付け焼き刃の覚え書き

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「辺境星区司令官、着任!」 マイク・シェパード

2013-09-29 | ミリタリーSF・未来戦記
 いかにも「アメリカ人の書くミリタリ系ラノベ」の最新刊。主人公が美人の女性士官で、惑星国家首相の娘で、財閥総帥の孫娘で、王の曾孫で、欠点と言えば胸が薄いくらい……というチートな設定で戦闘メイド付き。田中芳樹の『薬師寺涼子の怪奇事件簿』あたりを彷彿とさせます。
 こういうチートキャラの話はストーリーがよほど面白くないと投げ捨てるんだけれど、これがチャンドラーの銀河辺境シリーズのグライムズ艦長並の出世スゴロク状態で、天然のトラブルメイカーというか、平地に乱を起こすタイプと周囲に思われがち。これだけ本人の能力も優れていてコネもあって財力は膨大で、しかも毎回大活躍しているのに、巻が進むごとに出世するどころか左遷される一方というのがミソです。
 ただ、「こいつが来るとトラブルが……」と思われているのに、いざトラブルが起きてしまうと「いちばん傍にいて欲しい人」になるところが、いかにも正統派の主人公です。

 クリス・ロングナイフ大尉の次の任地が決まらない。
 まともな艦長なら自分が正しいと思えば独断専行どころか叛乱すら辞さない士官など御免こうむりたいし、軍から放り出すには親族の権力は大きいしプリンセス自身の戦果も華々しすぎる。
 なんとか決まった新たな任務は、チャンス星系の海軍管区司令官。本来なら将官クラスでもおかしくない地位だが、さすがは数ある海軍管区のなかでも最低の辺境星区。司令部である宇宙ステーションには歓迎団どころか人の気配すら無く、動力反応炉も停止し、非常用電源で動いているだけというありさまで……。

 さて、今回、ついに宿敵ヘンリー・スマイズ・ピーターウォルド13世と直接対決しますが、この人は本当に金持ちのボンボンという第一印象のままでしたね。妹だったかが名前だけ出ていますが、どうもこちらの方が父親でもなく兄でもなく、本命の敵っぽいです。そう考えると、今までの事件のあれこれの辻褄があってきますし、そもそもハンクの才覚というか性格ではやれることじゃなかったしね。
 3作でシリーズが終わったような気がしていたけれど、本国では既にシリーズ11冊目とか。どこまで堕ちるのか、登りつめるのか、次はどこに飛ばされるかが目下の楽しみです(このあたりは涼子さんとは正反対ですね)。

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