付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「宇宙軍士官学校6」 鷹見一幸

2015-02-09 | ミリタリーSF・未来戦記
「引っ込め理性。今はおまえの出る幕はない。今は馬鹿になるときなんだ!」
 癖の強いエミリーとツーマンセルを組まされたウィリアムも、戦闘へと参加する。

 ケイローンの庇護下にある星は多いが、単独で粛正者に対抗できる戦力を持つものは少なく、ケイローンもすべての星に援軍を送るだけの余力は無い。それがつまり、恵一たちがケイローンの首都惑星シュリシュクで、試練という名の戦闘に挑まなければならない理由だ。
 自らも粛正者によって母星を失い、放浪の傭兵集団として彷徨った経験を持つケイローンの民に対して、自らが助力をさしのべる価値があるのだと突きつける必要があるのだ。
 その状況で、恵一は「ワンサイドゲームで勝ってやろう」と仲間たちに檄を飛ばした……。

 ローマの剣闘士的な一面もある試練です。
 行き当たりばったりと臨機応変は違うという話ですが、読んでいて仁川上陸作戦みたいなもんだねと思いました。白兵戦と宙戦たっぷりの6冊目でした。

【宇宙軍士官学校】【前哨(スカウト)6】【鷹見一幸】【太田垣康男】【銅大】【ハヤカワ文庫JA】【戦争SF】【夜郎自大】【ジャガイモ飢饉】【段取り八分、仕事は二分】【突入命令】【マニュアル化】
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「地球から来た傭兵たち」 ジェリー・パーネル

2015-01-20 | ミリタリーSF・未来戦記
 『そんな(頭の中に視覚的に飛び込んでくる要素の多い)SFだから、SF小説を読む場合にも、自然と視覚的な読み方をするSFファンがいる』ということから、本文と豊富なイラストによる相乗効果を意図した作品がアメリカで刊行されるようになったのが1970年代終盤のこと。これを総じて「イラストレイテッドSF」と呼び、これが日本で翻訳刊行されるようになったのが1980年の『魔法の国が消えていく』以後のこと。
 もはやライトノベル史を語るなんてときでも、「ソノラマ・コバルトもの」と同じくらい忘れ去られている「イラストレイテッドSF」という言葉ですけれど、こういう流れがあってのラノベ史です。

 CIAの作戦でアフリカに送り込まれたアメリカ軍の正体だったが、迎撃に投入されたキューバ傭兵部隊に包囲されて壊滅寸前となった。そんな彼らを救出したのは、空飛ぶ円盤だった。
 救い出された36名の兵士に対し、現れた宇宙人は彼らに傭兵となって惑星トランに赴き、その中世レベルの社会を支配して宇宙人が必要とする農作物の供給を維持することを提案した……。

 武器弾薬を一式そろえたアメリカ陸軍の兵士1個小隊が、いまだローマの騎士軍団レベルの世界で支配権を確立すべく、現地の王侯貴族の勢力と戦ったり懐柔したりしながら、宇宙人の陰謀に立ち向かおうとする話。
 『アーサー王宮廷のヤンキー』や『戦国自衛隊』みたいに現代のテクノロジーで中世社会に覇を唱えようとするけれど、最後は時代の流れと物量に押し流された……みたいなストーリーから、『ゲート』みたいに現代兵器はきちんと運用すれば中世レベルの軍団くらいはなんとでもなるというラノベ的なチートな展開の中間くらいの物語。
 その狭間を埋めるのは、戦術であり科学技術であり大元の教育。今は中世レベルで、地球から持ち込んだ武器弾薬は尽きようとも、きちんと技術を継承していけば1世代でスペースシャトルくらいには追いつくぞ……というところまで。

【地球から来た傭兵たち】【ジェリー・パーネル】【ベア・メイホウ】【東京創元社】【イラストレイテッドSF】【SFってのは絵だねえ】【銀河同盟】【麻薬】
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「宇宙戦艦ヤマト2199 星巡る方舟」 監督:出渕裕

