▲藤田日出男 『あの航空機事故はこうして起きた』2005年 新潮社 当時1000円+税
藤田日出男 『あの航空機事故はこうして起きた』2005年 新潮社 その1
この本の目次▼
▲ 目次
日航機123便の墜落から30年を経過し、その謎の解決にむけて、新たな研究が進んできたのか注視したいと思っているのだが。
2015年には、日航機123便の事故究明に向けた主要な著作は刊行されたのだろうか?まだ、新著を入手していないので、これまで入手した本を手がかりに、新著に備えておくことにする。
藤田日出男 『あの航空機事故はこうして起きた』2005年 新潮社
この本は2005年、日航機123便の墜落から、20年の年に刊行された本である。それまでの本が事故調査報告書のそのものの引き写しのようなレポートが多いことに気がつき、著者は元日航パイロットの専門家の立場から、その誤りを正し、誤解の現状に反省を込めて作られた本。元日航パイロットにして、航空事故調査の研究歴も深く、航空問題を語るには、最適な人物の一人と思われる。
ここでは、「第1章日航123便ジャンボ墜落事故」についてふれる。
藤田日出男は2003年に、『隠された証言 日航123便事故』を出版しているのだが、それを定本に、「そこに新たな加筆を行いつつ、簡明に事故の全体像と調査の問題点を記述することに努めた」としているので、これに従い、第1章の内容を抄出してみたい。
なお、事故調査委員会の記述と不一致のある部分は、米田憲司 『御巣鷹山の謎を追う』 宝島社の記述を併記するところもあるので御承知願いたい。
藤田日出男のプロフィールは著書のカバー裏はこうある。▼
▲ 著書カバー裏にある、プロフィール
まえがきで著者は、事故調査の考え方の要所をこう記す。
正確に事実を収集、把握する
→ 事実を分析して事故との関連を推定する
→ 分析を総合して事故原因を究明する
→ 推定原因を取り除く対策を考え、それに基づいて関係者に改善を勧告し実施する
では、「第1章日航123便ジャンボ墜落事故」にいこう。
まずは専門用語の簡単な解説から始まっているので、それに従い私も正確に理解しよう。
フライトレコーダー
「DFDR(デジタル式飛行記録装置)と呼ばれ操縦士たちと航空機関士が行う主要な操縦操作とそれに反応する気体の各機能の変化、および高度、方位、速度、加速度、姿勢などを記録する。」
ボイスレコーダー
「CVR(コックピット音声記録装置)と呼ばれ、コックピット内の天井につけられたマイクですべての音を記録する。30分間収録のエンドレス・テープなので、それ以上飛行した場合、頭から順次新たな録音に取って代わられる。日航123便では32分16秒の特音時間があったため、事故発生から墜落までの31分63秒すべてが録音されていた。」
スコーク77(スコーク・セブン・セブン)
「緊急事態を告げる国際救難信号。スコークは鳥の鳴き声のことで、飛行機からの信号を意味する。「77」は緊急信号。旅客機は航空管制のレーダーに対して、応答電波を出す「トランスポンダー」を搭載していて、ダイヤルを決められた数字にセットすると、自動的に管制機関に自機の便名、高度、速度などを知らせることができる。「空のSOS」。この信号を発すると、ATC(航空交通管制機関)の管制室に警報が出され、その飛行機には航行の優先権が与えられる。」
与圧
「現代の旅客機は燃料効率のよい1万メートル付近の高度を飛行する。・・・1万メートル以上の高度で飛行が快適なのは、客室内に空気をポンプで詰め込み、必要な酸素量を確保しているからだ。客室を地上の気圧に近く保つことが、「与圧」、さらに客室は、温度も調節・・・・・。」
「与圧」に関係して「psi」という圧力の単位が使われる。・・・・「ポンド・パー・スクエアインチ」のことで、1平方インチ(訳6.45平方センチ)に掛かっている空気圧のこと。・・・ボーイング747型機の与圧は、通常、外気と客室内の差圧は8.66psi程度で、概略、1平方メートルあたり6トン程度の力で、客室の壁を外に圧している状態。」
出発
日航機123便羽田発大阪便は、 1985年8月12日
18:04分 18番スポットより移動開始
18:12分 離陸開始
フライト、ボイスレコーダー記録
▲ 日航123便 航行図 (藤田日出男 『あの航空機事故はこうして起きた』 17頁)
ボイスレコーダー記録 (爆発音のある重要部分中心)
18:24分16秒 機関士「じゃあ、きをつけてお願いします」
18:24分35秒 「ドーン」という音(事故調査委員会)
18:24分38秒 客室高度警報音または離陸警報音 (ブザーの音)(事故調査委員会)
ここから事故調査委員会は聞き取れないとしている部分
米田憲司が、入手したテープではこのあたりの部分に、運航乗員が聞き取った例を紹介している。それにはこう記されている。
「(あぶねぇorあぶない (F/E) まずい
(CAP)なんか分かったのorなんかあたったぞ」 (米田憲司 『御巣鷹山の謎を追う』 宝島社 151頁)
18:24分39秒 (CAP・機長)なんか爆発したぞ(事故調査委員会)
事故調査委員会では「ドーンというような音」と記録されているが、音源近くにいた後部座席の生存者は「バーン」という高めの音を聞く。
18:24分42秒 スコーク77 (事故調査委員会)
18:24分59秒 (CAP・機長) なんか爆発したよ (事故調査委員会)
(CAP・機長)なんか分かったorなんか爆発したよ (米田憲司 『御巣鷹山の謎を追う』 宝島社 151頁)
午後6時24分代に、事故調査委員会の記述では2回「爆発したぞ」と記述されているのであるが、米田の入手したテープでは、最初に「なんか爆発したぞ」ということばではなく、
その前に
「(あぶねぇorあぶない (F/E) まずい」
ということばを聞き取っている。この部分が、事故調査委委員会の記述にはない。
そのあと
(CAP)なんか分かったのorなんかあたったぞ」
米田の入手テープの聴き取りでは、何か異変を察知した上での言葉であった可能性があろう。
事故調査委委員会のテープは、まずここのあたりで米田入手のテープと大きな相違点がある。
墜落直前の記録にも、聞き取り違いが見られる。
18:56分21秒 (CAP・機長) PULL UP・・・・・・・・・(事故調査委員会)
(CAP・機長) PULL UP ああだめだ (米田入手のテープより)
18:56分23秒 PULL UP 衝撃音
18:56分24秒 WHOOPWHOOP
18:56分25秒 PULL UP
18:56分26秒 衝撃音
18:56分28秒 録音終了
これらのボイスレコーダーの聞き取り違いは、事故原因を解明するために、きわめて重視すべき点でもあるだろう。
これから、この点に関して、事故調査委員会、米田憲司、藤田日出夫らの視点の相違も考えながら、理解していこう。
18:56分23秒の衝撃音と、18:56分26秒の衝撃音は、墜落時の一連のものなのか。それとも?
断続的にこの項 つづく