横情審答申第757号
平成22年1月15日
横浜市長 林 文子 様
横浜市情報公開・個人情報保護審査会
会長 三辺 夏雄
横浜市の保有する情報の公開に関する条例第19条第1項の規定に基づく諮問について(答申)
平成21年6月10日道管第174号による次の諮問について、別紙のとおり答申します。
「40土第983号(昭和40年7月20日)」の非開示決定に対する異議申立てについての諮問
別 紙
答 申
1 審査会の結論
横浜市長が、「40土第983号(昭和40年7月20日)」を非開示とした決定は妥当であるが、開示請求時までに南関東防衛局から入手していた次の各文書を本件異議申立ての対象行政文書に含まれるものとして特定の上、開示・非開示の決定をすべきである。
(1) 横浜市長から横浜防衛施設局長あての回答文書(文書番号「40土第983号」)の写し
(2) 横浜防衛施設局長から横浜市長あての申請書の案文(送付文を含む。)の写し
(3) 特定地の道路占用に係る図面の写し
2 異議申立ての趣旨
本件異議申立ての趣旨は、「40土第983号(昭和40年7月20日)」(以下「本件申立文書」という。)の開示請求(以下「本件請求」という。)に対し、横浜市長(以下「実施機関」という。)が平成21年3月10日付で非開示とした決定(以下「本件処分」という。)の取消しを求めるというものである。
3 実施機関の非開示理由説明要旨
本件申立文書については、横浜市の保有する情報の公開に関する条例(平成12年2月横浜市条例第1号。以下「条例」という。)第2条第2項に規定する行政文書が存在しないため非開示としたものであって、その理由は次のように要約される。
(1) 本件申立文書は、その文書番号から昭和40年度に当時の土木局が作成した文書であると考えられるが、当時の文書件名簿に相当する書類が残っていないため、当該文書番号に該当する文書が実際にあったのか、また、何の文書であったのかを直接確認することはできない。しかし、本件請求の際に異議申立人(以下「申立人」という。)が話した内容から、申立人が求めているのは、中区と磯子区の区境にある米軍の接収地内道路の下水管のための道路占用に係る文書であり、横浜市から防衛施設庁横浜防衛施設局(現在の防衛省南関東防衛局。以下「南関東防衛局」という。)に送付した文書であることが分かった。南関東防衛局あての道路占用に関する文書であるとすると、道路法(昭和27年法律第180号)第35条により、国が道路占用する場合は、道路管理者と協議をすればよいとされていることから、本件申立文書は占用協議に関する文書と推測される。
(2) 土木局が当時保有していた道路占用関係についての文書は、現在、道路局道路部管理課(以下「管理課」という。)が保有しているため、管理課保有の行政文書を探したが、本件申立文書は存在しなかった。本件申立文書が国との道路占用協議に係る文書であるとすると、文書分類表では道路占用許可関係書類に該当する。当時の文書分類表では、道路占用に関する文書のうち、道路占用許可関係書類は第二種及び第三種に該当し、保存期間は10年又は5年保存となっており、本件申立文書については保存期間の経過により廃棄していることが推測される。
なお、申立人は「保存期間は接収解除になるまでである。即ち永久保存である。」と主張する。仮に、保存期間は接収解除になるまでである等の趣旨が本件申立文書に記載されているのであれば、本来、接収解除の日まで保存文書の期間延長等を行い、保存しておくべきであるといえるが、上記理由により、本件申立文書は現に存在しないため、条例第10条第2項に基づき、非開示とした。
4 申立人の本件処分に対する意見
申立人が、異議申立書、意見書及び意見陳述において主張している本件処分に対する意見は、次のように要約される。
(1) 本件処分の取消しを求める。
(2) 本件申立文書は昭和40年7月20日に横浜市が南関東防衛局に対して出した道路占用を許可した文書であり、当該文書には占用期間として「接収解除まで」と記載されている。したがって、本件申立文書の保存期間は接収解除になるまでである。即ち永久保存である。保存期間を永久保存にせず廃棄した理由を知りたい。
