情報公開制度について考える

情報公開審査会の答申などを集めて載せています。

新潟県情報公開審査会 答申第17号 新潟県国民健康保険診療報酬審査委員会委員名簿

2004年12月07日 | 個人に関する情報
答申

第1 審査会の結論
新潟県知事は、本件異議申立ての対象となった平成15年4月1日現在の新潟県国民健康保険診療報酬審査委員会委員名簿の委員の氏名が記載されている部分を公開すべきである。

第2 異議申立ての経緯
1 異議申立人から、新潟県知事(以下「実施機関」という。)に対し、新潟県情報公開条例(平成13年新潟県条例第57号。以下「条例」という。)第5条の規定に基づき、平成15年4月3日に「平成15年4月1日現在の国保連合会レセプト審査委員会委員の名簿」の公開の請求(以下「本件請求」という。)があった。

2 実施機関は、本件請求に対応する行政文書として、「平成15年4月1日現在の新潟県国民健康保険診療報酬審査委員会委員名簿」(以下「本件行政文書」という。)を特定した上で、本件行政文書に条例第7条第2号の規定に該当する情報が含まれていることを理由に、これらの情報が記録された部分を除いて行政文書の公開をする旨の決定(以下「本件処分」という。)を行い、平成15年4月17日、異議申立人に通知した。

3 異議申立人は、本件処分のうち、新潟県国民健康保険診療報酬審査委員会(以下「県審査委員会」という。)の委員の氏名について非公開とした部分(以下「本件非公開情報」という。)の取消しを求め、平成15年5月29日、行政不服審査法(昭和37年法律第160号)第4条の規定により、実施機関に対し異議申立てを行った。

4 実施機関は、利害関係人である新潟県国民健康保険団体連合会(以下「県国保連」又は「参加人」という。)に、行政不服審査法第48条において準用する行政不服審査法第24条第2項の規定により、平成15年12月25日、参加人として本件異議申立ての審理手続への参加を求めた。

第3 本件行政文書及び本件非公開情報について
1 国民健康保険診療報酬審査委員会(以下「審査委員会」という。)は、国民健康保険法(昭和33年法律第192号。以下「法」という。)第87条の規定により、国民健康保険団体連合会(以下「国保連」という。)に設置される機関であって、保険医療機関から国民健康保険の保険者である市町村等に対し請求された、国民健康保険加入者に係る診療報酬請求書の審査を行うための機関である。

2 審査委員会は、法第88条第1項の規定により、保険医及び保険薬剤師を代表する委員(保険医代表)、保険者を代表する委員(保険者代表)及び公益を代表する委員(公益代表)の三者で組織され、その委員は、同条第2項の規定により、都道府県知事が委嘱することとされている。
(以下略)


第4 異議申立人の主張の要旨
(略)


第5 実施機関の説明及び参加人の主張要旨
1 実施機関の説明要旨
実施機関が本件行政文書を部分公開とした理由は、おおむね次のとおりである。

(1) 審査委員会の性格
ア 審査委員会における審査の決定は、合議体である審査委員会によってなされるものであって、審査委員会の委員個人としてなされるものではない。ただし、審査そのものは、各審査委員会の委員が自分の担当する専門科目に係る診療報酬請求明細書の審査を行っている。

イ 審査は、診療報酬請求明細書の内容について、「健康保険法の規定による療養に要する費用の額の算定方法」(平成6年3月厚生省告示第54号)及び「保険医療機関及び保険医療養担当規則」(昭和32年厚生省令第15号)に照らし合わせ、主に、不必要な診療行為や算定できない項目等が請求されていないかどうかを審査確認し、診療報酬請求明細書の誤りや過剰請求を正すものである。また、それによって、診療報酬の請求が適正に行われることを目的としている。審査の結果によっては、医療機関に不利益となる場合もあるため、公平な審査を確保するため県国保連では、審査した委員名も含め審査決定の過程等は一切部外秘としている。

(2) 条例第7条第2号該当性
本件請求については、氏名等特定の個人が識別され、又は識別され得る部分を条例第7条第2号に該当するものとして非公開とした。
その具体的理由は、県審査委員会の委員の氏名を公開した場合、だれが審査したかが明らかとなり、審査結果に不満を持つ者によって、県審査委員会の委員個人の権利利益が害されることが予見されること、また、そうした予見のある中での本件行政文書の公開は、県審査委員会の委員に対するある種の圧力となりうるものであること、その結果として、審査事務の公正かつ厳正な遂行に支障が出るおそれもあるからである。

