何か言ったんだわ。あの子にこの子…』茜さんは蜻蛉君に事の次第を聞かなくても、大体の事情が予測できました。彼女は親戚だけに彼女の性質をよく知っていました。幼い頃から、蛍さんが何かされた場合、直接手や足が出る事を茜さんはよく知っていたのです。

『東雲兄さんなんて、未だにあの子の歯形が消えてないもの。』


アジやエビ、玉ねぎやトウモロコシ、そしてイモ天

2018-08-23 10:40:40 | 日記

 近年は海の物の天ぷらが好きになりました。某お寿司屋さんのアジの天ぷらは美味しいので、行くとよく頼みます。結構山盛りの天ぷらなので、メインのお寿司があまり食べられなくなります。それで、最近はアジの天ぷらか、お寿司の方か、食べたい方をその時の気分と相談して注文しています。

 エビもおいしいです。トウモロコシの天ぷらも大好きです。そして、やはりイモ天が大好きです。勿論カボチャも好きです。芋栗南京の言葉通りです。単品でも、複数合わせてかき揚げにしても、天ぷらは和のファーストフード並みに大好きです。でも天ぷらは食材によって高級料理ですね。懐石料理には欠かせない1品ですものね。


土筆(165)

2018-08-23 09:56:31 | 日記

 「私はてっきり…」

茜さんは投げる石のコースを図っている蜻蛉君に言いました。

「あの子は負けるのが嫌で機嫌が悪いんだと思ってたわ。私とあんたの仲が気になっていたなんてね。」

何だか茜さんには妙な気がします。『あのホーちゃんが、人の事をやっかむ様な事をするなんて…』、どうも蜻蛉君の言う事が彼女には腑に落ちないのです。そう怪訝に思い彼女が再び蛍さんの方を見ると、丁度蛍さんがこちらを向きました。

 蛍さんは濡れたまつ毛にぱっちりした瞳を見開き、スッキリとした顔つきをしていました。そして茜さんと目が合うとニコリと微笑みました。蛍さんにすると茜さんが心配してこちらを見たのだと思い、心配ないよと笑顔を返したつもりなのです。その何時も通りの蛍さんの笑顔を見た茜さんは確信しました。従妹は私達の事を気に病んでなんかいないと。

 「ホーちゃん、別に私達の事は怒ってないと思うわ。」

そう蜻蛉君に言うと、少なくとも従妹の私に対してはそうだ、と茜さんは思いました。

それに、と彼女は続けて蜻蛉君に言いました。

「あの子、誰かが目の前で仲良くしてても、今まで怒った事が無い子なのよ。」

ぼそっとした彼女の言い様には、自分の従妹に対して誤解された、あの子が可哀想だという様な、蜻蛉君の蛍さんへの決めつけに対しての批判が込められているのでした。


土筆(164)

2018-08-22 10:38:52 | 日記

 「えっ!、ホーちゃんが。」

茜さんは驚いて、思わずじろっと蛍さんを眺めました。茜さんにはこちらへ背を向けてそっぽを向いている蛍さんの姿しか目に入りませんでした。そこで『何故、ホーちゃんが彼女と…』似ているのだろうか?と疑問に思いました。容姿は勿論、お脳の方も似ているとは思えません、彼女は首を傾げました。そこでせっせと石を選ぶ蜻蛉君に尋ねてみます。

「ホーちゃんと、その、あんたのそれ、何とかさんとは何処が似ているの?」

ああと、蜻蛉君は答えます。

「茜と遊んでいる時、仲良く2人で話し込むと、俺らの側でむくれる所だよ。」 

えーっと茜さんは驚きました。「ホーちゃんが?むくれてるの?」そう言うと何だか彼女は不思議そうな顔をしました。茜さんの考えでは、蛍さんはゲームに負けそうなので、それが嫌で苛ついてぷりぷりしているのだと思っていたのでした。

 「ホーちゃんが、何で?」

「如何して私とあんたが仲良く話すとあの子がむくれるのかしら?」

茜さんにはその原因が分かりません。茜さんの頭にあるのも蛍さんと同様にこの遊び、ゲームの勝負の事でした。『蜻蛉君と私が話していると、何故蛍さんがむくれるのか?』茜さんには不思議な出来事でした。しかも、蜻蛉君のいうハニーさんもそうだというのです。

「あの子もむくれてたの?」

ゲームの勝ち負けのせいじゃなかったのかと、茜さんは初めて思い当たるのでした。茜さんは蜻蛉君と共にハ二―さんとも遊んだ経験があるのでした。


土筆(163)

2018-08-21 08:32:35 | 日記

 その後は涙を引っ込めようとして焦れば焦る程、当の涙は溢れ出て来て止まらないのでした。流石に蛍さんもこれにはげんなりしてしまいました。もう悲しくないのに、止めど無く涙だけが瞳から溢れて頬を伝い流れ出て行くのです。彼女は、蜻蛉君達の手前そうそう頬に手をやって涙を拭うという真似も出来ません。自分では如何にも出来ない内に、とうとう蜻蛉君が彼女の順番を急かしにやって来ました。

 「おい、ホーちゃん、いー加減に…」

そう言ったところで彼はハッ!としました。蛍さんの頬がぐっしょりと涙で濡れているのに気付いたのです。

「それ、涙だろう。ほっぺの濡れているやつ。」

深刻そうに蛍さんに向かってそう言うと、ここで漸く彼は彼女の今の状態を知るに至ったのでした。

 そうか、と蜻蛉君は感じ入りました。

『ホーちゃんは俺が好きなんだ。それで茜ちゃんと俺が仲良くしているのが嫌で泣き出したんだな。これが大人から聞いていた嫉妬というやつなんだ。』

自分が茜さんと散々仲の良い所を見せつけるので、彼女が茜さんに嫉妬して悲しくなり、その為に泣いたのだと彼は思ったのです。いつの世も、自分を好いてくれている女性の涙に男性は弱いものでした。こんなに小さな男の子でもそうなんですね。

 「いいよ、ホーちゃん、無理しなくても。」

そう言うと彼は、今度は如何にも紳士らしく、ここで休んでいるといいよと優しく蛍さんに声を掛け、にこにこして茜さんの元へと戻って来ました。「蛍の奴、ハニーと似たとこあるんだな。」彼は浮き浮きして茜さんに声を掛けました。