付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「宇宙軍士官学校4」 鷹見一幸

2013-12-18 | ミリタリーSF・未来戦記
「利己的な欲望のすべてが悪いわけではありません。欲望の奴隷になるのがいけないのです」
 己の欲望を飼い慣らせと完全環境都市サンドキングスの教導者エラン。

 新入士官候補生たちの訓練が始まった。
 数ヶ月前までの自分たちのことを思い出しながらも棚に上げて生徒たちを指導するケイイチたちだったが、教導者シャロムが突然スケジュールを大幅に繰り上げると宣言した……。

 粛清者との戦いに備え訓練を続ける少年少女たちとその若き教官たちの物語ですが、もし明日にでも敵の先遣部隊が出現したらそのまま最前線に投入されることになるのです。
 今回、SFやアニメネタが目立たなかったのは、教官と候補生たちとのジェネレーション・ギャップということなのでしょうか。

【宇宙軍士官学校】【前哨】【鷹見一幸】【太田垣康男】【銅大】【ハヤカワ文庫JA】【戦争SF】【オーバーロード】【遺伝子操作】【補給艦】
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「エンダーのゲーム[新訳版](上)」 オースン・スコット・カード

2013-12-17 | ミリタリーSF・未来戦記
 あのミリタリーSFの傑作が新訳版で復活。
 映画化に併せて、かなり幅広の帯がついてます。『妖怪アパートの幽雅な日常』と同じで、秋赤音によるアニメ絵のイラストが大きく入っていますが、あれは帯です。本当の表紙は鷲尾直広の描いた宇宙艦隊のイラストです。映画化タイアップで日本オリジナルのイメージイラストが使われてます。表はエンダーで、裏はヴァレンタイン。

 人類は、二度にわたる昆虫型生命体バガーの侵略を退けていたが、それはぎりぎりの綱渡りであり、第三次侵攻があればもはや人類は持ちこたえられないと思われていた。だが、懸命に艦隊が建造されていく一方で、バトルスクールでは来たるべき決戦に備えるエリート士官の養成が行われていた。
 アンドルーはウィッギン家の3番目の子供だ。
 地球の人口が増えすぎたため、本来なら存在が許されないはずの第三子が許されたのは、その才能に期待されてのことだった。
 長男のピーターは天才ではあったが残虐性があった。長女のヴァレンタインもピーターと同じく天才であったが、彼女は優しすぎた。軍は、3番目のアンドルーこそ戦いを終わらせる者《エンダー》に成長するのではないかと望みをかけていた。
 アンドルー・ウィッギン、このとき6歳であった……。

 期待していても甘やかすとダメになるので、死ぬほどの逆境を次々に与えて叩いて伸ばすのが軍の教育方針。愛する姉とも引き離され、千尋の谷へと突き落とされた上に、上から大岩をがんがん投げ込まれるアンドルーことエンダーの運命や如何に!?

『あらゆる市民は、ネット上では対等にスタートするのだ』
 大人でも子供でも、住む場所も身分さえも関係なく、やろうと思えば何でもできるのがネット社会。
 資質的に問題があっただけで、ピーターもヴァレンタインもエンダーと同じく天才であり、エンダーがバトルスクールに入れられている間に、彼らは匿名のネット社会で論客として世界の政局を左右するだけの地位を築き上げようとしていた。
 このとき、ピーター12歳、ヴァル10歳……。

【エンダーのゲーム[新訳版]】【オースン・スコット・カード】【鷲尾直広】【秋赤音】【ハヤカワ文庫SF】【少年の成長譚】【ワルシャワ条約機構】【小惑星帯】【ファーストコンタクト】【いじめ】
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「戦いの虚空」 ジョン・スコルジー

2013-11-17 | ミリタリーSF・未来戦記
「そういうこと(成長したらなにになりたいか)を考えるのに年齢は問題じゃないと思う。たいせつなのは自分で答えを出すことだ--だれかにおまえの望みを、しかもまちがったやつを教えてもらうまえにな」
 ノヴァ・アケイディア詩作賞を受賞した作家、ブルサード・クエルツォの言葉。

