Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

土筆(149)

2018-08-03 08:44:38 | 日記

 お寺の境内には石碑があり、石碑の足元には遊び仲間の人数分の穴が開いていました。各自自分の穴を掘り、その自分の穴に向かって各々順番に小石を転がします。何回石を転がすかは最初に決めておき、皆が回数分投げ終わったら最後に穴に入っている石の数を数え、その数の多さを競うという遊びでした。勿論、数が多い人ほど上位勝者になります。人の穴に石を入れるとその穴の人の得点になり、自分に点が入らないどころか向こうに点を入れてあげるという結果になり、返って自分にとって損な結果になるのでした。

   昨日迄、石投げをする度にほぼ最下位になるという、悲惨な結果だった蛍さんはまだ誰も遊びに来ていない境内に入ると、意を決した様に小石を拾い上げました。そうして不安を打ち払うかのようにその石を穴に向かって転がし投げました。

 そんな2、3日の内に、何度か石を投じる事で彼女は力の入れ具合、転がす方向、地面の具合等から、転がす石の形の選別に至るまで、段々とこの遊びの要領を得て行きました。この間、娘の沈んだ様子を心配した父が自ら様子を見に来てあれこれと助言したり、遊び仲間が遊ぶ内にそれとなくヒントをくれたり、父に頼まれたらしい子がアドバイスしてくれたりと、果ては母まで見に来るという有様に、黙々と練習に励んでいた当の蛍さんは驚くのでした。

   彼女は遂に、穴に上手く小石を転がり込ませるコツを掴みました。彼女はこの遊びの練習を重ねる事で、遊びの腕を相当に上げる事が出来ました。そんな彼女の練習が始まってから1週間程した後の事です。前日の石投げで、彼女は皆の中でも上々の成績を収める事が出来ました。圧倒的な勝利といっても過言ではない程の出来でした。その日の運も彼女に味方してくれたようでした。その為彼女はその日意気揚々と帰宅して、終日気分良く過越し、翌日は、いつもの遊び時間に少し遅れるくらいで境内へやって来ました。山門を入り、ブランコの置いてある横へ来ると、もう遊び仲間である従姉の茜さんとご近所の蜻蛉君が先に来て佇んでいました。