2014-12-08 | ミリタリーSF・未来戦記
 いつものように劇場予約をしようと思ったら、今までのようにテレビ公開の先行上映ではないためか、前売券もがんがん出ていて、当日夜までインターネット予約の窓が開かず、結局、チケットを購入したのは上映当日の午前3時。そして妻と長男と3人で夜の回にお出かけ。

 苦難の航海を経て、波動砲の封印と引き替えにイスカンダルでコスモリバースシステムを受領したヤマトだったが、大マゼラン銀河の外縁部で謎の機動部隊と遭遇した。ガミラスが「辺境の蛮族」と蔑む戦闘民族ガトランティス、その雷鳴のゴラン・ダガーム率いる遠征軍である。
 彼らの目的は秘宝が眠るという〈静寂の星〉探索であったが、ガミラスすら脅かす波動砲を持つという地球人の艦を見逃すはずもなかった……。

 観ていて思わず涙ぐんだ。
 最初のテレビシリーズが終わって以来、こういう続編映画が観たかったんだよ。キャラクターはちゃんと今までの流れを踏まえて成長しているし、取りこぼしの伏線をきちんと消化しながら新しい要素を組み込んでいて……。
 これが正しい続編映画というもんだよ。

 3分そこそこのオープニングは2199の総集編になってます。テンポが早すぎて初見の人は何が何だか分からないかもしれないけれど、ここだけリピートして何度も観ていたい。というか、帰宅したらすぐDVDおあブルーレイで見直したい。なぜ売ってない? そしてパンフレットは広告が多すぎ。ちと残念。

 今回のヒロインは、本編では真田副長のお留守番係だった桐生さん。ちょっとクールっぽい科学班というだけの名前付きモブキャラ扱いだった彼女に、ドジっこ属性とか他人のそら似とか言語学の天才とか幼馴染みとか追加属性てんこ盛りで急造ヒロインの誕生。ちょっと盛りすぎな気がするけれど、まあ赦す。
 むしろ気になるのは、通信班の交代要員として出てきた市川さん。赤毛、三つ編み、碧眼、そばかすって、アン・シャーリーかと思いました。
 そして、敵は彗星帝国ガトランティス。『さらば宇宙戦艦ヤマト』の敵役で、2199ではガミラスから「辺境の蛮族」呼ばわりされていました。さすがに蛮族は馬鹿にしすぎだろうと思いましたが、本当に蛮族でした。こいつら質の悪いクリンゴンです。クリンゴンより野蛮です。しかも、こいつらいつでもくるくる回ってやがる。ワープ航行中の姿勢制御ができてないのを、根性と体力で乗り切っているとしか思えません。

 ストーリーとしては『宇宙戦艦ヤマト2』から『宇宙戦艦ヤマト完結編』までネタを拾いつつ、ガミラス戦闘空母2隻を含む艦隊戦あり、世代を超えた交流、種族の壁を乗り越えた交流あり、未踏惑星の探査ありとてんこ盛りですが、JJ版「スタートレック」がちゃんとスタトレしていながらなんとなくスターウォーズっぽいように、ちゃんと「宇宙戦艦ヤマト」しているのにどことなくスタートレックっぽいんですよね。「危険な過去への旅」とか「宇宙の怪!怒りを喰う!?」とか、あんなテイスト。
 そして、根本とかバンデベル将軍に歴史の修復機能が働いているようで、これは南無三でした。

【宇宙戦艦ヤマト2199】【星巡る方舟】【出渕裕】【結城信輝】【火炎直撃砲】【宇宙蛍】【シャンブロウ】【ジレルの魔女】【古代アケーリアス文明】【大和ホテル】【戦艦大和】
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「宇宙戦艦ヤマト2199 星巡る方舟」 監督:出渕裕

2014-12-06 | ミリタリーSF・未来戦記
 今日から上映開始。
 伝説の惑星を舞台に繰り広げられる、ヤマトvsガトランティスvsガミラスの戦い。ちゃんと観に行けるかな。