 ペリーとコンクラーベの一件以来、コロニー連合と地球の関係は悪化していて、CDFは新兵の募集が困難になっている。試算では、崩壊まで30年足らずという数字さえ出ている。
 闇雲な軍事行動が選択肢から外れ、懸命な外交活動を展開するコロニー連合だが、それを妨害するように外交視察団や商船を狙った攻撃が起き始め、ただでさえ交渉が難航する外交団は……。

 長編として読むことのできる、連続した13のエピソードと小篇2本からなる、「老人と宇宙」の5作目。
 時代的には4から後の話で、主な登場人物はジョン・ペリーと同じくオイボレ団の生き残り。いまだコロニー防衛軍CDFで技術顧問として働いているハリー・ウィルスンの物語で、主にBランクの外交使節団の奮闘記。
 コロニー連合の政府と防衛軍、地球、コンクラーベ、さまざまな勢力が内紛の種を抱えつつ駆け引きを繰り広げ、誰が敵で何が攻撃目標かわからないまま正体不明の敵と戦い続けます……が、すっきり終わらず、いろいろ謎やら悪化する状況を抱えたまま終わり。スターウォーズのエピソード5の雰囲気。6まで待つのは辛い…そういえば、こいつも5冊目かい。
 カージナルスとシカゴ・カブスのくだりは、日本でいうところの阪神タイガースや広島カープのネタですね。1巻からの伏線がやっと回収されたってところでしょうか。(カブスは2016年に108年ぶりに優勝しました)

【戦いの虚空】【老人と宇宙5】【ジョン・スコルジー】【前嶋重機】【ハヤカワ文庫SF】【チュロス】【カブス】【歌う船】【ナノマシン】
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「富士学校まめたん研究分室」 芝村裕吏

2013-11-01 | ミリタリーSF・未来戦記
「感情の問題には利益供与で対処する。些細なしこりは利益で洗い流すのが一番だ」
 所属不明の自衛官か何かの伊藤信士の言葉(物凄く悪い顔で)。

 藤崎綾乃は昔から口べただった。そもそも人づきあいが苦手だった。それで面接をあまりしないで就職できる先を探していて、防衛省の技術研究本部に入ったものの、セクハラ騒動に巻き込まれて閑職に。
 駄目な30女が開き直って始めたのがロボット戦車の研究だったのだが……。

 文庫帯にあるように「めんどくさいアラサー天才工学系女子の、ロボ戦車開発&恋愛」に「極東危機」付きの話です。確かに他人と面と向かってはほとんど何も話せないのに、文章にするとやたら饒舌になるあたり、確かに面倒くさいかも。
 同じ作者の『マージナル・オペレーション』と同じ世界の同じ時代(正確には平成32年)の物語で、斉藤さんが出るかと思ったら伊藤さんでした。

「油は人を幸せにするわ。豚にもするけど」
 トンカツがおすすめだと、藤崎母の言葉。

 「すごい技術でロボット戦車を考えました!という話ではなく、現場からはこういう要求があるだろうし、上の方にはこういうアピールをすれば採用されやすくなるだろう、それを調整して今ある技術をベースに作っていこうという話で、決して天才科学者の超技術の産物ではなく、そういう意味でリアリティのある技術開発秘話です。そして自衛隊なので、災害救助と雪祭りが用途に想定されるという……。
 それに、極東危機がかかわってくるのは当然の流れとして、ラブコメのエッセンスも少々。こちらは量は多くないけれど、しっかり効いてます。

 「技術開発系のSFが読みたい」とちょうど言っていた長男に、『楽園の泉』や『ふわふわの泉』とセットで薦めようと思います。

【富士学校まめたん研究分室】【芝村裕吏】【橋本晋】【ハヤカワ文庫JA】【ロボット戦車】【もうアニメソングは歌わない】【朝鮮動乱】【戦車モドキ】【関数電卓】【冷蔵庫にアイス】【冷凍うどん】【コンビニ弁当】【とんかつ】【戦闘用無人ロボット】【防諜】【私はあずきバーの女】
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「SPACE BATTLESHIP ヤマト」 音楽:佐藤直紀 