(3) 南関東防衛局が保有していた文書は入手したが、横浜市には文書がないと言われた。また、道路境界査定に関連して昨年から横浜市に対して様々な文書を探すよう求めているが対応してくれない。
(4) 実施機関によると道路占用の管理台帳すらない状態である。少なくとも占用許可の申請者、申請時期、占用に係る位置等を記録した台帳、地図があるべきである。本件申立文書は重要な文書であり、期限が来て廃棄したで済む問題ではない。住民無視であり、大変迷惑している。廃棄されていることを事実として受け止めて陳謝するべきである。また、廃棄したことは文書管理の方法に問題があるのだから、きちんと改善すべきである。
(5) 占用許可に係る埋設物はまだ撤去されておらず、図面ではその正確な位置すら分からない。将来における掘り起こしなどは誰が責任を負うのか。
(6) 横浜市は、未査定道路でありながら道路占用許可を出している。地境が不明のまま占用許可をだすことは違法行為ではないのか。また、占用に係る土地の周辺は区界も明確になっていない。
5 審査会の判断
(1) 本件申立文書について
ア 本件請求は、開示請求書に「40土第983号 昭和40年7月20日」と記載してなされたものである。本件請求の対象行政文書について実施機関は次のとおり説明している。
(ア) 昭和40年度に当時の土木局が作成した文書と考えられるが、文書の存否や内容は確認することができない。
(イ) 受付時の申立人の発言から、申立人が求めているのは特定地の道路占用(以下「本件占用」という。)に係る文書であって、市から南関東防衛局に送付した文書であった。そうだとすると、国との占用協議に関する文書と推測される。
イ しかし、開示請求書の記載や実施機関の説明だけでは当審査会としてどのような事実関係を前提として、どのような文書が請求されているか判断できないため、平成21年10月9日に実施機関の担当課である管理課から事情聴取を行ったところ次のとおり説明があった。
(ア) 本件異議申立て後に、南関東防衛局が保有していた文書の写し(以下「本件協議文書」という。)を磯子土木事務所から入手した。当該文書は、本件占用について横浜市長と横浜防衛施設局長との間でなされた道路法第35条に基づく協議(以下「本件協議」という。)に関する文書である。
(イ) 本件協議文書のうち、横浜市長から横浜防衛施設局長あての回答文書(以下「市長回答文書」という。)には、文書番号として「40土第983号」と記載されており、その内容は、横浜市長が横浜防衛施設局長に対して本件占用を認める旨を回答するものであった。また、本件協議文書には、市長回答文書の前提となる横浜防衛施設局長から横浜市長あての申請書の案文や本件占用に係る図面が含まれていた。
(ウ) このことから、昭和40年に横浜防衛施設局長からの申請を受けて横浜市長が本件占用を認めたことは事実であると推定できた。
ウ 以上のことを踏まえると、昭和40年当時に本件協議がなされたものと認められ、本件申立文書は、横浜市長が本件占用を認める旨を決定する際の起案文書であると解される。
(2) 本件申立文書の不存在について
ア 実施機関は、本件申立文書は保存年限経過により廃棄済みであり、保有していないと主張しているので、前述の事情聴取を行ったところ次のとおり説明があった。
(ア) 昭和40年度に道路占用に係る事務は現在の管理課で所管しており、昭和43年から各区の土木事務所に移管したので、本件申立文書も管理課で作成されたと考えられる。
(イ) 管理課が保有する行政文書を探索したが見つからなかった。土木事務所への移管時に文書も引き継いでいるので、本件占用箇所を所管する磯子土木事務所が保有する行政文書も探索したが見つからなかった。
