Jun日記(さと さとみの世界)

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土筆(166)

2018-08-24 08:21:49 | 日記

 「違うって?」

じゃあ、何であの子はむくれてるのさ、泣いてまでいたんだよ、俺らが仲良く話していたからだろう。と、蜻蛉君も茜さんの声音に合わせて不満気に言い返しました。茜さんは驚きました。泣いてたの?あの子が?茜さんは滅多に蛍さんが人前で泣かない事を知っていました。もし彼女が泣いても、泣いている事を人に知られないようにしている事も知っていました。それで茜さんはもう1度蛍さんの方を注意深く見ると、確かに赤い目や頬に手で涙を擦った汚れが付いているのが認められました。

『なるほど、あの子泣いてたんだ。』

だからあの子すぐにこっちに来なかったんだ。茜さんには従妹の事情がそれとなく察しられるのでした。あの子が泣くなんて、何か余程悔しい事があったに違いない、そう彼女は思いました。

 そこで蜻蛉君の方に向き直った彼女は、何があったのか彼から探る事にしました。

「あんたあの子に何か言ったんじゃないの。」

何かするとか、いえ、『やはり何か言ったんだわ。あの子にこの子…』茜さんは蜻蛉君に事の次第を聞かなくても、大体の事情が予測できました。彼女は親戚だけに彼女の性質をよく知っていました。幼い頃から、蛍さんが何かされた場合、直接手や足が出る事を茜さんはよく知っていたのです。

『東雲兄さんなんて、未だにあの子の歯形が消えてないもの。』


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