付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

★「混線次元」もの

2024-07-06 | ランキング・カテゴリー
 時間と空間が混乱し、過去も未来も異次元もさまざまな世界が地続きになってしまった作品はあまり多くなさそうです。別に時空間を歪ませなくても未来世界にサムライを登場させることはできるのですから。

10月1日では遅すぎる』 フレッド・ホイル(1968)
 ある日突然世界がごちゃごちゃになった。バイキングが上陸してきたかと思うとロンドンではナチスの空襲が続いており、ソ連のあった場所は核戦争でもあったかのようにガラス状になった大地だけが続いている。これは時間が混乱しているのか、それとも平行世界・パラレルワールドなのか。自分たちは本当に自分、本物なのだろうか……。
 パッチワーク世界を描いた先駆け……っていうか、先駆的作品にはマレイ・ラインスターの『時の脇道』ってのがあって、むしろそちらの方が娯楽作品としては面白いのだけれど、ホイル先生は天文学者が本職なので、この時間と空間が混乱した世界についてとことん思考実験しています。

『時の罠』 キース・ローマー(1970)
 沿岸警備隊が臨検した不審な帆走船は16世紀のガレオン船だった。リンカーン大統領がアラブの小村に現れて捕まった。車で街へ出かけたはずの主婦は同じ道をいつまでも走り続けていた。何ものかの仕業によって世界の時間と空間が混乱してしまったのだ。未来人の計算によれば104億494万1602の閉鎖空間に分断されてしまっているという。ロジャー・タイソンは未来人の美女ク・ネルを自動車事故ではね殺してしまったことから、彼女と時空を超える旅に出るはめに陥るのだが……。
 「小難しくはないけれど、いかにもSF」というガジェットとアイデアを詰め込んだキース・ローマーの時空SFです。ヒーローは強くて正義感が強く、ヒロインはかよわく純情。侵略者は邪悪で情け知らずであり、レジスタンスは高潔で勇敢……なんて、世間の常識と思われていることを強調した上でひっくり返すのがキース・ローマーの常套手段。それでもって、主人公は徒手空拳で口先三寸と運を最大限に活用して逃げ切っていきます。

『階層宇宙の創造者』 フィリップ・ホセ・ファーマー(1965)
 ロバート・ウルフは66歳。妻と新居候補の下見に来ていたのだが、空っぽの地下室の押入の向こうからラッパの音が聞こえてくる。扉の向こうに開いた穴を通って地球ではない世界へと足を踏み入れたロバートはなぜかみるみる若返り、巨大な円盤形の階層が縦に積み上がり、ギリシア神話時代の人物や怪物、甲冑の騎士、草原のインディアンなどがそれぞれに暮らしている階層宇宙の奥へと歩き始めた……。
 高度な科学を持つ種族が好き勝手にこしらえたミニチュア宇宙に足を踏み入れた男が繰り広げる冒険の旅。年老いた男が若返り、超越存在が気まぐれで生み出した異世界で冒険というと、ウェブ小説のファンタジーの類型とあまり差はないようです。

『超時空世紀オーガス』 スタジオぬえ(1983)
 西暦2062年、地球は軌道エレベータの所有権を巡り争っていたが、戦闘のさなか時空震動弾が暴走。時空は混乱して相剋界に包まれて、機械生命体が覇権を握った世界から近世フランスさながらの女系社会までさまざまな多元世界の混じったパッチワークのような混乱時空と化した……。
 写真は続編『超時空世紀オーガス02』のLD。けっこう話が面白くて、本編からのひきも多くて楽しめました。個人的にはこちらの方が好き。

『MT2 異世界紀行クォ・ヴァディス』 コスモエンジニアリング(1994)
 大航海時代のイギリスから戦国時代の日本まで5つの世界から異世界に放り出された人々が未知の領域で繰り広げる冒険譚をメイルトークRPG(PBM)形式で語ったもの。

『円環のパラダイム』 瀬尾つかさ(2009)
 地球は無数の断片の寄せ集めになってしまった。いつかどこかで何者かの造ったシステムが玖朗たちの地球にまで影響を及ぼし、世界は無数の欠片に分割され、それぞれの欠片を繋ぐのは正体不明のゲートだけとなってしまったのだ……。
 混乱する世界の中で、人間と共生して異能を与える円環族と契約することでかろうじて文明を保つことに成功した、高校生を中心としたコミュニティが人類の生存をかけた戦いに挑む話。ひとことでいうと「生徒会の生存」……。
コメント
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