(ウ) 昭和40年当時の文書分類表では、道路占用許可関係書類の保存期間は10年又は5年となっており、本件申立文書は保存期間経過により廃棄していると考えられる。昭和43年に道路占用に係る文書は土木事務所に引き継いでおり、土木事務所で道路占用に係る文書をファイルごと廃棄したと考えられる。
(エ) 市長回答文書では占用期間が「接収解除まで」とされているので、仮に本件申立文書の保存期間が10年であったとしてもその保存期間を延長して保存しておくべきであった。
(オ) 本件占用について、現在でも特定地には下水道管が埋められていることが確認されており、現在は使用されていないが、現在でも占用状態にあると考えている。ただし、本件申立文書以外に国の占用が継続していることを確認できる資料はない。
イ 当審査会は以上を踏まえ、次のように判断する。
(ア) 管理課が磯子土木事務所から入手した本件協議文書を見分したところ、文書番号、文書の内容及び本件占用の占用期間については実施機関の説明のとおりであった。また、文書の保存期間について昭和40年度の文書分類表を確認したところ、「道路占用許可関係書類」は10年保存、「道路継続占用関係書類」は5年保存とされていることが認められた。さらに、当時の横浜市文書取扱規程(昭和34年3月達第14号)第46条第1項では「・・・保存期間を経過したもの及び保存の必要がないと認めるに至ったものを廃棄しなければならない。」とされ、同条第3項では「・・・保存期間を経過した文書で、なお保存する必要があると認めるものについては、さらに年限を定めて保存することができる。」とされている。
(イ) これらの規定に照らすと、本件申立文書は5年又は10年保存であり、保存期間経過により廃棄されたと考えられるとする実施機関の説明は、一応は当時の規定に沿った取扱いであるともいえる。
(ウ) しかし、本件占用の期間は「接収解除まで」とされており、また、実施機関は、現在においても本件占用は継続していると認識しながらも、本件占用の存在を裏付ける行政文書は本件申立文書のほかには存在しないと説明している。このような事情を踏まえると、本来なら実施機関は、本件占用の現況を把握しておくためにも占用期間が満了する日まで本件申立文書を保存しておくべきであったと考えられるため、保存期間の経過により本件申立文書を廃棄したと考えられるとする実施機関の説明は当審査会にとって十分に納得できるものではない。
(エ) 実施機関が本件占用の特殊な事情を考慮せず、本件申立文書を廃棄してしまったと考えられることは遺憾ではあるが、事情聴取等を通じて本件申立文書の存在をうかがわせる事情は見当たらず、結局、本件申立文書を保有していないとする実施機関の説明は認めざるを得ない。
(3) 本件協議文書の取扱いについて
ア 当審査会の判断は(2)のとおりであるが、本件協議文書の取扱いについて次のとおり付言する。本件の審査過程でその存在が確認された本件協議文書は、本件申立文書と解した起案文書ではないが、市長回答文書は当該起案文書の施行文書の写しであり、また、その他の文書も本件協議に関する文書であって添付資料として本件申立文書の一部を構成していたと考えられ、その内容から本件申立文書の代替となり得る文書であると認められる。また、当審査会が申立人の意見陳述の際に確認したところ、申立人は、本件申立文書である起案文書が存在せず、その代替となり得る文書が存在する場合は、当該文書の開示を求める旨を主張していた。これらのことを踏まえると、本件協議文書の存在が確認された以上、当該文書は本件異議申立ての範囲に含まれるものとして取り扱うべきである。
したがって、仮に実施機関が本件請求時に本件協議文書を保有していたのであれば、当該文書を本件異議申立ての対象行政文書に含まれるものとして開示等の決定をすべきであるといえる。
イ そこで、当審査会で確認したところ、実施機関において米軍施設に関する連絡及び調整等を所管する都市経営局基地対策部基地対策課が本件請求時である平成21年2月24日までに南関東防衛局から本件協議文書を入手していたことが認められた。
