答申第525号
平成21年3月27日
神奈川県教育委員会
委員長 平 出 彦 仁 殿
神奈川県情報公開審査会
会 長 堀 部 政 男
行政文書公開請求拒否処分に関する不服申立てについて(答申)
平成20年11月6日付けで諮問された特定の県立高校における話合いに係る文書不存在の件(諮問第575号)について、次のとおり答申します。
1 審査会の結論
実施機関が、特定の県立高校における話合いに係る文書は存在しないとして、公開を拒んだことは、妥当である。
2 不服申立てに至る経緯
(1)不服申立人は、神奈川県情報公開条例(以下「条例」という。)第9条の規定に基づき、平成20年9月19日付けで、神奈川県教育委員会(以下「教育委員会」という。)に対して、今年度、特定の県立高校(以下「本件高校」という。)において、特定の議員が保護者と共に訪れ、身分を明らかにした上で、校長及び教頭と話合い(以下「本件話合い」という。)を行ったことを記載した文書(以下「本件行政文書」という。)について、行政文書の公開請求をした。
(2)これに対し、教育委員会は、平成20年9月26日付けで、本件行政文書は存在しないとして、公開を拒む決定(以下「本件処分」という。)をした。
(3)不服申立人は、平成20年10月10日付けで教育委員会に対して、行政不服審査法第4条の規定に基づき、本件処分の取消しを求めるという趣旨の不服申立て(以下「本件不服申立て」という。)をした。
3 不服申立人の主張要旨
不服申立人の主張を総合すると、次のとおりである。
(1)特定の教育委員会に在籍していた時の経験からすると、このような事案について、学校内で文書による記録を残していないことは信じ難い。接見記録等何らかの形で残っているはずであり、新聞報道がされているにもかかわらず、何らの文書も残っていないということは納得できない。
(2)学校には日直日誌及び教頭日誌があり、本件話合いに関する記述が記載されているはずである。
(3)仮に請求時点において文書化されていなかったとしても、その後文書化されている場合には、その旨請求者に連絡すべきである。
4 実施機関(県立高等学校)の説明要旨
実施機関の説明を総合すると、次のとおりである。
(1)本件行政文書は、今年度に本件高校において、特定の議員が保護者と共に訪れ、身分を明らかにした上で、校長及び教頭と話合いを行ったことを記載した文書である。
(2)本件話合いは、校長、副校長及び教頭が対応し、保護者等の意見を聞いており、教頭は本件話合いの概要を自分のノート(以下「本件ノート」という。)に書き残しているが、同席している校長に対して復命の必要がなかったため、行政文書として回覧するなどは行っていない。よって、文書不存在による公開拒否の決定をした。
なお、改めて検討した結果、本件話合いは、軽易なものとは言い難く、文書化すべきであった案件であり、本件不服申立ての後、本件行政文書の作成を行った。
5 審査会の判断理由
(1)審査会における審査方法
当審査会は、本諮問案件を審査するに当たり、神奈川県情報公開審査会審議要領第8条の規定に基づき委員を指名し、指名委員は不服申立人から口頭による意見を、また、実施機関の職員から口頭による説明を聴取した。それらの結果も踏まえて次のとおり判断する。
(2)本件行政文書の存否について
ア 実施機関は、本件話合いについては、本件高校の校長、副校長及び教頭が対応し、そのうち教頭が本件ノートに本件話合いの概要を書き残したものの、行政文書として回覧するなどは行っていないと説明している。
条例第3条において、行政文書とは「実施機関の職員がその分掌する事務に関して職務上作成し、又は取得した文書、図画及び電磁的記録であって、当該実施機関において管理しているものをいう」と規定されており、この場合「実施機関において管理しているもの」とは、神奈川県教育委員会行政文書管理規則(以下「本件規則」という。)等の定めるところにより公的に支配され、職員が組織的に利用可能な状態におかれているものをいうと解される。
当審査会において実施機関に確認したところ、本件ノートは、教頭が単独で作成し、専ら自己の職務遂行のために利用しており、組織的に利用可能な状態にはおかれていないため、条例第3条に規定する行政文書には該当しないと判断する。
イ 不服申立人は、学校には日直日誌及び教頭日誌が存在し、当該日誌には本件話合いに係る記述が記載されているはずであると主張している。
実施機関に確認したところ、学校日誌は作成しているが、本件話合いに係る記述は記載されておらず、また、他に日誌は存在しないと説明している。
