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富山県情報公開審査会 答申第5号 地域警察の運営に関する公文書

2004年12月24日 | 行政文書該当性/文書の特定/理由付記
答申第5号
平成16年12月24日

富山県公安委員会 殿

富山県情報公開審査会
会 長 吉 原 節 夫

富山県情報公開条例第19条の規定に基づく諮問について(答申)

平成15年6月4日付け富公委第31号による下記の諮問について、別紙のとおり答申します。


地域警察の運営に関する公文書の非開示決定処分に対する審査請求に係る諮問

別 紙
答 申


第1 審査会の結論
富山県警察本部長(以下「実施機関」という。)は、「富山県警察における巡回連絡の実施基準が分かる文書」を開示することが適当である。

第2 審査請求の経過
1 開示請求
平成15年5月12日、審査請求人は、富山県情報公開条例(平成13年富山県条例第38号。以下「条例」という。)第5条の規定により、実施機関に対し、「富山県警察における巡回連絡の実施基準が判る文書」の開示を請求した。

2 開示決定等
(1)平成15年5月14日、実施機関は上記の請求に対し、「富山県警察の地域警察の運営に関する訓令」及び「富山県警察の地域警察の運営に関する訓令の運用について」(以下「本件公文書」という。)を特定した上で、本件公文書が条例の施行日前に実施機関の職員が作成した公文書であることから、条例附則第2項第2号の規定により開示請求の対象外であることを理由とする非開示決定処分を行い、審査請求人に通知した。

(2)平成15年5月23日、審査請求人は、本件非開示決定処分を不服として、行政不服審査法(昭和37年法律第160号)第5条の規定により、富山県公安委員会(以下「諮問実施機関」という。)に対し、審査請求を行った。

(3)平成15年6月4日、諮問実施機関は、本件非開示決定処分に係る審査請求について、条例第19条の規定に基づき、富山県情報公開審査会(以下「本審査会」という。)に諮問した。

第3 審査請求の理由
「審査請求書」、「非開示理由説明書に対する意見書」及び意見陳述において、審査請求人が主張している審査請求の理由は、概ね次のとおりである。
本件公文書は、現在も効力を持ち、日々の職務に使用されている文書であることから、開示されるのが当然である。また、実施機関は対象公文書が条例施行日前に作成されたことのみを理由として非開示決定を行ったが、非開示とするには捜査上の機密に属する等の理由が必要であり、実施機関の決定は、情報公開の総合的な推進を図りもって県民の理解と信頼の下に県民参加の公正で開かれた県政を推進することを目的として定めた条例第1条の規定に反する。

第4 実施機関の主張
「非開示理由説明書」及び意見陳述において、実施機関が主張している非開示の理由は、概ね次のとおりである。
条例附則第2項第2号は、条例の施行日(平成14年4月1日)前に実施機関(議会、公安委員会及び警察本部長に限る。)の職員が作成し、又は取得した公文書については、条例の第2章(公文書の開示)及び第3章(不服申立て等)の規定は適用しない旨規定されている。
本件公文書は、いずれも条例施行日前の平成13年5月29日付けで実施機関の職員が作成した公文書であり、条例附則第2項第2号の規定により条例第2章及び第3章の適用が除外されている公文書に該当することから非開示としたところである。

第5 審査会の判断
1 争点
本件公文書は、実施機関の職員が職務上作成した文書であって、当該実施機関の職員が組織的に用いるものとして、当該実施機関が保有しているものであり、公文書に該当することは明らかである。そこで、本件公文書が条例施行日前に取得し、又は作成されたものであるかどうか検討する。
また、併せて条例の趣旨等に照らし、非開示決定が妥当かどうか検討する。

