付け焼き刃の覚え書き

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「宇宙戦艦ヤマト」 石津嵐

2012-04-13 | 破滅SF・侵略・新世界
 西暦2199年、地球は宇宙の彼方の謎の星ガミラスからの侵略を受け、遊星爆弾による無差別攻撃にさらされていた。しかし、地球艦隊はガミラス艦隊との冥王星星域会戦に大敗し、すでに反撃の力は残されていなかった。
 放射能汚染の進行によって全人類絶滅まであと一年余りと迫っていた地球に、遠く離れた星イスカンダルから救いのメッセージが届いたのだが……。

 テレビ版『宇宙戦艦ヤマト』は今観ても面白いのね。
 確かにストーリーや演出面あるいは技術などは今観ると古さを感じさせる部分もあるけれど、それは仕方がないこと。でもちゃんと戦争を描こう、SFを語ろうという意欲が伝わってきます。序盤の冥王星域の艦隊戦なんか、もうタイガー戦車とシャーマン戦車の戦いを観ているようで泣けてきます。
 大人がそのまま『さらば…』のDVDを観ていた頃、2階の寝室に追いやられた保育園児だった子供が小さな声で「うちゃーせんかんやーまーとー」と唄っていたのは内緒です。(2007/10/28)

 一方、放映後刊行された著:石津嵐/原案:豊田有恒による小説版は完全に70年代SFテイスト。表紙に松本零士や西崎義展の名前がないのも道理だと思えてしまうほど。
 ガミラス艦隊襲来による地球艦隊の結成からヤマト帰還までを描いていますが、もう鬱展開。テレビ版にもあった科学の発達と裏表の不安・不信感がたっぷりで、ペシミスティックで、人間という枠にこだわらず、太平洋戦争のイメージも色濃く、なんというか読んでいて辛い話です。面白いとは思うけれど、壮快感もロマンもなく、ただ重苦しい「滅亡からの回避」がデーンッとあるだけです。(2010/10/09改稿)

 先日、キムタク版『宇宙戦艦ヤマト』がテレビ放映していて、あらためて再見すると、みんな(旧作ファン)が言うほど酷くないし、テーマ的にも忠実で、むしろ面白いよねという感想でした。
 あれって、つまりオリジナル・シリーズ版の後半に『さらば宇宙戦艦ヤマト』をくっつけ、大ネタに石津嵐版『宇宙戦艦ヤマト』を持ってきているわけですから、単発の実写映像化としては正統派。

 さて、その石津嵐版『宇宙戦艦ヤマト』ですが、ノヴェライズのふりをして、実はまるっきりのオリジナル小説になっていること。それも飛びっきり陰惨な展開になっていることこの上なし。戦死だ破壊工作だと、最後はクルーが2名にまで減ってしまったあげく「一度放射能で汚れちまった地球が元通りになるわけないよ~ん」というオチ。
 これは同じ朝日ソノラマ版の『機動戦士ガンダム』とも似通っています。こちらも全3巻ストーリーの3巻半ばで主人公が戦死してしまいます。
 どちらも原作アニメのストーリーと爽快感を求めてきた読者にとっては非道い作品なのだけれど、この2作がそれぞれソノラマ文庫(つまりはライトノベル全体)のターニングポイントに位置しているというのはなかなか意義深いことではありますね。(2007/08/28 改稿2012/04/13)

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