ウ したがって、本件請求時には実施機関は本件協議文書を保有していたのであるから、本件協議文書についても本件異議申立ての対象行政文書に含まれるものとして開示等の決定をすべきである。
エ 通常、横浜市が対外的に送付した文書の写しを当該文書に係る事務を所管する部署以外の部署が入手することは考えにくいこともあり、本件処分を担当した管理課が本件協議文書の存在に気付かないまま本件処分を行ったことはやむを得ない面もあるが、本件申立文書が存在しない中で前記イのような事実が認められる以上、前記ウの判断を左右するものではない。
(4) 行政文書の管理について
なお、情報公開制度が機能するためには、行政文書が適切に管理されなければならないことはいうまでもない。行政文書は行政の意思決定の過程等を記録するものであり、本件占用のように事案の処理が完結していない段階で本件占用に係る行政文書を廃棄してしまうと、行政として当該事案の現況を把握できないのみならず、市民に対する説明責任を果たすことも困難となり、極めて不適切である。
実施機関におかれては、保存期間を経過した文書であっても事務処理上引き続き保存しておくべきものについては、当該文書の保存期間を延長し適切に文書管理を行うよう留意されたい。
(5) 結論
以上のとおり、実施機関が本件申立文書を存在しないとして非開示とした決定は妥当であるが、本件協議文書についてを本件異議申立ての対象行政文書に含まれるものとして特定の上、開示、非開示の決定をすべきである。
(第二部会)
委員 金子正史、委員 池田陽子、委員 高見沢 実
《 参 考 》
審査会の経過
平成22年1月15日
横浜市長 林 文子 様
横浜市情報公開・個人情報保護審査会
会長 三辺 夏雄
横浜市の保有する情報の公開に関する条例第19条第1項の規定に基づく諮問について(答申)
平成21年6月10日道管第174号による次の諮問について、別紙のとおり答申します。
「40土第983号(昭和40年7月20日)」の非開示決定に対する異議申立てについての諮問
別 紙
1 審査会の結論
横浜市長が、「40土第983号(昭和40年7月20日)」を非開示とした決定は妥当であるが、開示請求時までに南関東防衛局から入手していた次の各文書を本件異議申立ての対象行政文書に含まれるものとして特定の上、開示・非開示の決定をすべきである。
(1) 横浜市長から横浜防衛施設局長あての回答文書(文書番号「40土第983号」)の写し
(2) 横浜防衛施設局長から横浜市長あての申請書の案文(送付文を含む。)の写し
(3) 特定地の道路占用に係る図面の写し
2 異議申立ての趣旨
本件異議申立ての趣旨は、「40土第983号(昭和40年7月20日)」(以下「本件申立文書」という。)の開示請求(以下「本件請求」という。)に対し、横浜市長(以下「実施機関」という。)が平成21年3月10日付で非開示とした決定(以下「本件処分」という。)の取消しを求めるというものである。
3 実施機関の非開示理由説明要旨
本件申立文書については、横浜市の保有する情報の公開に関する条例(平成12年2月横浜市条例第1号。以下「条例」という。)第2条第2項に規定する行政文書が存在しないため非開示としたものであって、その理由は次のように要約される。
(1) 本件申立文書は、その文書番号から昭和40年度に当時の土木局が作成した文書であると考えられるが、当時の文書件名簿に相当する書類が残っていないため、当該文書番号に該当する文書が実際にあったのか、また、何の文書であったのかを直接確認することはできない。しかし、本件請求の際に異議申立人(以下「申立人」という。)が話した内容から、申立人が求めているのは、中区と磯子区の区境にある米軍の接収地内道路の下水管のための道路占用に係る文書であり、横浜市から防衛施設庁横浜防衛施設局(現在の防衛省南関東防衛局。以下「南関東防衛局」という。)に送付した文書であることが分かった。南関東防衛局あての道路占用に関する文書であるとすると、道路法(昭和27年法律第180号)第35条により、国が道路占用する場合は、道路管理者と協議をすればよいとされていることから、本件申立文書は占用協議に関する文書と推測される。