【宇宙戦艦ヤマト2199】【星巡る方舟】【出渕裕】【結城信輝】【復讐のバーガー少佐】【火炎直撃砲】
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「宇宙戦艦ヤマト2199 追憶の航海」 監督:加戸誉夫

2014-10-13 | ミリタリーSF・未来戦記
 公開2日目の夜の回で長男と2人で観てきました。
 さすがに総集編。本編上映のときと異なり、客入りは少なめ。ブルーレイも在庫有り。まあ、総集編だものね。わざわざ行かなくても良い気がしないでも無かったけれど、そこはそれ、劇場一作目を始発電車で観に行って大行列を前に唖然とした身ですし、水上温泉でかがり火を囲んでみんなで「真っ赤なスカーフ」を合唱した世代。これもイベントなのです。

「でも波動砲は封印で大丈夫?」
「波動砲は封印だけど、波動エネルギーそのものを使わないとは言ってないし」
「艦橋を人型にして、その拳に波動をまとわせて……」
「「波動拳っ!!」」
 それはダイダロスアタックではないか?……というツッコミもあり。
「そもそも波動砲って、実績でいうと主砲やミサイルに比べて敵撃破数が極端に少ないんだよね。大型の固定目標相手とか迎撃以外には使いづらいわけで」
「だから急造の戦艦の1年の運用実績でノウハウを後継艦に活かすわけだけれど、そもそも第二艦橋ってメ2号作戦以降、使ってないよね? 明らかに戦闘に入ることが前提のときでも使ってないということは、よほど何か使い勝手に問題があったと思うよ、第二艦橋?」
「船腹側にも火力増やしたいよね」
 親子でヤマトーク。

 旧作は1話完結だったので、ビーメラ星あたりのエピソードをすっぱり切ることもできたけれど、今回は次元断層でメルダと出会った話とかビーメラでゲートの情報を手に入れたりと連続活劇しているので、しわ寄せは収容所惑星と次元潜行艇に行った気がします。
 旧劇場版1作目ほどのトンデモ無さはなかったので、安心したり残念だったり。

【宇宙戦艦ヤマト2199】【追憶の航海】【加戸誉夫】【出渕裕】【結城信輝】【ヒスおじちゃん】【尻×3】
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「ドウルマスターズ (1)」 佐島勤

2014-09-22 | ミリタリーSF・未来戦記
「僕は正義や理想の為じゃなくて、誰かの正義や誰かの理想に踏みにじられない力を手に入れる為に、ソフィアに行くんだ」
 早乙女蒼生は最精鋭機動兵器部隊「ソフィア」からの勧誘を受け入れた。

 資源を巡る争いで世界が荒廃して2世紀余り。地球は点在するポリスと呼ばれる自立型ドーム都市群と、各ポリスの利権調整と資源管理を担当する連盟によって統治されるようになっていた。そしてドームに住むことのできないものはドーム外に都市を建設していたが、オートンと呼ばれるそれは、ドームと比較すれば貧しく、テクノロジーレベルも劣っていた。 
 電力資源の獲得を狙う横浜ポリスの人型機動兵器に襲撃された小田原オートンの防衛にあたっていた新米ドウルマスター・早乙女蒼生は、敵に撃破される直前、サイキック能力者エクサーとして覚醒し……。