2013-10-11 | ミリタリーSF・未来戦記
 特撮版……というかキムタク版『宇宙戦艦ヤマト』はなんとなく悪いイメージばかり先に入ってきてしまったこともあり、仕事も忙しくて劇場に観に行きそこなったのだけれど、行きつけの店のにいちゃんが「ヤマト、やっぱり面白いですよ!」と力説してDVDを薦めてくれたのです。「いいよねえ」と、普段アニメや特撮の話なんかしたこともないアウトドア系の人がいきなり言い出すモノで、ほおほおと観てみたら……面白いんだよね。
 主演・木村拓哉で毛嫌いする人がいて、旧作のテレビアニメ版と違う部分があると言って反発する人がいるのだけれど、2時間前後の枠で話を一から語ろうとすれば、敵方の描写を削るのは一手だし、あのガミラスとイスカンダルの関係とか話の雰囲気って石津嵐版『宇宙戦艦ヤマト』をベースにしてますよね。それに『さらば宇宙戦艦ヤマト』をちょいとふりかけて。
 70年代SFを21世紀にリメイクする方法としては紛れもなく正統派です。
 そして、音楽もオリジナルのテーマを主旋律に織り込んで、なかなかカッコイイのです。中古で購入したらレンタル落ちでしたが、きちんと新譜で購入すべきであったと反省しています。

【SPACE BATTLESHIP ヤマト】【オリジナルサウンドトラック】【佐藤直紀】【宮川康】
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「辺境星区司令官、着任!」 マイク・シェパード

2013-09-29 | ミリタリーSF・未来戦記
 いかにも「アメリカ人の書くミリタリ系ラノベ」の最新刊。主人公が美人の女性士官で、惑星国家首相の娘で、財閥総帥の孫娘で、王の曾孫で、欠点と言えば胸が薄いくらい……というチートな設定で戦闘メイド付き。田中芳樹の『薬師寺涼子の怪奇事件簿』あたりを彷彿とさせます。
 こういうチートキャラの話はストーリーがよほど面白くないと投げ捨てるんだけれど、これがチャンドラーの銀河辺境シリーズのグライムズ艦長並の出世スゴロク状態で、天然のトラブルメイカーというか、平地に乱を起こすタイプと周囲に思われがち。これだけ本人の能力も優れていてコネもあって財力は膨大で、しかも毎回大活躍しているのに、巻が進むごとに出世するどころか左遷される一方というのがミソです。
 ただ、「こいつが来るとトラブルが……」と思われているのに、いざトラブルが起きてしまうと「いちばん傍にいて欲しい人」になるところが、いかにも正統派の主人公です。

 クリス・ロングナイフ大尉の次の任地が決まらない。
 まともな艦長なら自分が正しいと思えば独断専行どころか叛乱すら辞さない士官など御免こうむりたいし、軍から放り出すには親族の権力は大きいしプリンセス自身の戦果も華々しすぎる。
 なんとか決まった新たな任務は、チャンス星系の海軍管区司令官。本来なら将官クラスでもおかしくない地位だが、さすがは数ある海軍管区のなかでも最低の辺境星区。司令部である宇宙ステーションには歓迎団どころか人の気配すら無く、動力反応炉も停止し、非常用電源で動いているだけというありさまで……。

 さて、今回、ついに宿敵ヘンリー・スマイズ・ピーターウォルド13世と直接対決しますが、この人は本当に金持ちのボンボンという第一印象のままでしたね。妹だったかが名前だけ出ていますが、どうもこちらの方が父親でもなく兄でもなく、本命の敵っぽいです。そう考えると、今までの事件のあれこれの辻褄があってきますし、そもそもハンクの才覚というか性格ではやれることじゃなかったしね。
 3作でシリーズが終わったような気がしていたけれど、本国では既にシリーズ11冊目とか。どこまで堕ちるのか、登りつめるのか、次はどこに飛ばされるかが目下の楽しみです(このあたりは涼子さんとは正反対ですね)。

