スワンナブン空港が近づいてきた。窓から見ると確かにいつもより水面が多い。携帯のスイッチを入れてショック。1月に使ったばかりのタイのSIMカード(10月購入)が無効になっていて、新しく番号を取り直さなくてはならなかった。2ヶ月目以降は番号を維持するのに一定の月額(500円強)を使わなくてはならないようだ。
空港鉄道から見える風景はいつものバンコクだ。水に浸かったところは見えない。マッカサンでMRT(地下鉄)に乗り換えた。地下鉄が浸水というのはデマだった。終点のファランボーンからタクシーでいつものロイヤルホテルへ。
夜は河向こうのピンクラオでいつものナマズと焼き鳥、もち米。橋のたもとでは土のうを1mほど積み上げ、水をギリギリ止めている。付近の屋台は100m以上離れて営業。
ホテルの周りは相変わらずの貧民街。LBも立っている。
もしやチャオプラヤ河の船が運行しているのではと思い、サファンタクシンへ行ってみる。船着場の周りは水浸し。土のうで50センチほどの水を食い止めている。船も本日から半月ほど運休。対岸のホテルが経営する渡し船のみが運行していた。
5時半ごろ突然落雷を伴った豪雨。ファランボーンに戻って濡れるくらいならと、高架鉄道から地下鉄への乗り換えがあるパッポンでタイスキを食べる。食べ終わったら雨はやんでいたが、ファランボーンに戻ってみたら、ピンクラオ(橋を渡った河の向こう側)が冠水。橋のこちら側にある王宮前のホテルは大丈夫らしいが、そこまで行きたがらないタクシーも。先日の夜そこで飯を食べたばかりなのに。車が橋の手前で詰まっている。
テレビでは相変わらず、牧歌的な報道が続いている。水に浸かったバイクをワイヤーで水平に吊るして乾かしているところとか。被災地の人々も皆笑顔で腰まで水に浸かりながら歩いている。救援物資も潤沢だ。タイの人々は水との付き合い方を心得ているのだろうか。2004年津波(プーケット)の時の印象ではまったく説明のできない世界だ。
UNEPの本会議当日、予定した時刻通りに会場へ移動。タクシーもMRTも高架鉄道も実にスムースだ。予定より10分以上早く会場に到着。しかし、国連のスタッフが来ていない。
各国の参加者が集まり始めていた。昨夜の豪雨で国連は明日以降の業務を断念したという。明日からの大規模行事も中止になった。タクシーの運転手もみな批判していたが、インラック首相は首都を守るのに必死で、上流の農村での洪水を看過したため、農民が暴動を起こして首都を洪水から防衛する堰を破壊したという。明後日に高潮が予報されていて、このままでは首都全域が数十センチ冠水することになるためである。
会議は予定より1時間遅れで進む。出席者が少なく、例年より小生がたくさん発言させられている。震災復興の話もあるので別段話題には困らない。夜の立食パーティーの終了間際、西欧某国の出席者から、もう河があふれているぞといわれ、そのままホテルへ直帰。ファランボーンからタクシーが動いてくれるか心配だった。客待ちの台数は少なかったが、はからずもホテルへ向かってくれた。しかし別段水が来た痕跡はなかった。ホテルのマネージャーと話してみて、明朝水が来ていたらタクシーが動けないので今日のうちに都心の高架鉄道のそばのホテルに移動することにした。本来なら1泊分取られるところだが、例年使っているよしみで、半泊分でOKになった。
1時間後、既に10時近くになっていたが、スクンビットの最も猥雑な一帯に到着。いつもどおり、白人やアラブ人、インド人、日本人が楽しそうに歩いている。(実は有名な白人向け連れ込み宿だったらしいが)1000バーツでそこそこの部屋に入れた。さすがにここまでは朝の段階で水が来ることはないであろう。安心してアラブ料理を食べに行く。日刊紙のバンコクポストによれば、都心で20〜50cm、小生が泊まっていた河沿いの地域で1〜2m水没することが予想されているという。その状態は6週間続くらしい。どの店も土のうはしっかり用意しているようだ。
翌朝、いつものように熱帯の日差しが照りつけていたが、水はまだ来ていなかった。高架鉄道の上ならば問題なかろうということで、サファンタクシンの渡しまで行ってみる。太陽が真上に来る正午前、先日と状況は変わっていなかった。むしろいくらか水が引いているようにも見える。都心に戻り、必要な買い物を済ませ、午後の早い時間に空港へ向かった。ラムカーヘン駅のプラットホームに降りて、近くに住む知人に電話し、時間があるから会おうかと誘ったが、洪水に備えて一歩も外に出ない生活になっているという。確かに、郊外の農村は水はけが悪いらしく、道路などが少し冠水したままになっている。
空港には離陸の6時間以上前に着いてしまった。チェックインができるのは4時間前だろう。空港施設見学、マッサージ、ネットでなんとか2時間をしのいだ。空港には実にいろんな人物がいる。航空券も財布も取られて、国外の兄から空港あてに現金を送ってもらうよう頼みたいから電話代60バーツを無心させてくれ、と郵便局に倒れ込んできた酩酊ノルウェー人の巨漢。一瞬ヤク中かと思ってしまった。ろれつが回っていなくて、郵便局の女性も彼の言っている変な英語が理解できなかったようだ。彼にわからないようタイ語で対応をサジェスチョンする。
免税品店で買い物をしていたチベット仏教少年僧の国外研修団ご一行。Passport pleaseという英語すらわからないらしい。彼らはインド国籍なので、亡命3世くらいなのだろう。こんな実態を知ったらダライラマ猊下もさぞかしお嘆きになることだろう。ブータン人ならこんなことは絶対ないと思う。最近、ブータン国王の結婚式があった。とても美しい新王妃はタイでも人気で、タイのインタビュー番組に出演していた。司会者がお笑い系のタレントらしく、不敬を心配してしまったが、王妃のトーク(英語)もカジュアルでいい雰囲気であった。
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