 パイロットのサイキック能力で動かす機動兵器『タイタニック・ドウル』が主力兵器となった世界で少年少女たちが世界の運命を賭けて戦う冒険譚。
 横浜と小田原が電力供給争奪戦してるとか琵琶湖の水利権争いがあったとかいうので、最初は『戦闘メカ ザブングル』みたいな荒廃した世界の戦いみたいな話になるかと思いきや、いきなり舞台は宇宙に移動。そして学園ものになるかと思いきや、宇宙海賊が襲撃してきたり悪の秘密結社が陰謀を画策していたりと二転三転。つまりは由緒正しき巨大ロボット小説。
 このジャンルというと笹本祐一の『ARIEL』(1987)、千葉暁の『聖刻1092』(1988)、吉岡平の『鉄甲巨兵SOME‐LINE』(1989)、山田正紀の『機神兵団』(1990)、『フルメタル・パニック!』(1998)、朝倉サクヤの『物理の先生にあやまれっ!』(2011) 、八針来夏の『覇道鋼鉄テッカイオー』(2011) 、榊一郎の『アーク・ブラッド』(2012)とそれなりに名前の挙がるシリーズはあるし、『シュヴァルツェスマーケン』とか『斬魔大聖デモンベイン』とか『ガンパレード・マーチ』に『ジャイアント・ロボ』といったようにゲームやアニメを原作原案にしたノベライズも少なくないのだけれど、絶対数が少ないのでヒットしても「ロボットものが大人気」とはいかないし、逆に売れないと「ロボットものはウケない」みたいに思われがちのような気がします。これだけを見ても、「そこそこ人気」から「大ヒットしてアニメ化」「打ち切り」とさまざまなので、特に巨大ロボットがダメとは思わないけれど、巨大感を小説で表現するのは難しいかもしれませんね。

【ドウルマスターズ(1)】【佐島勤】【tarou2】【電撃文庫】【サイキック能力】【ボーイ・ミーツ・ガール】【イヤボーン】【人工天体都市】【寮生活】
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「特命任務、発令!」 マイク・シェパード

2014-09-21 | ミリタリーSF・未来戦記
 クリスは祖父にして惑星連合を統べる王レイ・ロングナイフの命令で、惑星ニューエデンへと派遣された。歴史ある平和で豊かな星で、通商条約……というかペーパークリップとか事務用品の売買交渉をしながらほとぼりを冷ませという話のはずが、到着早々から幾度となく暗殺者の襲来。
 この星はどうやら“臭いものに蓋をする”のが方針らしく、失敗した暗殺者の遺体も見事に消え失せて事件の報道もなく、情報を集めようにもネリーすら突破困難なセキュリティの数々に惑星全土が覆い尽くされていた……。

 ということで新たな仇敵、これまた財力はあるけれど脳筋タイプにしか見えないビクトリア・スマイズ-ピーターウォルドの登場。そしてルースおばあさまとの再会。

「わたしたちは二級市民と呼ばれてきました。選挙権はなく、被選挙権もない。それでもわたしは警官です。たとえ選挙権がなくても、政府を守ると誓った」
 人が無力になるのは自分でそう言ったときだと、祖父の言葉を語るマルティネス警部補。

 警護対象者に標的マークの付いた真っ赤なスウェットシャツを着せる、海兵隊のセンスってステキですね。

【特命任務、発令!】【海軍士官クリス・ロングナイフ】【マイク・シェパード】【エナミカツミ】【ハヤカワ文庫SF】【熱血戦争SF】【防弾かつら】【バンザイ】【楽天家の胃に潰瘍なし】【悲観論者は長生きする】【爆乳】【八センチハイヒール】【革命】【言うのは無料】【大熊猫丸】
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「マーシアン・ウォースクール2」 エドワード・スミス

2014-09-09 | ミリタリーSF・未来戦記
「噂話は栄養分」
 通信兵のイルマ・アウラーがそんなことを言っていたらしい。

 小隊長であるタキオン・シュガを抹殺せんと、2年D組の生徒のみで編成されたシュガー・スイート小隊はあいかわらずあちこちの前線へと送り込まれるが、地球派の軍人たちの思惑に反してタキオンたちは1名も欠けることなく連戦連勝を続ける。
 だが、それに甘んじることなく、なんとか少しでも生き残る可能性を上げようと、タキオンは中立派の将軍と接近して足場を築き始めるが、そこに突然、シャノン・メイヤー大佐が姿を現す。
 親地球派、反地球派を問わず、うさんくさい曲者として名を知られるメイヤー大佐の意図は、タキオンにも読めなかった……。

 自分たちを抹殺しようという陰謀にさらされながらも、本質を見失うことなく歩み続けられる少年少女の物語で、ファンタジーからSFまで学生が兵士として実戦に投入される作品は増えてきているけれど、その中でも面白いと思うシリーズの1つ。
 今回、一挙に主人公争奪戦が過熱して、3巻はハーレム・エンドになるのではないかとドキドキ。まあ、その前に生き残れるかどうかが大問題なんですが。