(2) 土木局が当時保有していた道路占用関係についての文書は、現在、道路局道路部管理課(以下「管理課」という。)が保有しているため、管理課保有の行政文書を探したが、本件申立文書は存在しなかった。本件申立文書が国との道路占用協議に係る文書であるとすると、文書分類表では道路占用許可関係書類に該当する。当時の文書分類表では、道路占用に関する文書のうち、道路占用許可関係書類は第二種及び第三種に該当し、保存期間は10年又は5年保存となっており、本件申立文書については保存期間の経過により廃棄していることが推測される。
なお、申立人は「保存期間は接収解除になるまでである。即ち永久保存である。」と主張する。仮に、保存期間は接収解除になるまでである等の趣旨が本件申立文書に記載されているのであれば、本来、接収解除の日まで保存文書の期間延長等を行い、保存しておくべきであるといえるが、上記理由により、本件申立文書は現に存在しないため、条例第10条第2項に基づき、非開示とした。
4 申立人の本件処分に対する意見
申立人が、異議申立書、意見書及び意見陳述において主張している本件処分に対する意見は、次のように要約される。
(1) 本件処分の取消しを求める。
(2) 本件申立文書は昭和40年7月20日に横浜市が南関東防衛局に対して出した道路占用を許可した文書であり、当該文書には占用期間として「接収解除まで」と記載されている。したがって、本件申立文書の保存期間は接収解除になるまでである。即ち永久保存である。保存期間を永久保存にせず廃棄した理由を知りたい。
(3) 南関東防衛局が保有していた文書は入手したが、横浜市には文書がないと言われた。また、道路境界査定に関連して昨年から横浜市に対して様々な文書を探すよう求めているが対応してくれない。
(4) 実施機関によると道路占用の管理台帳すらない状態である。少なくとも占用許可の申請者、申請時期、占用に係る位置等を記録した台帳、地図があるべきである。本件申立文書は重要な文書であり、期限が来て廃棄したで済む問題ではない。住民無視であり、大変迷惑している。廃棄されていることを事実として受け止めて陳謝するべきである。また、廃棄したことは文書管理の方法に問題があるのだから、きちんと改善すべきである。
(5) 占用許可に係る埋設物はまだ撤去されておらず、図面ではその正確な位置すら分からない。将来における掘り起こしなどは誰が責任を負うのか。
(6) 横浜市は、未査定道路でありながら道路占用許可を出している。地境が不明のまま占用許可をだすことは違法行為ではないのか。また、占用に係る土地の周辺は区界も明確になっていない。
5 審査会の判断
(1) 本件申立文書について
ア 本件請求は、開示請求書に「40土第983号 昭和40年7月20日」と記載してなされたものである。本件請求の対象行政文書について実施機関は次のとおり説明している。
(ア) 昭和40年度に当時の土木局が作成した文書と考えられるが、文書の存否や内容は確認することができない。
(イ) 受付時の申立人の発言から、申立人が求めているのは特定地の道路占用(以下「本件占用」という。)に係る文書であって、市から南関東防衛局に送付した文書であった。そうだとすると、国との占用協議に関する文書と推測される。
イ しかし、開示請求書の記載や実施機関の説明だけでは当審査会としてどのような事実関係を前提として、どのような文書が請求されているか判断できないため、平成21年10月9日に実施機関の担当課である管理課から事情聴取を行ったところ次のとおり説明があった。
(ア) 本件異議申立て後に、南関東防衛局が保有していた文書の写し(以下「本件協議文書」という。)を磯子土木事務所から入手した。当該文書は、本件占用について横浜市長と横浜防衛施設局長との間でなされた道路法第35条に基づく協議(以下「本件協議」という。)に関する文書である。