(3) 条例第7条第3号ア該当性
県国保連でも、不当な行為により、県審査委員会の委員個人やその家族の平穏な生活が損なわれた事例の発生があったこと、それにより審査業務の適正な遂行に支障を及ぼすことが懸念されたこと等から、県審査委員会の委員の氏名や審査決定の過程を非公開としている。したがって、本件行政文書の公開は、条例第7条第3号ア「公にすることにより、当該法人等又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの」に該当することともなる。

(4) 厚生省通知1について
厚生省通知1は、「(略)第一次的審査を担当した審査員の氏名を公表するのは適当でないので、このような事態が生ずることのないよう、基金支部及び連合会を十分指導するとともに、関係者の理解が得られるように努められたい。」としている。
また、厚生労働省保険局は、「この通知文の趣旨からして、たとえ名簿であっても公開することにより、審査委員会の委員が特定できるような内容ならば、それは公開できないものである。」との見解を示している。

(5) 支払基金の見解
ア 国民健康保険以外の医療保険(健康保険、共済組合等)に係る診療報酬請求書の審査については、各都道府県に置かれている支払基金に審査機関として支払基金審査委員会が設けられ、審査に当たっている。

イ 県支払基金に対して、本件異議申立人から平成15年7月1日付けで、「平成15年7月1日現在の県支払基金審査委員会委員名簿」の開示請求があり、県支払基金は、本件異議申立人に対し、同年7月29日付けで、委員名簿を開示しない旨の決定を行った。

ウ それによると不開示とした理由は、「審査委員名簿はこれを開示することにより合議体である審査委員会における審査委員の率直な意見交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがあり、公的な診療報酬請求書の審査という事務の性質上、その事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあることから、独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律(平成13年法律第140号)第5条第4号により不開示とします。」とのことである。

エ 支払基金は開示できないという見解であり、また、委員名簿の公開は明らかに国の指導に反することになる。国保連と支払基金は、両者とも診療報酬請求書の審査を行う機関であり、業務内容に相違はなく、請求先の保険が違うということである。よって、支払基金審査委員会委員名簿の開示請求に対し、名簿を不開示とした支払基金と異なる対応を実施機関が行った場合、関係者・関係機関に混乱を招くおそれがあるだけでなく、支払基金の考えを否定することになり、実施機関と県支払基金との信頼関係を著しく損なうことにもなる。

(6) 異議申立人の主張に対する考え
ア 県審査委員会の委員の選任について
(ア) 異議申立人の「審査委員は、5期10年、70歳を超えて就任しない方針が守られているかどうか、委員の氏名が明らかにならなければこれらの目的は果たせない。」と主張することについては、平成12年11月27日付け保険発第193号(都道府県民生主管部(局)国民健康保険主管課(部)長あて厚生省保険局国民健康保険課長、医療課長連名通知)「審査委員の選任について」(以下「厚生省通知2」という。)を根拠にしているものと思われるが、これは通知文にも記載されているように、飽くまで「原則」ということである。

(イ) また、「審査委員は、現に保険医療機関に勤務し、保険医療に従事する医師であるかどうか」と主張することについては、審査委員会の委員は、保険医代表、保険者代表及び公益代表の三者から構成されている。このうち保険医代表及び保険者代表については、法第88条第3項の規定により関係団体の推薦によって委嘱することとされている。県から関係団体に、推薦を依頼するに当たっては、厚生省通知2を添付して、この趣旨を踏まえた上で、最適任者を推薦していただいている。
なお、公益代表については、制度上、推薦は要しないとされているが、審査委員は毎月大量の書類を審査するため、その時間がとれる人なのかどうかということや、審査を行うに見合うだけの知識や経験を兼ね備えている人なのかどうかということを十分に考慮しなければならず、実施機関がどの医師、薬剤師が適任なのかを独自で判断することは困難なため、関係団体の意見を参考にして委嘱している。