【マーシアン・ウォースクール2】【エドワード・スミス】【凱】【電撃文庫】【力と陰謀が渦巻く火星戦記】【超長距離砲撃タイプ】【人造人間】【査問会議】【ガンローダー】
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「宇宙軍士官学校5」 鷹見一幸

2014-08-04 | ミリタリーSF・未来戦記
「自分を客観的に見ることができなくなったとき、人は愚行に走ります」
 教導者カラム・リューゲルの言葉。

 粛正者の偵察機が太陽系に出現した。
 しかし、それはこれまでの粛正者には見られなかった、攻撃力の高い強行偵察機と観測機の2機編成で、その最初の一撃で急行した哨戒艦は撃破されてしまう。
 地球に与えられた艦艇では迎撃できないと判断され、ケイイチたちが指導する士官学校の生徒たちに出撃命令が下る。旧世代艦ではあっても、彼らに与えられた装備の方がまだ新しく、またその運用に熟知していたからだ……。

「戦争ってのは、突き詰めれば経済活動と同じだよ。コストは、より大きな利益を得るために支払われるんだ」
 有坂恵一の言葉。

 ということで、人類初の実戦!となりましたが、これは予想以上にあっさりと処理され、その後の地球の新体制発足と援軍を求め銀河系の上位種族への使節団が派遣されるところまでが語られます。いろいろ幾らでも波瀾万丈に描け、血でも汗でもだーだーに流れそうなストーリーですが、あくまでマイルドにさらさらと。女性関係だって、幾らでもどろどろしそうなものですが、淡泊にほんわかと進みます。いわゆる草食系。

【宇宙軍士官学校】【前哨5】【鷹見一幸】【太田垣康男】【銅大】【ハヤカワ文庫JA】【戦争SF】【ワープゲート】
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「マーシアン・ウォースクール」 エドワード・スミス

2014-07-03 | ミリタリーSF・未来戦記
「明日も、明後日も、あなたが調子に乗る度に、私がそれを叱ってあげる」
 自信たっぷりのところが危なっかしいからと、メレディス・アシュクロフト伍長。

 火星に植民した人類は、もう100年もバグスと戦い続けてきた。
 別に正体不明の敵ではない。人類がテラフォーミングのために散布したナノマシンが地中の微生物と融合して生まれた機械生命で、わからないのは殲滅する方法だけだ。
 最初の四半世紀をなんとか生き残った火星の人類は、バグスとの戦いを前提にした社会を築き上げ、不足しがちな人材を確保する手段として、軍属学校を考え出した。将来を担う若年層に教育を与えると同時に不足する戦力を補うためのものだ。
 しかし、新たにハーシェルIIIの第一歩兵学校に親善大使兼留学生として地球からやってきたタキオン・シュガは、2年D組のクラスメイトに困惑を与えるだけだった。
「僕がいる限り……このクラスは全員、地獄へ行くことになる」

 戦死させられるために最前線に送られてきた少年が、クラスメイトをまとめ上げて戦い続ける話。『E.G.コンバット』というより『ガンパレード・マーチ』。軍隊は先任下士官が大事で、補給はなりふり構わず手を回せ、砲撃支援は強力だけれど観測班が居なければ機能しない……という基本をきっちり抑えた上で、子供と大人がそれぞれの領分をしっかりわきまえた戦いを繰り広げています。
 物語として戦争のリアルを描き、でも湿っぽくなりすぎず、脳天気にならず、でも明るさは忘れず、学生を学生のまま戦場に出す話って、そういうバランスの取り方が難しいのだと思うけれど、シリーズの出出しとしては上々。面白く仕上がってます。
 普段は表情の読めない突き合いづらそうな主人公と、同じく近寄りがたいクールビューティーが、2人きりだとボケツッコミになってしまっている気がします。