【辺境星区司令官、着任!】【海軍士官クリス・ロングナイフ】【マイク・シェパード】【エナミカツミ】【ハヤカワ文庫SF】【熱血戦争SF】【中継ステーション】【自主独立】【ピザ】【酒場の乱闘】【これが左遷だっ】【クレジット決済】【エクスプローラー】
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『宇宙戦艦ヤマト2199』 第七章「そして艦は行く」

2013-09-20 | ミリタリーSF・未来戦記
 そろそろテレビ放映も追いついてきたことだし、劇場版の感想の補足を。
 やはり途中で作画が荒れたし、一部にカットされたシーンもあったらしいので、とにかくブルーレイでの完成を待つ!!……ということで、いち早く振り込みに。
 終盤の展開にご不満な旧作ファンもみえるみたいですが、(こまめに新旧比較で視聴してますが)旧作の総統ってアレより酷いですよ? 帝都の市民を巻き添えにするどころか都市をちぎっては投げ、爆雷を振りまき、陶酔しきったあげく制止しようとした文官を射殺するくらいとち狂ってます。
 自己陶酔型の独裁者ってのは、あんなものでしょうか。飼っていた鳥をひねり潰すような描写で延々と伏線張ってましたし、そもそも『さらば…』で放浪の武人として再登場し、以後サムライみたいな描かれ方をしたのがおかしいのです。ぜったい『影武者徳川家康』ですって。

 さて、最終章の前夜祭、劇場はいい年した(声高に早口でしゃべる)おじさん、おばさんばかり。20年経っても40年経っても、人の性根や嗜好はそうそう変わらない。三つ子の魂百まで。若い頃にアニメやSFに夢中になった世代は、年を取っても趣味を囲碁や三味線や演歌に変えたりしないで、深夜にアニメ映画を観に劇場に出向き、アニメソングを聴き、聞き知った業界情報を大声で話すものなのだ……orz。
 もう少し若い連中を連れてくる努力をすべきだと思わないでもないが、とにかくみんな金払いがよくて、劇場内は新春初売りのデパートのようです。

 しっかりヤマトの話をしているのに、そこかしこに見覚えのある構図やシーンが出てきて、あのシーンはあの作品のパロディだとかリスペクトしているとかいうではなしに、なんというかヤマトから始まったものが一周してヤマトに戻ってきた感じです。
 なんというか、最終章だけに山あり谷あり思わぬところにサービス回あり……と息をもつかせぬ展開で、思わぬ人が死ぬ一方で、予想外の人が生き残って良い見せ場を作り、忘れられた人は忘れられたまま終わり、いつの間にかやることやっている人はいて、予断を許しません。ヒス副総統は(ボーマン船長みたいに)視聴者がやりたいことをやってくれたんだなあと思いました。旧作の結末を知っている視聴者なら、ヒルデとかの存在を知った瞬間に思ったことだと思います。
 そしてデスラー総統は、『さらば宇宙戦艦ヤマト』以後の(ドメル将軍の役割を乗っ取って)宇宙の侍……みたいにはならず、あくまで孤高にして狂気の独裁者として幕。むしろドメル将軍を残して、次シリーズにつなげるべきではなかったのかと思うのです。