(ウ) したがって、県審査委員会の委員として最も重要なのは、「最適任者」であるかどうかということである。結果として、県審査委員会の委員の中には、厚生省通知2の示す年数、年齢などの原則に適合しない委員も存在するが、実施機関としては、関係団体の判断を尊重し、関係団体が「最適任者」として推薦してきた人を委嘱しており、これを妥当なものと考えている。

イ 他の都道府県における情報公開について
(ア) 異議申立書によると、「他の都道府県では、審査委員会の委員の氏名が開示されているとしている」が、実施機関の調査結果では、当県以外の都道府県で、審査委員会委員名簿の情報公開請求が、これまでにあったところは埼玉県のみである。

(イ) 埼玉県は、審査委員会の名簿の情報公開請求に当たり、氏名を公開した。
しかし、この決定については、二つの疑問点がある。一つは、厚生省通知1の存在を確認していたのかということ。もう一つは、埼玉県の国保連や埼玉県の支払基金と、公開することの具体的な問題点について、どこまで確認と調整を行ったのかということである。

(ウ) 埼玉県に確認したところ、決定当時の詳しい検討内容は分からないとの回答であったが、国の通知についていえば、氏名の公開は明らかに国の通知に反することになるため、国の通知の存在を確認していなかった可能性が高いと考えられる。

(エ) また、各都道府県の国保連との調整でいえば、前述のとおり、都道府県知事は審査委員会の委員の委嘱を行うが、実際、審査業務を行っているのは保険者である市町村等ではなく、国保連である。よって、名簿の公開に当たっては、公開することの具体的な問題点を把握している各都道府県の国保連の意向を踏まえて判断することが必要であり、各都道府県独自の判断により、各都道府県の国保連における診療報酬請求書審査事務に支障を及ぼしてはならないものと考える。また、支払基金は、委員名簿の各欄に記載された情報のすべてを不開示という判断を示している。これらのことがきちんと確認された上で、公開の判断を行ったのかどうか、疑問を抱かざるを得ない。
なお、長野県では、情報公開請求によるものではないが、審査委員会の委員の名簿を公開している。この場合においても、埼玉県の場合と全く同じ疑問が存在する。

ウ 県審査委員会の委員の県医師会会員名簿への掲載について
(ア) 県医師会が、会員向けに作成している「新潟県医師会会員名簿」において、県審査委員会及び県支払基金審査委員会の委員名を載せている。このため、この会員名簿に記載されている範囲において委員名を知ることができる状況にあり、実際、過去に審査結果に不満を持つ保険医から、直接県審査委員会の委員に対し、脅迫に近いような電話がかかってきた事例が発生している。こうした事実から、本件行政文書の公開により、委員やその家族等の関係者に、同様の被害が発生することは十分に予見されることである。なお、県医師会の会員名簿に記載されるのは、県審査委員会の委員のうち医師である委員であって、県医師会の会員であるものの氏名等であり、歯科医師又は薬剤師である委員の氏名は載っていない。

(イ) その中にあって、実施機関が本件行政文書の公開を行うことは、まずそのこと自体が、県審査委員会の委員が公正かつ厳正な審査を行うことに対しての無形の圧力・障害となり得るものである。また、実施機関が本件行政文書を公開し、その公開後、審査委員やその家族等の関係者が、同様、若しくは深刻な被害にあった場合や、そのような被害が起こったことにより審査業務の遂行に支障が生じるような被害が予見される中で、国の指導や県国保連等の方針に反してまでも本件行政文書を公開した県を、県審査委員会の委員又は県国保連が訴える事態も起こり得る。

(ウ) 「新潟県医師会会員名簿」については、県医師会に対し、国、県、県国保連及び県支払基金の考えを説明し、次回の名簿の作成に当たっては、委員の氏名を載せないように、県国保連等と連携して働きかけていく。

2 参加人の主張要旨
参加人の主張は、おおむね次のとおりである。

県審査委員会の審査によって、請求額の減額査定が行われた場合には、診療報酬支払請求を行った保険医又は保険医療機関が投下した費用の回収が不可能となる不利益をもたらすこととなる。そのため、保険医又は保険医療機関が査定に不服がある場合には、再審査請求ができることになっているが、この再審査の結果にも納得できない保険医又は保険医療機関の一部には、「査定が厳しすぎる。」といった苦情、「査定がおかしい。」といった非難、「査定した委員の名前を教えろ。」といった詰問を、県国保連に対して度々行う者もいる。また、中には不当な非難や嫌がらせを行う者もいる。
県国保連では、以上のような状況に加え、審査結果に不満を持つ者の不当な行為により、県審査委員会の委員個人やその家族の平穏な生活が損なわれた事例の発生があったこと、それにより審査業務の適正な遂行に支障を及ぼすことが懸念されたこと、また、国から審査委員会の委員の氏名を非公開とすべき旨の通知が出されていることなどから、県審査委員会の委員の氏名や審査決定の過程を非公開としている。

