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横浜市情報公開・個人情報保護審査会 横情審答申第517号 平成16年度の観察指導記録…

2007年11月22日 | 行政文書該当性/文書の特定/理由付記
横情審答申第517号

平成19年11月22日

横浜市教育委員会 様

横浜市情報公開・個人情報保護審査会
会 長 三 辺 夏 雄

横浜市の保有する情報の公開に関する条例第19条第1項の規定に基づく諮問について(答申)


平成19年8月31日教教人第824号による次の諮問について、別紙のとおり答申します。

「平成16年度の観察指導記録(第3号様式の2)「D」がついている教員及び「C」が5個以上ついている教員分」及び「平成17年度の観察指導記録(第3号様式の2)「C」が5個以上ついている教員分」の一部開示決定に対する異議申立てについての諮問

別 紙
答 申


1 審査会の結論
横浜市教育委員会が、「平成16年度の観察指導記録(第3号様式の2)「D」がついている教員及び「C」が5個以上ついている教員分」及び「平成17年度の観察指導記録(第3号様式の2)「C」が5個以上ついている教員分」を一部開示とした決定は、理由付記に不備があり、取り消すべきである。

2 異議申立ての趣旨
本件異議申立ての趣旨は、「平成16年度の観察指導記録(第3号様式の2)「D」がついている教員及び「C」が5個以上ついている教員分」及び「平成17年度の観察指導記録(第3号様式の2)「C」が5個以上ついている教員分」(以下「本件申立文書」という。)の開示請求に対し、横浜市教育委員会(以下「実施機関」という。)が平成19年6月20日付で行った一部開示決定(以下「本件処分」という。)のうち、特記事項欄の記載を非開示とした決定の取消しを求めるというものである。

3 実施機関の一部開示理由説明要旨
本件申立文書については横浜市の保有する情報の公開に関する条例(平成12年2月横浜市条例第1号。以下「条例」という。)第7条第2項第6号に該当するため一部を非開示としたものであって、そのうち特記事項欄を非開示とした理由は次のように要約される。
特記事項欄には、観察指導者が行った5段階評価の結果が「S」又は「D」の場合にはその理由、「C」の場合には指導助言内容を記載することとなっている。
このような情報を開示すると、評価や所見が一般的に明らかとなり、評価対象者に要らざる動揺や不安を抱かせたり、評価に対する第三者からの介入や、記載内容に含まれる評価対象者の個人情報の漏えい等を避けるため、正確かつ公正な評価が行われなくなるおそれがある。その結果、教職員人事評価システムの機能が不完全なものとなり、公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれがある。
そのため、横浜市の県費教職員の人事評価については、神奈川県市町村立学校職員の人事評価に関する規則(平成15年神奈川県教育委員会規則第4号)に基づいて実施しているが、同規則第7条第2項では評価結果を職員本人のみに開示することにしており、さらに同条第1項では、評価結果の取扱いについて、「評価者及び職員は、人事評価において知り得た情報については、みだりに他人に知らせ、又は不当な目的に使用してはならない。」とされている。
以上のことから、特記事項欄は条例第7条第2項第6号のエに該当し非開示とした。

4 異議申立人の本件処分に対する意見
異議申立人(以下「申立人」という。)が、異議申立書及び意見書において主張している本件処分に対する意見は、次のように要約される。

(1) 「特記事項」を非開示とした決定を取り消すとの決定を求める。

(2) 異議申立てに係る部分は次のとおり違法(不当)である。

ア 横浜市は、「市民の知る権利の尊重と、市政に関する説明責務を明記するとともに、行政文書の開示を求める権利を広く何人にも保証しています。」としている。

イ 情報公開の精神からすると原則開示である。

ウ 教育委員会は非開示の理由として「人事管理に係る内容のものであり、開示することにより、公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすため」というが次の点で不当である。
(ア) 「客観的で公正な評価」が行われ、「公正性・公平性を担保」されているかを判断するために、観察指導記録の特記事項の情報公開が必要である。
(イ) 「C」が5個以上ついている教員が平成16年度から17年度に14名も増えており、その理由を知るためにも「特記事項」の開示が必要である。
(ウ) 「円滑な人事の確保に支障を及ぼす」というが「観察指導記録」は本人に提示されており、機密事項でもない。
(エ) 校名・評価者名・教諭名が非公開で個人を特定できないので支障はない。
(オ) 公開しないと、市政に対する不信感を招く。

エ 「人事管理に関わる内容」である「指導力不足教員に関わる対象者一覧」の「状況等」は開示されており、同列のものである。

オ 教員の人事評価は、平成20年度より給与に反映され、教員の教育観及び教育実践に多大な影響を与える。校長の評価で給与が決まるとなると、校長は独裁主義になり教員はいわゆる「平目教師」になって行き、子供が被害者になる心配がある。したがって、教員の人事評価は児童・生徒の教育を受ける権利と直結し、市民は知る権利を有する。