【マーシアン・ウォースクール】【エドワード・スミス】【凱】【電撃文庫】【ゲーセン勝負】【多脚戦車】【モッタイナイ】
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「彷徨える艦隊9~戦艦ガーディアン」 ジャック・キャンベル

2014-03-03 | ミリタリーSF・未来戦記
「政治家は嘘をつくことによってのみ、人々に貢献できる」
 アライアンス運営審議会、サカイ議員の言葉。いずれ先祖の前に立つ時に、自分は最後まで諦めなかったと誇りたい。その努力がおそらく徒労に終わるものであろうと。
 みんな自分だけが正しいことをしているつもりなのが問題なのだ。

 オンボロ艦隊で深宇宙へ放り出された末、好戦的な異星人を発見してその超巨大戦艦を鹵獲し、友好的な異星人の小艦隊を引き連れ、ギアリー提督は再び故郷のアライアンス宙域へ。
 ところが和平を締結したはずのシンディックはあいかわらず影からちょこちょこ悪巧みを仕掛けてくるし、超巨大戦艦インビンシブルは幽霊船だと噂が立ち……。

「元帥、わたしは学問的戦いと本物の戦いの両方を見ました。比較すると正直な本物の戦いには、どこか救いがありますね」
 学者同士の戦いは醜い戦いが際限なく続くと、異星人専門家のシュワーツ博士。

 今回も波瀾万丈で二転三転する展開。そして最後は少しリリカルに幕引き。
 でも、いちばんの山場はデシャーニ艦長の公私の区別の付け方が怖すぎるところでしょうか。

【彷徨える艦隊9】【戦艦ガーディアン】【ジャック・キャンベル】【寺田克也】【ハヤカワ文庫SF】【幽霊船】【ブービートラップ】【機雷原】【グランドキャノン】【携帯食】【太陽圏】【パーセクは死語】【ディヴィ・ジョーンズ】【勲章おやじ】【カンザス】【地球】
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「エンダーのゲーム」  監督:ギャヴィン・フッド

2014-01-31 | ミリタリーSF・未来戦記
 カードのミリタリ学園SFの名作『エンダーのゲーム』を実写映画化したもので、来たるべき昆虫型生命体と人類の戦争に備えてエリート教育を受けさせられている少年少女の物語。

 ひとことで言うと「まあ、仕方がない」。
 最初の『宇宙戦艦ヤマト』の映画を観に劇場まで行った時の気持ちに似ています。あんなすごい作品をよくぞ映画にしたものだ。でも、時間内に収めるためにあれこれ端折ってしまったよね。その端折り方がなんかモニョるなあ。
 それで地球側のエピソードが端折られたので、ピーターは単なる暴力的な若者で、ヴァレンタインは優しいだけのおねえさんにしか見えなくてショボン。そもそも6才で親元から離された子供がストレステストみたいに理不尽な境遇に落とされ、それでも這い上がっていくのを突き落とされそうになり、他の仲間も同じようにストレスで潰れていって、とうとう最後にキレてしまって開き直る……という過程が描けてないかな。そこが本当の意味でのカタルシスを与えるクライマックス。もう、あんたらの用意した、クソ詰まらないルールになんか従ってやるか!……というそこが大事。ストーリーは追っていっても、登場人物たちの心情は追えてませんよ。
 でも、バトルスクールのゲームシーンはさすがに見事。映像はきれい。ストーリーはきちんと原作の流れを追っている。まあ、仕方がないよね。

【エンダーのゲーム】【ギャヴィン・フッド】【オースン・スコット・カード】【エイサ・バターフィールド】【ハリソン・フォード】【ベン・キングズレー】
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「エンダーのゲーム[新訳版](下)」 オースン・スコット・カード

2013-12-27 | ミリタリーSF・未来戦記
 なぜ、ここで表紙がペトラになるかな……?
 良いキャラだし、好きなキャラではあるけれど、この話は3人の兄妹弟の物語なので、アンドルー、ヴァレンタインと続いたら、次はピーターだろうに。