 さて、旧作リメイクがこれで終わっても心残りはほとんどなくなりました……。
 あえていうなら、空間騎兵隊の対戦車戦がなかったなということくらいですが、きっと今回の保安部の件で懲りて次の航海では空間騎兵隊を投入することでしょう。艦内の秩序を維持するどころか叛乱を起こすし、七色星団や総統府突入(計画のみ)、そして最後の戦いでは明らかに白兵戦力不足でしたから。
 でも、へたな続編を作るよりMSイグルーみたいな裏方話のOVAとか、劇場版でJ・J・エイブラムス版スター・トレックみたいな新規まき直し版があっても良いと思います。今まででも、メインキャラがほとんど死んだの無かったことに!から始まり、紆余曲折して大ヤマト零号になったりパチスロいったり実写版があったりといろいろあったので、やろうと思えばまだまだ30年くらいは楽しめますよ。
 「波動砲」の扱いについても封印されちゃいましたので、拡散波動砲は出てこないのかとか、あの地球の武断派がおとなしく従うとは思えないとか不安はありますが……、実際、波動砲ってイメージ的に戦果を上げてないんですよね。浮遊大陸を吹き飛ばしたときに巻き添えで1隻沈めて、バラン星を吹き飛ばしたときに射線上の何百隻か沈めてますが、そんなことしなくてもショックキャノンとミサイルで十分血路を切り開いているわけで、もう少し艦艇の数がそろえば(扱いがデリケートで暴発したら宇宙崩壊の危機があるなどという)波動砲など要らないと軍部が判断しても不思議じゃないと思いますよ。
 
【宇宙戦艦ヤマト2199】【第七章「そして艦は行く」】【出渕裕】【結城信輝】【はてな?】【三式弾無双】【逆襲のシャア】【トップをねらえ!】【キャプテン・ハーロック】【さらば宇宙戦艦ヤマト】【サブちゃんったら】【トチロー】【結婚式】【意見具申しますっ!】【おなかの】【ダイダロスアタック】【デスラー襲撃】【花束の少女】【マクロス7】
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『宇宙戦艦ヤマト2199』 第七章「そして艦は行く」

2013-08-23 | ミリタリーSF・未来戦記
 前夜祭より帰還。

 面白かった!
 やはり途中で作画が荒れた!
 思わぬところにサービス回があった!
 しかも作画が良い!
 RE:ヤマト3はあるかもしれないけれど、RE:さらヤマはないな。
 思わぬ人が死んで、思わぬ人が生きていて、忘れそうになっていた人にもうひとつ出番があって、最後まで気を抜けないなっ。

 ブルーレイでの完成を待てっ!!

【宇宙戦艦ヤマト2199】【第七章「そして艦は行く」】【出渕裕】【結城信輝】【はてな?】【三式弾無双】
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『宇宙戦艦ヤマト2199』 第六章「到達!大マゼラン」BD

2013-08-12 | ミリタリーSF・未来戦記
 なんというか、今回の2199は「パロディにしたくなる」ネタ満載という感じでした。「年寄りに何を喰わせようというのだ……」とうなだれるディッツ提督とか、「私は帰ってきた!」とか高らかに叫ぶ薮くんとか。
 旧テレビシリーズと比較するとはっきり分かるのは、旧作では結果的に自衛のための武器としか使っていなかった波動砲が、今作では意識して自衛以外には使わないようにしているということ。「旧作では意識して敵艦隊に使ったことはなく、これに対して積極的に敵艦隊に使用していったその後のシリーズでは……」とか言われたりしますが、なに、旧作だって沖田艦長は「波動砲はまだ使えんのか!?」と使えるものなら使う気マンマンでしたよ。これは意外な発見。
 七色星団篇では、今となっては時代錯誤も甚だしい「挑戦状」とか「水杯」はさすがにカット、旗艦1隻に空母4隻という歪すぎる艦隊編成の理由も説明をつけ、ついでにいくら優秀といえどもヤマトの空戦隊が多勢に無勢なのに敵機の猛攻をしのげた理由と空母が沈んだ理由も老兵と新兵、オンボロバケツとそれとなく示唆。話の都合上、生き残ってしまったゲールは異例の出世……ということでいいのかな? どうするつもりだ……。
 不満があるとすれば、やはりパフェは脇を締め、えぐり込むように食ってもらいたかったなあ……というあたりかな。(2013/07/07)