ウ 行政文書の作成については、本件規則第6条において、「本庁及び所の事務処理に当たっては、軽易なものを除き、処理内容等(意思決定の経過、行政文書を管理するために必要な事項を含む。)を記録した行政文書を作成しなければならない」と規定されている。
実施機関は、本件ノートについて、同席している校長に対して復命の必要がなかったため、行政文書として回覧するなどは行っていないと説明しているが、本件話合いに係る事案は、実施機関において継続的に対応しているものであること、また、幹部職員である校長、副校長及び教頭と保護者等との話合いであることから、実施機関の事務であり、軽易なものではないと認められるため、実施機関が本件話合いに関して行政文書を作成していなかったことは、適切な事務処理ではなかったと考えられる。
エ しかしながら、本件ノートは行政文書に該当せず、他に本件処分時において本件行政文書が存在することをうかがわせるような事情が認められないことから、本件処分時において本件行政文書は存在しないとする実施機関の説明は不合理であるとまではいえない。
6 付言
(1)本件行政文書は、本件話合いに係る事案の経緯に照らして考えると、作成されるべきものであって、実施機関も文書化すべき案件であったと認めているところであり、今後は、本件規則等に基づき、適切な文書の作成に努めるべきである。
(2)実施機関は、前記4(2)で説明しているとおり、本件不服申立ての後、本件行政文書を作成していることから、本件処分を変更し、当該文書の公開について諾否決定を行うなどの対応をすることが望まれる。
7 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、別紙のとおりである。
別 紙
審 査 会 の 処 理 経 過
神奈川県情報公開審査会委員名簿
(平成21年3月27日現在)(五十音順)
平成21年3月27日
神奈川県教育委員会
委員長 平 出 彦 仁 殿
神奈川県情報公開審査会
会 長 堀 部 政 男
平成20年11月6日付けで諮問された特定の県立高校における話合いに係る文書不存在の件(諮問第575号)について、次のとおり答申します。
1 審査会の結論
実施機関が、特定の県立高校における話合いに係る文書は存在しないとして、公開を拒んだことは、妥当である。
2 不服申立てに至る経緯
(1)不服申立人は、神奈川県情報公開条例(以下「条例」という。)第9条の規定に基づき、平成20年9月19日付けで、神奈川県教育委員会(以下「教育委員会」という。)に対して、今年度、特定の県立高校(以下「本件高校」という。)において、特定の議員が保護者と共に訪れ、身分を明らかにした上で、校長及び教頭と話合い(以下「本件話合い」という。)を行ったことを記載した文書(以下「本件行政文書」という。)について、行政文書の公開請求をした。
(2)これに対し、教育委員会は、平成20年9月26日付けで、本件行政文書は存在しないとして、公開を拒む決定(以下「本件処分」という。)をした。
(3)不服申立人は、平成20年10月10日付けで教育委員会に対して、行政不服審査法第4条の規定に基づき、本件処分の取消しを求めるという趣旨の不服申立て(以下「本件不服申立て」という。)をした。
3 不服申立人の主張要旨
不服申立人の主張を総合すると、次のとおりである。
(1)特定の教育委員会に在籍していた時の経験からすると、このような事案について、学校内で文書による記録を残していないことは信じ難い。接見記録等何らかの形で残っているはずであり、新聞報道がされているにもかかわらず、何らの文書も残っていないということは納得できない。
(2)学校には日直日誌及び教頭日誌があり、本件話合いに関する記述が記載されているはずである。
(3)仮に請求時点において文書化されていなかったとしても、その後文書化されている場合には、その旨請求者に連絡すべきである。
4 実施機関(県立高等学校)の説明要旨
実施機関の説明を総合すると、次のとおりである。
(1)本件行政文書は、今年度に本件高校において、特定の議員が保護者と共に訪れ、身分を明らかにした上で、校長及び教頭と話合いを行ったことを記載した文書である。
(2)本件話合いは、校長、副校長及び教頭が対応し、保護者等の意見を聞いており、教頭は本件話合いの概要を自分のノート(以下「本件ノート」という。)に書き残しているが、同席している校長に対して復命の必要がなかったため、行政文書として回覧するなどは行っていない。よって、文書不存在による公開拒否の決定をした。
なお、改めて検討した結果、本件話合いは、軽易なものとは言い難く、文書化すべきであった案件であり、本件不服申立ての後、本件行政文書の作成を行った。