第6 審査会の判断理由
1 基本的な考え方
条例は、その第1条にあるように、県民の知る権利を尊重することが重要であることにかんがみ、行政文書の公開を請求する権利を明らかにすることにより、県政について県民に説明する責務が全うされるようにするとともに、県政に対する県民の理解と信頼を深め、県民の県政への参加を促進し、もって公正で開かれた県政を一層推進することを目的として制定されたものであり、審査会もこの県民の権利を十分尊重して条例を解釈し、判断しなければならない。
一方、この権利も無制限なものではなく、請求された行政文書に情報が記録されている個人又は法人その他の団体の権利利益及び公益との調和を図る必要があるのであって、それが条例第7条各号において非公開情報として規定されているところである。
よって、審査会としては、非公開とされた情報が、実施機関の主張する非公開条項に該当するかどうかをその文理及び趣旨に従って判断することとする。
なお、異議申立人は、本件処分のうち、本件行政文書の「現役職名」、「郵便番号」及び「住所」の各欄の記載の非公開について争っていないので、当審査会としては、条例に規定する非公開情報に該当するかどうかの検討の対象とはしない。

2 条例第7条第2号及び第3号ア該当性
以下において、本件非公開情報が、実施機関の主張する条例第7条第2号及び第3号アに該当するかどうかを検討する。

(1) 条例第7条第2号該当性
条例第7条第2号は、個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)であって、特定の個人が識別され、若しくは識別され得る情報が記録されている行政文書又は特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれのある情報が記録されている行政文書は、原則として非公開とすることを定めたものである。この規定は、個人のプライバシーを最大限に保護するため、本号ただし書で定めるものを除き、個人に関する情報は非公開とすることを定めたものと解される。
この考え方によれば、本件非公開情報は、特定の個人が識別され、又は識別され得る情報であることから、本号に該当するものと認められる。

(2) 条例第7条第2号ただし書該当性について
① 本件非公開情報は、「人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報」とは認められないことは明らかであることから、本号ただし書イには該当しない。
② 本件非公開情報について、審査委員会の委員は、都道府県知事が委嘱するものの、その身分は公務員ではないと認められることから、本号ただし書ウ及びエに該当しない。
③ 次に本件非公開情報が本号ただし書アの「法令等の規定により又は慣行として公にされ、又は公にすることが予定されている情報」に該当するかどうかについて検討する。
本号ただし書アは、個人に関する情報のうち、一般に公にされ、又は公にすることが予定されている情報については、これを公開しても個人のプライバシーを侵害するおそれはなく、非公開情報として保護する必要性に乏しいと考えられることから、本号の非公開情報から除外することとしたものと解される。
そこで、本件非公開情報が一般に公にされ、又は公にすることが予定されている情報であるかどうかについて検討する。
審査委員会の委員は、公務員には該当しないものの、法第88条第2項の規定により、都道府県知事が委嘱することとされており、その身分は公的性格が強いものと認められる。また、その職務の内容は、国民健康保険加入者に係る診療報酬請求書について、その審査を行い請求の適否等を公正中立に判断することであり、審査委員会の委員は、国民に対する適正かつ円滑な医療給付を実現する医療保険制度において極めて重要な職責を担っているといわざるを得ない。このような審査委員の職務の重要性及び医療保険制度の適正な運営の必要性を考慮すると、審査委員会の構成についても、その透明性の確保が不可欠であると考えられる。
そこで条例を見ると、第1条では、「県政に対する県民の理解と信頼を深め、県民の県政への参加を促進し、もって公正で開かれた県政を一層推進する」ことを情報公開制度の最終的な目的としており、また、第3条で、「実施機関は、行政文書の公開を請求する権利を十分尊重してこの条例を解釈し、運用しなければならない」として、行政文書の「原則公開」が条例の基本理念であることを明らかにしている。
これら条例の目的や基本理念を踏まえ、また、審査委員会の委員の職務の性格を考え合わせると、本件非公開情報は、「法令等の規定により又は慣行として公にされ、又は公にすることが予定されている情報」に該当するものというべきである。
したがって、本件非公開情報は、本号ただし書アに該当するものと認められる。
なお、実施機関は、非公開情報に該当することの判断の根拠として、都道府県知事が審査委員会の委員の委嘱を行う事務は法定受託事務とされているものから、厚生省通知1を引用するが、厚生省通知1は、昭和53年当時になされたものであり、地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律(平成11年法律第87号。以下「地方分権一括法」という。)が施行された平成12年4月1日以後においても、地方自治法(昭和22年法律第67号)第245条の9第1項の規定による基準(以下「処理基準」という。)とみなすことができるかどうかの判断が留保されるものである。
仮に厚生省通知1が地方分権一括法施行後も法定受託事務の処理基準とみなしうるものであったとしても、実施機関は、その趣旨を考慮して公開・非公開の判断をすべきである。しかしながら、厚生省通知1は、当県をはじめ全国各自治体及び国において情報公開制度が整えられるより以前に発されたものであり、行政運営の透明性及び国民に対する説明責任が強く求められる今日の状況において、十分に合理性を持つものであるとはいいがたい。この点に関しては、厚生省通知1の存在にもかかわらず、支払基金審査委員会名簿の不開示決定に対し、同審査委員の氏名を開示すべきであるとした国の情報公開審査会答申(平成16年10月5日(平成16年度(独情)答申20号)、平成16年10月5日(平成16年度(独情)答申21号))も参考とされるべきである。
したがって、厚生省通知1の内容は当審査会の判断を左右するものではない。

