付け焼き刃の覚え書き

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「宇宙軍士官学校1」 鷹見一幸

2012-08-13 | ミリタリーSF・未来戦記
「他愛のない会話の中から重要な情報を聞き出すのは、女の子の得意とするところだもの」
 ライラ・ヨルゲンセンの言葉。

 21世紀初頭、地球外文明によってもたらされたテクノロジーによって人類の文明は大きく飛躍し、地球には統一政府が生まれていた。
 最初の接触から15年。それまで人類にテクノロジーを与えるだけだった異星人たちから、1つの要望が出された。銀河文明に適応する子供たちを傭兵として送り出して欲しいというのだ。
 むろん強制ではないし、拒否したとしても援助はこれまで通りにおこなわれるだろう。しかし「義務を果たしたものに敬意を」というのは、どの文明でも共通の価値観なのだ……。

 最近のライトノベル界隈では、科学技術で後れをとっている地球が銀河文明に貢献できるものはアニメやコミックといった娯楽分野だ!となることが多いのだけれど、この話はジョン・リンゴーの『大戦前夜』のように「人」を出せと言うことになります。
 銀河文明に適応できる柔軟な思考の青少年を訓練するために、まず教官を務める人材を養成するところから始める話で、『宇宙の戦士』や『終りなき戦い』より『老人と宇宙』の方が近いかも。傾向的には『クジラのソラ』ですね。タイトル通りに訓練パートだけの話ですが。

「人間ってのは、物語を欲している」
 人間には「正しいか間違っているか」ではなく「感情的に納得できるかどうか」という物差しがあるのだと、バーツラフ・ホレックの言葉。

 主人公は昔でいうと日本の出身で、学生時代の成績は中の上。今はなんとか地上で地域警備隊に勤めている、パッとしない草食系の青年。自分に自信のもてない主人公がじたばたあがくうちに頭角を現していくのだけれど、本人は最後まで自分の能力に懐疑的です。そしてモテ期到来。
 ストーリー展開としてはミリタリーSFの王道なのだけれど、キャラクターの設定と配置はいたって日本のライトノベル的なような気がします。アニメネタなども日本人の一般常識としてさらりと言及されますが、ミリタリーSFの入門編としてもお薦めです。

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