(イ) 本件協議文書のうち、横浜市長から横浜防衛施設局長あての回答文書(以下「市長回答文書」という。)には、文書番号として「40土第983号」と記載されており、その内容は、横浜市長が横浜防衛施設局長に対して本件占用を認める旨を回答するものであった。また、本件協議文書には、市長回答文書の前提となる横浜防衛施設局長から横浜市長あての申請書の案文や本件占用に係る図面が含まれていた。
(ウ) このことから、昭和40年に横浜防衛施設局長からの申請を受けて横浜市長が本件占用を認めたことは事実であると推定できた。
ウ 以上のことを踏まえると、昭和40年当時に本件協議がなされたものと認められ、本件申立文書は、横浜市長が本件占用を認める旨を決定する際の起案文書であると解される。
(2) 本件申立文書の不存在について
ア 実施機関は、本件申立文書は保存年限経過により廃棄済みであり、保有していないと主張しているので、前述の事情聴取を行ったところ次のとおり説明があった。
(ア) 昭和40年度に道路占用に係る事務は現在の管理課で所管しており、昭和43年から各区の土木事務所に移管したので、本件申立文書も管理課で作成されたと考えられる。
(イ) 管理課が保有する行政文書を探索したが見つからなかった。土木事務所への移管時に文書も引き継いでいるので、本件占用箇所を所管する磯子土木事務所が保有する行政文書も探索したが見つからなかった。
(ウ) 昭和40年当時の文書分類表では、道路占用許可関係書類の保存期間は10年又は5年となっており、本件申立文書は保存期間経過により廃棄していると考えられる。昭和43年に道路占用に係る文書は土木事務所に引き継いでおり、土木事務所で道路占用に係る文書をファイルごと廃棄したと考えられる。
(エ) 市長回答文書では占用期間が「接収解除まで」とされているので、仮に本件申立文書の保存期間が10年であったとしてもその保存期間を延長して保存しておくべきであった。
(オ) 本件占用について、現在でも特定地には下水道管が埋められていることが確認されており、現在は使用されていないが、現在でも占用状態にあると考えている。ただし、本件申立文書以外に国の占用が継続していることを確認できる資料はない。
イ 当審査会は以上を踏まえ、次のように判断する。
(ア) 管理課が磯子土木事務所から入手した本件協議文書を見分したところ、文書番号、文書の内容及び本件占用の占用期間については実施機関の説明のとおりであった。また、文書の保存期間について昭和40年度の文書分類表を確認したところ、「道路占用許可関係書類」は10年保存、「道路継続占用関係書類」は5年保存とされていることが認められた。さらに、当時の横浜市文書取扱規程(昭和34年3月達第14号)第46条第1項では「・・・保存期間を経過したもの及び保存の必要がないと認めるに至ったものを廃棄しなければならない。」とされ、同条第3項では「・・・保存期間を経過した文書で、なお保存する必要があると認めるものについては、さらに年限を定めて保存することができる。」とされている。
(イ) これらの規定に照らすと、本件申立文書は5年又は10年保存であり、保存期間経過により廃棄されたと考えられるとする実施機関の説明は、一応は当時の規定に沿った取扱いであるともいえる。
(ウ) しかし、本件占用の期間は「接収解除まで」とされており、また、実施機関は、現在においても本件占用は継続していると認識しながらも、本件占用の存在を裏付ける行政文書は本件申立文書のほかには存在しないと説明している。このような事情を踏まえると、本来なら実施機関は、本件占用の現況を把握しておくためにも占用期間が満了する日まで本件申立文書を保存しておくべきであったと考えられるため、保存期間の経過により本件申立文書を廃棄したと考えられるとする実施機関の説明は当審査会にとって十分に納得できるものではない。
(エ) 実施機関が本件占用の特殊な事情を考慮せず、本件申立文書を廃棄してしまったと考えられることは遺憾ではあるが、事情聴取等を通じて本件申立文書の存在をうかがわせる事情は見当たらず、結局、本件申立文書を保有していないとする実施機関の説明は認めざるを得ない。