(3) 条例第7条第3号ア該当性
条例第7条第3号は、法人その他の団体及び事業を営む個人(以下これらを「法人等」という。)の正当な事業活動を保障するため、公にすることにより、法人等の正当な利益を害するおそれがある情報は、原則として非公開とすることを定めたものである。
この正当な利益を害するおそれがある情報とは、販売、営業等に関する情報であって、公にすることにより、法人等の事業活動に競争上不利益を与えるおそれのあるもの、又は公にすることにより、法人等の社会的評価、社会的信用、社会的活動の自由等が損なわれるおそれのあるものなどをいうものである。
以下、この考え方に基づき、本件非公開情報が本号アに該当するかどうかについて検討する。
実施機関及び参加人は、本件非公開情報は県国保連に関する情報であり、本件非公開情報を公にすることにより、審査委員会の委員個人やその家族に対しての非難や嫌がらせが懸念され、それにより審査業務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると主張する。
また、県国保連に対しても非難や嫌がらせが実際にあったことから、本件非公開情報を公にすることにより、審査業務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるとも主張する。
しかしながら、当審査会が実施機関及び参加人に対して事情聴取等の調査を行った結果によれば、診療報酬請求書の審査は、複数の委員により行われるものであり、診療報酬請求書の審査に委員個人の恣意的な判断が入るものではないことから、本件非公開情報を公にすることにより、委員個人に対する非難や嫌がらせを新たに生じさせ、また助長するものではないものと認められる。
また、県国保連に対する非難や嫌がらせが仮に行われたとしても、刑法(明治40年法律第45号)などに抵触するような行為であれば、当該法令の規定により、それらの行為を排除する措置が可能であるものと判断される。
さらに、他の都道府県における情報公開若しくは情報提供が行われている現況があること又は県医師会の名簿において委員であることの表記がなされている状況であるにもかかわらず、審査委員会の委員の氏名を公にしたことにより当該審査業務に支障が生じた事例は見られないことから、本件非公開情報は、公にすることにより、診療報酬請求書の審査業務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある情報には該当しない。
以上のことから、本件非公開情報は、条例第7条第2号アに該当するとともに、同条第3号アには該当しないものと認められる。

3 結論
以上の事実及び理由に基づき、当審査会は、「第1 審査会の結論」のとおり判断するものである。

第7 審査会の処理経過
本件異議申立てについての当審査会の処理経過は、別記のとおりである。

別記
(略)


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