 最終章の先行上映チケットの一般向け販売開始も始まったので、少しネタバレ気味の感想の補足。
 ホホを赤らめたゲール君は艦隊3000隻を引きつれて帰路についているわけですが、もともとバラン鎮守府に集結した艦隊は1万隻強。実数で1/3以下です。修理が必要で同行できなかった艦、それぞれの担当宙域へ向かった艦などもあるでしょうから、何隻が沈んだのか気になるところです。
 さて、惑星レプタポーダに置き去りになった某氏ですが、艦の修繕やら反乱軍との交渉やら時間はあったはずなのに、そこにいたことを知っていたはずなのに、あえて確認もせずに置き去りにした古代ってのはどーよ?というのが今シリーズ最大のツッコミ処。最終章でそのあたりがはっきりするのかしらね。(2013/08/12)

【宇宙戦艦ヤマト2199】【第六章「到達!大マゼラン」】【出渕裕】【結城信輝】【はてな?】【メイド臣民】【らしくないまねをすると】
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「宇宙戦艦ヤマト2199 公式設定資料集[EARTH]」

2013-08-10 | ミリタリーSF・未来戦記
 アニメ『宇宙戦艦ヤマト2199』の地球側設定資料集。キャラクター設定から背景美術までぎっしりつまってお買い得。巻末には監督やデザイナーらのインタビューつき。
 マゼランパフェの設定が色までしっかり着いている上に玲の笑顔が邪悪だとか、サブキャラの扱いが小さいのは仕方がないとしても、船務科の柏木紗香が準レギュラーで森雪の交代要員の西条未来より扱いが大きいのは何故かとか、いろいろ重箱の隅をつつくのが愉しい1冊です。

【宇宙戦艦ヤマト2199 公式設定資料集】【EARTH】【MAG】
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『宇宙戦艦ヤマト2199』 第六章「到達!大マゼラン」BD

2013-06-17 | ミリタリーSF・未来戦記
 2199も8月の第7章が最終章か。ここまで来ると、あっという間だった気がします。創っている方はもっと「あっという間」かもしれません。

 金曜日の名古屋前夜祭はチケットが確保できず、公開2日目の朝一番で席を確保しました。土曜日もチケ取りできないわけではなかったけれど、自分の時間が取れないだけです。前6列は空席ばかりだったので、客席の入りは八分といったところでしょうか。
 第一艦橋の桐生や西条、第三艦橋の宮澤といった女性クルーが目立っていたなあというのが第一印象で、いろいろパロディになりそうなフリ満載。終盤に向けてディッツ提督のくだりがはしょられているかなあという気はしましたが、ストーリー的には文句なしでラストのBGMチョイスに悔い無し。

 劇場から帰宅して旧テレビシリーズの第21話から第23話をおさらいして40年前の水準を確認したら、あらためて人に頼んで確保してもらっていた最新BD版の視聴。
 第19話「彼らは来た」と第20話「七色の陽のもとに」は七色星団決戦篇、第21話「第十七収容所惑星」は惑星レプタポーダの収容所の顛末、そして第22話「向かうべき星」でついにサレザー星系に突入。
 感想は後日として、テレビシリーズと比較すると1話を稼いでいる計算になるので、この1話でどんなエピソードを見せてもらえるのか8月が楽しみです。

【宇宙戦艦ヤマト2199】【第六章「到達!大マゼラン」】【出渕裕】【結城信輝】【宮澤ネココス】【デスラー襲撃】
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「彷徨える艦隊外伝1~反逆の騎士」 ジャック・キャンベル

2013-06-12 | ミリタリーSF・未来戦記
「最上のプロパガンダはつねに、不変性とまやかしの正当性を生む一片の真実とつながっています」
 メフメット・トーゴの言葉。

 ブラックジャックによってシンディック体制が崩壊し、ミッドウェイ星系にも独立の気運が高まっていた。
 宇宙艦隊を指揮する女性司令官のイケニは、陸上軍のドレイコン司令官と手を組んで内政保安局ISSから実権を奪おうとするのだが……。