 バトルスクールでエンダーは異例の早さで自分の隊を手に入れていた。
 すべてが異例だった。与えられた部隊が繰り上げで編入された新兵と目立った戦績もない弱兵というのも異例だったし、熟練兵の1人もいない部隊でありながらエンダーの率いるドラゴン隊が模擬戦で全戦全勝の快進撃を続けていくのもありえない光景だった。
 だが、バトルスクールはエンダーにさらなる試練、フェアではない汚い勝負を次々に仕掛けてきた……。

 強い主人公グループが不利な条件での勝負を強いられて……というあたり、まさに学園マンガの王道路線の展開が続きます。主要登場人物のほとんどがせいぜい10歳で、大半がそれ以下ですが。

「もしかすると、それこそが人間ってものなのかもしれないわ。記憶していることが」
 記憶こそが人そのものなのかもとヴァレンタイン・ウィッギンは言うが、それはエンダーの意図した意味ではなかった。

【エンダーのゲーム[新訳版]】【オースン・スコット・カード】【鷲尾直広】【秋赤音】【ハヤカワ文庫SF】【少年の成長譚】【移民船団】【リンチ】
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「飛ぶ理由」 小林誠

2013-12-25 | ミリタリーSF・未来戦記
 ウェルズのSF『月世界最初の人間』に登場した重力を遮断する合金ケイバーリットが本当にあったものと勘違いされたところから変わる航空史を、航空機プラモデルを流用した模型写真とイラスト、デザイン画、文章によって構成した1冊で、航空模型誌「スケールアヴィエーション」に連載されていた記事を増補しています。
 地図から模型から、スチームパンクっぽく構築されていく飛ぶ自転車や飛ぶ船や飛ぶ兵士や飛ぶ列車の姿が魅惑的ですが、記事が全般的に小さめの活字でびっしり書き込まれていて、超弩級空中戦艦大和の項なんか半分くらい目が悪くて読めません。

「必ず此所へ帰ってくる」
 超弩級空中戦艦大和の初代艦長はそう言い残し、アラブ=ヨーロッパ連合の都市アル・イスカンダリアで開発された放射能除去装置を空輸するための旅に旅立ったのである。

 空中戦艦大和ネタから、映画『宇宙戦艦ヤマト2220』『宇宙戦艦ヤマト2199』でのデザイン話となり、本なかばでいきなり帝都バレラスのイメージボードが出てきてびっくり。そして閑話休題で、再び何事もなかったかのように「こんな事も在ろうかと」などと大日本帝国とアメリカ帝国の決戦話にUターンです。

【飛ぶ理由】【ハイパーウェポン2013s】【小林誠】【大日本絵画】【異星からの訪問者によって研究類推された人類史】【ケイバーリット】【倍返しのニコイチ】【タイムマシン】【次元装甲特急999】【超弩級空中戦艦大和】【アメリカ帝国】【ザトウクジラ】【ポリススピナー】【アダムスキー型】【超時空要塞マクロス】【ラストエグザイル】
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「宇宙戦艦ヤマト2199 公式設定資料集[GARMILLAS]」

2013-12-19 | ミリタリーSF・未来戦記
 地球篇の設定資料を購入したらガミラス篇を買わないわけにはいきません。
 中身は地球篇と比較するとキャラが少なめな気がしますが、ガミラス、イスカンダル、ザルツ、ガトランティス、オルタリア、ビーメラと地球以外のキャラ設定、メカ設定、美術設定がてんこもり。巻末にはインタビュー以外にもガミラス語の論説もついていて、もっともらしい言語構築について語られていますが、これが大昔の「○×△」から始まったものかと思うと感慨深いものがあります。
 ただ、もともとメインの女性キャラが多くないからでしょうが、ヒルデ・シュルツで1ページというのは、さすがに大きすぎのような気がします。そもそも、そんなにデータがないじゃないですか?

【宇宙戦艦ヤマト2199 公式設定資料集】【GARMILLAS】【MAG】【玉盛順一】【石津泰志】【山岡信一】【小林誠】【西井正典】
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