5 審査会の判断理由
(1)審査会における審査方法
当審査会は、本諮問案件を審査するに当たり、神奈川県情報公開審査会審議要領第8条の規定に基づき委員を指名し、指名委員は不服申立人から口頭による意見を、また、実施機関の職員から口頭による説明を聴取した。それらの結果も踏まえて次のとおり判断する。
(2)本件行政文書の存否について
ア 実施機関は、本件話合いについては、本件高校の校長、副校長及び教頭が対応し、そのうち教頭が本件ノートに本件話合いの概要を書き残したものの、行政文書として回覧するなどは行っていないと説明している。
条例第3条において、行政文書とは「実施機関の職員がその分掌する事務に関して職務上作成し、又は取得した文書、図画及び電磁的記録であって、当該実施機関において管理しているものをいう」と規定されており、この場合「実施機関において管理しているもの」とは、神奈川県教育委員会行政文書管理規則(以下「本件規則」という。)等の定めるところにより公的に支配され、職員が組織的に利用可能な状態におかれているものをいうと解される。
当審査会において実施機関に確認したところ、本件ノートは、教頭が単独で作成し、専ら自己の職務遂行のために利用しており、組織的に利用可能な状態にはおかれていないため、条例第3条に規定する行政文書には該当しないと判断する。
イ 不服申立人は、学校には日直日誌及び教頭日誌が存在し、当該日誌には本件話合いに係る記述が記載されているはずであると主張している。
実施機関に確認したところ、学校日誌は作成しているが、本件話合いに係る記述は記載されておらず、また、他に日誌は存在しないと説明している。
ウ 行政文書の作成については、本件規則第6条において、「本庁及び所の事務処理に当たっては、軽易なものを除き、処理内容等(意思決定の経過、行政文書を管理するために必要な事項を含む。)を記録した行政文書を作成しなければならない」と規定されている。
実施機関は、本件ノートについて、同席している校長に対して復命の必要がなかったため、行政文書として回覧するなどは行っていないと説明しているが、本件話合いに係る事案は、実施機関において継続的に対応しているものであること、また、幹部職員である校長、副校長及び教頭と保護者等との話合いであることから、実施機関の事務であり、軽易なものではないと認められるため、実施機関が本件話合いに関して行政文書を作成していなかったことは、適切な事務処理ではなかったと考えられる。
エ しかしながら、本件ノートは行政文書に該当せず、他に本件処分時において本件行政文書が存在することをうかがわせるような事情が認められないことから、本件処分時において本件行政文書は存在しないとする実施機関の説明は不合理であるとまではいえない。
6 付言
(1)本件行政文書は、本件話合いに係る事案の経緯に照らして考えると、作成されるべきものであって、実施機関も文書化すべき案件であったと認めているところであり、今後は、本件規則等に基づき、適切な文書の作成に努めるべきである。
(2)実施機関は、前記4(2)で説明しているとおり、本件不服申立ての後、本件行政文書を作成していることから、本件処分を変更し、当該文書の公開について諾否決定を行うなどの対応をすることが望まれる。
7 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、別紙のとおりである。
別 紙
審 査 会 の 処 理 経 過
年 月 日 | 処 理 内 容 |
平成20年11月6日 | ○ 諮問 |
11月12日 | ○ 実施機関に非公開等理由説明書の提出を要求 |
12月4日 | ○ 実施機関から非公開等理由説明書を受理 |
12月5日 | ○ 不服申立人に非公開等理由説明書を送付 |
平成21年1月15日 (第80回部会) | ○ 審議 |
2月2日 | ○ 指名委員により不服申立人から意見を聴取 ○ 指名委員により実施機関の職員から非公開等理由説明を聴取 |
2月9日 (第81回部会) | ○ 審議 |
3月12日 (第82回部会) | ○ 審議 |
神奈川県情報公開審査会委員名簿
氏 名 | 現 職 | 備 考 |
金 子 正 史 | 同志社大学教授 | 会長職務代理者 部 会 員 | 沢 藤 達 夫 | 弁護士(横浜弁護士会) | 部 会 員 |
鈴 木 敏 子 | 横浜国立大学教授 | |
玉 巻 弘 光 | 東海大学教授 | |
辻 山 栄 子 | 早稲田大学教授 | 部 会 員 |
東 玲 子 | 弁護士(横浜弁護士会) | |
堀 部 政 男 | 一橋大学名誉教授 | 会 長 (部会長を兼ねる) |