 本編の8巻前後のサイドストーリーで、密告や裏切りが横行している、他人はすべてスパイと思えというような閉塞した社会で、他人と協力して何かを成し遂げることの難しさを突き詰めた話。
 「圧政からの解放」は聞こえが良いけれど、それは決して一筋縄ではいかない油断の出来ない仕事です。宇宙艦隊と地上軍が協力しないと独立は無理だけれど、お互いに相手が裏切らないか、こちらを暗殺して権力を独り占めしようとしないか、常に疑心暗鬼で監視し合うしかありません。こちらが先手を打つべきか否か、抜け駆けしないか、誰がスパイで、誰がダブルスパイで、買収は効くのか、買収されたふりをしているだけなのかと悩み続けます。
 外伝もかわらず、主人公たちの逆境ストーリーです。東ドイツ末期にシュタージの裏をかいてのし上がろうとする軍人たちの政治ゲームみたいなもの……というたとえはわかりやすいかな?

【彷徨える艦隊外伝】【反逆の騎士】【ジャック・キャンベル】【寺田克也】【ハヤカワ文庫SF】
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「少年と巨人」 海法紀光

2013-06-08 | ミリタリーSF・未来戦記
 テレビアニメでは描かれていない『翠星のガルガンチュワ』の前日譚を小説にしたもの。ニトロプラスの通販で購入。

 宇宙に進出して地球を忘れた人類銀河同盟が、謎の生命体ヒディアーズとの戦争に突入して長い時間が経過していた。世界は総力戦のためにのみ存在し、子供は生まれてすぐに親から離されて成長し、それぞれの適性にふさわしい職業へと振り分けられていく。
 幼年学校に進んだレドは、親しいミリイカやロンドと共に最後のクラスに臨むのだが……。

 運命に抗った少年の物語。
 死にたがりではないけれども、命を捨てでも誰かを救いたくなる「盾」を資質とする少年が、いかに生存期間の平均が2年というマシンキャリバー乗りとして生まれ変わったかという物語。
 宇宙ステーションの仮想現実シミュレーションで敵を殺し続けるための訓練を受けさせられる子供たちの物語というと直近では『宇宙軍士官学校』がありますが、「夢」が重要なキーワードになるあたりは『エンダーのゲーム』を彷彿とさせます。あれよりもさらに閉塞的で機械的。周囲からひそかに期待されていたエンダー(終わらせるもの)に対して、レドは常に使い捨てにされるための選別過程にしかいませんでした。それをどう意識するかの各人の差が面白かったです。
 ロンドは腰掛けになったんだなあと思いました。

【少年と巨人】【翠星のガルガンチュワ】【海法紀光】【鳴子ハナハル】【オケアノス】【Nitoroplus】【Production I.G】【仮想現実空間】【睡眠学習】【少年期の終わり】
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「宇宙軍士官学校3」 鷹見一幸

2013-05-01 | ミリタリーSF・未来戦記
「銀河規模の戦乱があり、人類がそこで戦うためにリフトアップさせられた、というのは比較的穏当なモデルです」
 そのあたりまでは想定内、真相がクトゥルフ神話みたいな話ではなくて良かったと地球代表の言葉。
 人類は技術では銀河文明に劣るとしても、それを補うフィクションという想像力があるのだ。

 ケイイチたちの訓練航海が後半戦を迎えている頃、地球ではあらたな候補生の選抜が行われていた。
 彼らこそ本来の士官候補生。
 銀河文明の戦線に加わり、母星系を守ることになる15歳の少年少女たちである……。

 宇宙戦闘機の戦いから宇宙艦戦闘、そして艦隊戦へとシミュレーションも進んでいきますが、その一方で新入生を受け入れる際のドタバタな一幕も。その後には再び凄惨な戦いが待っていて、実に緩急のついたストーリーで飽きません。タオルを巻いた姿もいいなあ……。

【宇宙軍士官学校】【前哨】【鷹見一幸】【太田垣康男】【銅大】【ハヤカワ文庫JA】【終わりなき戦い】【異星の客】【末期戦】【マップス】【知性化戦争】【レンズマン】【ペリー・ローダン】【地球から来た傭兵たち】【強殖装甲ガイバー】【幻魔大戦】【北陸鉄道石川線】
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『宇宙戦艦ヤマト2199』 第五章「望郷の銀河間空間」BD