2 条例附則第2項の該当性及び非開示決定の妥当性の検討について
条例附則第2項は、「次に掲げる公文書については、この条例による改正後の富山県情報公開条例第2章及び第3章の規定は、適用しない。」と定め、さらに同項第2号には、対象となる公文書の一つとして「施行日前に実施機関(議会、公安委員会及び警察本部長に限る。)の職員が作成し、又は取得した公文書」と定めている。
本審査会において本件公文書の提出を諮問実施機関から受けて確認したところ、本件公文書のうち「富山県警察の地域警察の運営に関する訓令」は平成5年10月13日に制定され、その後平成6年9月30日、平成7年3月22日、平成8年3月18日、平成10年3月17日、平成12年5月10日及び平成13年5月29日付けで一部改正が行われており、その後改正は行われていないことから、平成13年5月29日に作成された公文書と認められる。また、本件公文書のうち「富山県警察の地域警察の運営に関する訓令の運用について」は、平成13年5月29日付けで施行され、その後改正は行われていないことから、平成13年5月29日に作成された公文書と認められる。

よって、本件公文書はいずれも、平成14年4月1日前に作成され又は取得された公文書と認められ、条例を形式的に解釈すると条例附則第2項第2号の公文書に該当するものと考えられる。
しかしながら、本件公文書は、訓令等として現在も効力を持ち、富山県警察の地域警察の組織、任務、勤務制、活動等の必要事項について規定し、日々の地域警察の運営を規律しているものである。
訓令等については、富山県警察においても県警察が保有する訓令等を積極的に公表し、県民の理解と協力のもとに警察行政を円滑に運営することを目的として「富山県警察の訓令等の公表について(例規通達)」を策定し、その中で、県警察の施策を示すものであって県民生活に直接かかわる警察活動に関する訓令等や県民の関心が高い訓令等は、平成14年3月31日以前に制定されたものであっても効力を有する場合には公表するよう努めるものとする旨規定しているところ、本件公文書はこの例規通達でいう公表する訓令等に該当するものと思われる。こうしたことは他の都道府県警察において、本件公文書と同種の訓令等について県民生活に直接かかわるあるいは県民生活に密接にかかわる訓令等であるという理由から公表しているところもあることからも窺える。ちなみに、知事が定める訓令については、すべて富山県報に登載して公表することとされており、広く県民が知り得るものとなっている。
また、本審査会が実施機関に対し、本件公文書を公にすることによる具体的な支障はあるのか確認したところ、「仮に条例の施行日以後に本件対象公文書が作成されていた場合には、条例第7条各号に規定する非開示情報に該当する記録はなされていないものと判断することになる。」旨の回答を得ている。
以上のように、本件公文書が現在もなお効力を有しており、日々の地域警察の運営について規律していること、実施機関が自ら定める公表基準に照らしても公表すべきものと考えられることという特殊な事情があり、さらに、仮に条例の施行日以後に本件公文書が作成されていた場合には条例第7条各号に規定する非開示情報を含んでいないと実施機関において判断していることを考慮すると、本件公文書は、開示することが適当である。

3 結論
以上の理由から、「第1 審査会の結論」のとおり判断する。

第6 審査会の開催経過
本審査会の開催経過の概要は、別記のとおりである。

別 記
審査会の開催経過の概要
年 月 日内 容
平成15年 6月 4日諮問書を受理
平成15年 7月 9日
(第10回審査会)
諮問事案の概要説明
平成16年 6月22日諮問実施機関に非開示理由説明書の提出を依頼
平成16年 7月14日非開示理由説明書を受理
平成16年 7月22日審査請求人に非開示理由説明書を送付するとともに、これに対する意見書の提出を依頼
平成16年 8月10日審査請求人の意見書を受理
平成16年 9月 3日
(第20回審査会)
・実施機関の職員から非開示理由説明を聴取
・審査請求人から意見を聴取
・審議
平成16年10月19日
(第21回審査会)
審議
平成16年11月30日
(第22回審査会)
審議
平成16年12月24日
(第23回審査会)
答申


富山県情報公開審査会委員名簿
(五十音順)
氏 名現 職 等備 考
大 坪 健弁護士会長職務代理
河 田 稔北日本新聞社常務取締役
民 谷 千鶴子富山県婦人会副会長
濱 谷 元一郎富山県商工会議所連合会常任理事
吉 原 節 夫高岡法科大学学長会 長
米 田 育 代富山県地方労働委員会委員


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