カ 教員の人事評価は、今後全国に広がると推測され、横浜市でどのように運用されているかを知らせることは、横浜市民にとって全国民に対する義務である。

キ 教職員人事評価システムには、以下の不透明点、疑問点がある。
(ア) 人事評価導入時には自己目標に対する達成状況の評価との説明だったはずが、始まってみると職務全般が評価され、「あら探し」などの疑念が生じた。「客観的で公正な評価」がなされているかを知るために特記事項の開示が必要である。

(イ) 教育委員会は公平性・公正性を担保するための苦情対応の仕組みがあると説明するが、第三者機関ではなく、特記事項の表現については変更の申出ができないなど、公平性・公正性の担保になっていない。

ク 実施機関は「評価対象者に要らざる動揺や不安を抱かせたり」と説明するが、横浜市全体の実情が分かれば、己が客観的に見えて納得できるし、恣意的と思えば苦情表明もできるので、教職員にとって「動揺や不安」より利益が大きい。

ケ 実施機関は「第三者からの介入や・・・個人情報の漏えいを避けるため、正確かつ公正な評価が行われなくなるおそれがあります。」と説明するが、学校名等は非開示で個人は特定できないから、第三者の介入や個人情報の漏えいがあるとは思えない。

コ 実施機関は「人事評価システムの機能が不完全なものとなり、公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれがあります。」と説明するが、個人情報は漏れず全体の傾向が分かるだけなので単なる口実である。非開示なのは、「校長の管理のため」に不都合なものは悪い評価をしていることも多いことが露呈するからである。このような疑いに対して教育委員会には「説明責任」があり、その一つが「特記事項」の開示である。

5 審査会の判断
(1) 本件申立文書について
本件申立文書は、「平成16年度の観察指導記録(第3号様式の2)「D」がついている教員及び「C」が5個以上ついている教員分」及び「平成17年度の観察指導記録(第3号様式の2)「C」が5個以上ついている教員分」である。

(2) 本件処分の理由付記について
当審査会において本件処分における一部開示決定通知書を見分したところ、理由付記の要件を満たしているかについて疑問があったため、以下のとおり検討した。

ア 条例第13条第1項は、行政文書の一部又は全部を開示しないときは、その理由を決定通知書に記載しなければならない旨を規定している。このように決定通知書にその理由を付記すべきとしているのは、非開示理由の有無について実施機関の判断の慎重と公正妥当を担保してその恣意を抑制するとともに、非開示の理由を開示請求者に知らせることによって、その不服申立てに便宜を与える趣旨に出たものというべきである。このような理由付記制度の趣旨にかんがみれば、決定通知書に付記すべき理由としては、開示請求者において、条例第7条第2項各号所定の非開示情報のどれに該当するのかをその根拠とともに了知し得るものでなければならず、単に非開示の根拠規定を示すだけでは、当該行政文書の種類、性質等とあいまって開示請求者がそれらを当然知り得るような場合は別として、条例第13条第1項の要求する理由付記としては十分でないといわなければならない(最高裁判所平成4年12月10日第一小法廷判決(平成4年(行ツ)第48号警視庁情報非開示決定処分取消請求事件)参照)。条例第13条第1項後段は、「当該理由は、開示しないこととする根拠規定及び当該規定を適用する根拠が、当該書面の記載自体から理解され得るものでなければならない。」と規定しているが、これは同趣旨を明文化したものにほかならない。

イ そこで、本件処分における一部開示決定通知書の理由の記載が、開示請求者において非開示情報のどれに該当するのかをその根拠とともに了知し得るものといえるかについて、検討した。
本件処分は、条例第7条第2項第6号に該当するとして、本件申立文書の一部を非開示としたものであって、当該規定を適用する理由としては、一部開示決定通知書に、「人事管理に係る内容のものであり、開示することにより、公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすため」と記載されているが、この理由の記載は、根拠規定とする同号が「市の機関・・・が行う事務又は事業に関する情報であって、公にすることにより、次に掲げるおそれ・・・があるもの ・・・エ 人事管理に係る事務に関し、公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれ」と規定しているのをほぼ引き写したものとなっている。しかし、なぜそれを開示することにより、公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすのかが明らかではなく、本件処分における理由の記載は、開示請求者において本件申立文書が同号に該当する根拠を了知し得るものであったということはできない。

ウ そうであるとすれば、本件処分における理由の記載は十分なものとはいえず、条例第13条第1項の定める理由付記の要件を欠くものであると認められる。

(3) 結論
以上のとおり、実施機関が本件申立文書を一部開示とした決定は、理由付記に不備があり、取り消すべきである。

(第一部会)
委員 三辺夏雄、委員 橋本宏子、委員 勝山勝弘

《 参 考 》
審査会の経過
平成19年9月27日 (第114回第一部会)
年月日審査の経過
平成19年8月31日・実施機関から諮問書及び一部開示理由説明書を受理
平成19年9月12日
(第111回第二部会)
平成19年9月13日
(第113回第一部会)
平成19年9月21日
(第46回第三部会)
・諮問の報告
・審議
平成19年10月3日・異議申立人から意見書を受理
平成19年10月11日
(第115回第一部会)
・審議
平成19年10月25日
(第116回第一部会)
・審議


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