2013-04-15 | ミリタリーSF・未来戦記
 『宇宙戦艦ヤマト2199の第五章を、名古屋のミッドランドスクエアシネマまで観に行ってきました。前夜祭の金曜日に。あいかわらず年齢層高めでしたが、第一章の頃を思うと若い層も増えていますね。テレビ効果かな?
 でも、席が最前列ど真ん中しか空いておらず、あの派手な艦隊戦を終始あおぐような姿勢で観ていたので、首は痛いし目もしょぼつくし、最後のスタッフロールがまるでスターウォーズのプロローグのように流れてみえました……。

 既に航海スケジュールの遅れは回復困難なレベルに達していた。さらに度重なるドメルの追撃に、乗組員たちの神経は限界までに張り詰めていた……。

 今回はオリジナルシリーズで言うと、『必死の逃亡!!異次元のヤマト』『ビーメラ星、地下牢の死刑囚!!』『突撃!!バラノドン特攻隊』『浮かぶ要塞島!!たった二人の決死隊!!』という、順番入れ替えてもまるまるカットしても通用する一話完結のエピソード回。起承転結でいうと「承」といったところかな。
 ドメル艦隊の追撃戦、ビーメラ星の昆虫人間、無人要塞への潜入といった要素を残しつつ、1話からの伏線を回収した「雨降って地固まる」シーズンです。まあ、あのエピソードが削られたとか、この設定がなくなっているとかあれこれありますが、追加されたものと差し引きすれば大いにプラスになると思います。
 しかし、第四章もそうでしたが、本当にヤマト3ネタを使い潰しています。2のリメイク可能性はあっても、3はないと踏んでいるのかな?(おっと、逆噴射は2ネタであった。ぐるぐるは3かな……)
 そして、思わずどん引きするような、開始早々の予算に糸目をつけない親衛隊の仕事を観ていると、帝国にとって地球攻撃は本当に辺境の片手間仕事だったんだなあと嘆息。『ARIEL』みたい。下請けに出された先が三流侵略企業か植民地人による二戦級師団かの違いで、予算も装備もある本国艦隊が本気を出したときの恐ろしさが思い知らされます。地球にゲドー社がやってくる2199ネタの二次創作というのも有りのようです。

 さて、「裏切ったのではない。表返ったのだ!」はアリスソフトのゲーム『ONLY YOU』におけるタイガー・ジョーのセリフだけれど、さらにその前にウルトラ怪獣のソノシート・ドラマではピグモンのセリフだったんだよ。もしかしたら、さらにそれ以前に活動か講談あたりであったかもしれないけれど、さすがにそこまでは知りません。……なにもかも皆、懐かしい。(2013/04/13)

 『月刊OUT9月号』(昭和52年)や『宇宙戦艦ヤマト全記録集 設定資料版』を読んでいると、そもそもの企画時には第二次大戦ネタとSF小説の有名どころのネタをちりばめて混ぜ合わせていたようなので、第4章の公開時に「そろそろ書類ケースに爆弾とかありそう」とか思っていましたが、こちらは順調に消化。ヒトラー暗殺事件の焼き直しは絶対にあると思っていましたが、それをああつなげましたか。
 「イスカンダルに到着してからの三角関係か四角関係が怖いなー」というのについてはそのまま持ち越し、他のブログとか見ていても、皆さん考えることは同じ。到着後の脱走事件はやはり残るかな。最後に講和を主張して撃たれるのは誰で、撃つのは誰かというのもなんとなく見えてきました(そんなシーンがあるのかないのかは別として)。
 テレビでの放映も始まりましたが、劇場公開版ともDVD収録版とも異なるオープニング・エンディング曲には違和感があります。なんか別録りを合成したような感じで迫力に欠けるんですよね。思い出補正の弊害、慣れればそれはそれなりに……という可能性もありますが、いろいろ冒険をするというなら五木ひろしの「明日の愛」でも十分にいけると思います。 (2013/04/15)

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