(3) 本件協議文書の取扱いについて
ア 当審査会の判断は(2)のとおりであるが、本件協議文書の取扱いについて次のとおり付言する。本件の審査過程でその存在が確認された本件協議文書は、本件申立文書と解した起案文書ではないが、市長回答文書は当該起案文書の施行文書の写しであり、また、その他の文書も本件協議に関する文書であって添付資料として本件申立文書の一部を構成していたと考えられ、その内容から本件申立文書の代替となり得る文書であると認められる。また、当審査会が申立人の意見陳述の際に確認したところ、申立人は、本件申立文書である起案文書が存在せず、その代替となり得る文書が存在する場合は、当該文書の開示を求める旨を主張していた。これらのことを踏まえると、本件協議文書の存在が確認された以上、当該文書は本件異議申立ての範囲に含まれるものとして取り扱うべきである。
したがって、仮に実施機関が本件請求時に本件協議文書を保有していたのであれば、当該文書を本件異議申立ての対象行政文書に含まれるものとして開示等の決定をすべきであるといえる。
イ そこで、当審査会で確認したところ、実施機関において米軍施設に関する連絡及び調整等を所管する都市経営局基地対策部基地対策課が本件請求時である平成21年2月24日までに南関東防衛局から本件協議文書を入手していたことが認められた。
ウ したがって、本件請求時には実施機関は本件協議文書を保有していたのであるから、本件協議文書についても本件異議申立ての対象行政文書に含まれるものとして開示等の決定をすべきである。
エ 通常、横浜市が対外的に送付した文書の写しを当該文書に係る事務を所管する部署以外の部署が入手することは考えにくいこともあり、本件処分を担当した管理課が本件協議文書の存在に気付かないまま本件処分を行ったことはやむを得ない面もあるが、本件申立文書が存在しない中で前記イのような事実が認められる以上、前記ウの判断を左右するものではない。
(4) 行政文書の管理について
なお、情報公開制度が機能するためには、行政文書が適切に管理されなければならないことはいうまでもない。行政文書は行政の意思決定の過程等を記録するものであり、本件占用のように事案の処理が完結していない段階で本件占用に係る行政文書を廃棄してしまうと、行政として当該事案の現況を把握できないのみならず、市民に対する説明責任を果たすことも困難となり、極めて不適切である。
実施機関におかれては、保存期間を経過した文書であっても事務処理上引き続き保存しておくべきものについては、当該文書の保存期間を延長し適切に文書管理を行うよう留意されたい。
(5) 結論
以上のとおり、実施機関が本件申立文書を存在しないとして非開示とした決定は妥当であるが、本件協議文書についてを本件異議申立ての対象行政文書に含まれるものとして特定の上、開示、非開示の決定をすべきである。
(第二部会)
委員 金子正史、委員 池田陽子、委員 高見沢 実
《 参 考 》
審査会の経過
年月日 | 審査の経過 |
平成21年6月10日 | ・実施機関から諮問書及び非開示理由説明書を受理 |
平成21年6月19日 (第81回第三部会) 平成21年6月22日 (第151回第二部会) 平成21年6月25日 (第148回第一部会) | ・諮問の報告 |
平成21年7月15日 (第153回第二部会) | ・審議 |
平成21年8月24日 (第154回第二部会) | ・審議 |
平成21年9月3日 (第155回第二部会) | ・審議 |
平成21年9月29日 (第156回第二部会) | ・審議 |
平成21年10月9日 (第157回第二部会) | ・実施機関から事情聴取 ・審議 |
平成21年10月23日 (第158回第二部会) | ・審議 |
平成21年11月9日 (第159回第二部会) | ・異議申立人の意見陳述 ・審議 |
平成21年11月27日 (第160回第二部会) | ・審議 |
平成21年12月11日 (第161回第二部会) | ・審議 |